「まつとおね」は、石川県七尾市が主催する新作公演。以前より企画・準備が行われていたが、今年1月1日に令和6年能登半島地震が発生したことで会場の能登演劇堂も被害を受け、開催が危ぶまれる事態に。しかし公演までに能登演劇堂の修繕が間に合うこととなり、復興祈念公演として開催される運びとなった。本作は、前田利家の正室まつ(吉岡)と豊臣秀吉の正室おね(蓮佛)の物語となる。
記者発表会見には、吉岡と蓮佛に加え、七尾市の茶谷義隆市長、原作・脚本の小松江里子、演出の
小松は「戦国時代と言いますと遥か昔のようですが、世界では今も戦争が起きていて、人の世は変わっていないのではないかなと。だからこそ、今を生きている私たちと重ね合わせて共感できる物語にしたい」と語り、まつとおねの関係性について「織田信長の家来だった頃、同じ長屋の隣同士で過ごした間柄。幼少期から親友だった2人の友情にヒントを得て、2人が激動の時代をどのように生き、その友情がどう形になったのかを描いてみたいと思いました」と説明した。
歌昇は「演出として演劇作品に携わるのは初めて」としつつ、「日頃の歌舞伎公演には演出家がいないので、出演者自ら演出を考えています。今回は(吉岡と蓮佛の)お二人がいらっしゃるので心強い。地元の方々の心が安らぐような作品を、一緒に作っていけたら」と意気込む。また能登演劇堂では、舞台奥にある扉の開閉が可能で、美しい自然の景色と一体となった劇場空間を作ることができる。歌昇は「『3月はまだ寒く、扉を全部開けるのは厳しいかも』と劇場の方から言われましたが、せっかくなのでどこかで扉を全開にする演出を取り入れたい」と期待を口にした。
吉岡は、本公演のために能登豪雨の直前に能登を訪れていたことを明かし、「『元気を届けて』『楽しみ』と伝えてくださった能登の方々の笑顔が忘れられず、どうして同じ場所で大変なことが続くのだろうと心が痛みました」と述べ、「役者の自分にできることは何かと考えたとき、悲しみの淵を一緒に並走するだけでなく、大きな希望やパワー、前に向くためのきっかけを外から持ってくることではないかなと。復興ののろしをあげるようなエネルギーを届ける、という強い意志でこの公演に携わろうと思っています」と語った。
蓮佛は「地震に続いて豪雨の被害を目の当たりにし、(公演を行っても)いいのかなという葛藤が正直今もあります。ただ、被災経験のある方やボランティアの方にお話を伺う中で、『エンタテインメントの力に救われた』『せっかく来てくれるなら希望を届けてほしい』と言ってくださる方々の思いも、しっかり受け止めていきたいと感じました。能登の皆様にとって明日を生きる活力になれたら、という思いを握り締めて作品に臨んでいきたい」と述べた。
「まつとおね」の準備稿を読んだ感想を問われると、蓮佛は「時代に翻弄されながらも、悲しみを断ち切って前へ進む、まつとおねの強さや覚悟に胸を打たれました。希望の象徴のような存在」と話す。吉岡は「まつとおねの仲の良い朗らかな雰囲気から、戦乱の世を強く生きる姿まで、美しいグラデーションで描かれていて、“生き抜いていく”“負けない”というメッセージを感じました。色々なことが起きてしまうのが人生。でも悲しみだけで終わらせない。どのように心を奮い立たせれば良いのかを提示する力がこの作品にはあると思う」と言葉に力を込めた。
吉岡と蓮佛は本作で初共演を果たす。蓮佛は「(吉岡は)歩いた場所に花が咲くような、ピュアで可愛らしい印象。まつ役にぴったり」と表現し、「先ほども能登のお土産をくれて。姉妹のような関係を演じるので、これから仲を深めていけたらいいなと思います」と笑顔を見せる。吉岡は「(蓮佛から)『れんちゃんと呼んでいいよ』と言っていただき、本当にうれしかったです。気さくで可愛らしくて知的で、お会いした瞬間に必ず良い公演になると確信しました」と蓮佛への信頼を口にした。
公演は3月5日から23日まで能登演劇堂にて。
令和6年能登半島地震復興祈念公演「まつとおね」
2025年3月5日(水)~2025年3月23日(日)
石川県 能登演劇堂
スタッフ
原作・脚本:小松江里子
演出:
参考資料:竹山洋「利家とまつ」
裏見魔太爾朗 @WaK3KqnS9huzSp6
【会見レポート】吉岡里帆・蓮佛美沙子、能登復興祈念「まつとおね」で親友役「会った瞬間、良い公演になると確信」 https://t.co/L3L3X2zvYU