「あらしのよるに」9年ぶりに南座へ、中村獅童「自分のライフワークに」

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9月に京都・南座で上演される「九月花形歌舞伎 発刊30周年記念『あらしのよるに』」の取材会が、昨日8月6日に大阪府内で行われ、中村獅童中村壱太郎が登壇した。

左から中村壱太郎、中村獅童。

左から中村壱太郎、中村獅童。

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九月花形歌舞伎 発刊30周年記念「あらしのよるに」チラシ

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新作歌舞伎「あらしのよるに」は、きむらゆういちの絵本を原作に、2015年に南座で初演されたもの。嵐の夜に出会ったオオカミとヤギが、“ひみつのともだち”となり友情を深めていく様が描かれる。歌舞伎版は初演以来、東京・歌舞伎座や福岡・博多座でも上演されてきた。絵本の発刊30周年記念となる今回は、約9年ぶりに南座で上演される。

中村獅童

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まずは獅童があいさつ。「9年前の南座公演から再演が続きまして、こうしてまた南座に戻って来ることができ、非常にうれしく思っております。“獅童が新作歌舞伎を作る”というと、奇抜のものをイメージされるかもしれませんが、『あらしのよるに』は古典にこだわって、歌舞伎にある技法や音楽を取り入れて作った作品です。ぜひ子供たち、親御さんたち、おじいさんおばあさんをはじめ、広い世代の方たちに観ていただけたらと思います」と作品への思いを述べる。また壱太郎は「今回初めて『あらしのよるに』に参加させていただきます。メイ役は(尾上)松也さんがずっと大切に演じてこられた役ですので、その思いを大切に、存分に演じたいと思っています」と意気込みを語った。

中村壱太郎

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続けて質疑応答の時間へ。本作への思いを問われた獅童は、「もともとは9年前に『南座で獅童で何かを』というお話があったとき、以前からいつか歌舞伎化したいと思っていた『あらしのよるに』を思い出し、この機会にぜひやらせていただけたらと企画を立ち上げました。ただ役者仲間には、『9月の南座は12月に顔見世興行があるから、お客さんを呼ぶのが大変だよ』と言われていましたし、新作歌舞伎を一から作るのは自分としても初めてだったので不安もありました。また古典好きなお客様が多い京都でこの芝居が受け入れていただけるのかどうか……という思いもありながらやらせていただきましたが、公演の前半に観に来てくださった学生の団体さんが最後は総立ちになるほど盛り上がってくれるなど好評で、松也くんと『この芝居、いけるかもしれないね!』と喜び合いました」と振り返る。そして「最終的には札止めになるほどチケットが売れて、南座さんはじめスタッフさん出演者、みんなの気持ちが1つになれたと感じました。今回もいろいろな思いを胸に、やらせていただきたいと思っています」と語った。

左から中村壱太郎、中村獅童。

左から中村壱太郎、中村獅童。[拡大]

また獅童にとって本作は、母への思いを感じる作品でもあるという。「一番最初にこの作品と出会ったのは2003年のNHKの読み聞かせのお仕事だったのですが、母とは『この作品を歌舞伎にできるんじゃないか』とよく話していました。その後母は亡くなりましたが、初演開幕の2日前くらいだったか、松竹の方が母の手書きの企画書の存在を教えてくれたんです。それは母が『いつか獅童がもし何かやれるような時が来たら、これをやらせてください』と松竹の方に渡していた、『あらしのよるに』の企画書でした。そんな母の思いも、この作品には詰まっているんです」と言葉に力を込めた。

一方、壱太郎は9年前の初演を観たときの印象について、「客席の後ろのほうで観ていたのですが、子供たちが笑っている姿がある意味衝撃でした」と言い、「普段団体で観にいらっしゃる中高生よりも年下の小学生が、本当に楽しんでいる姿を見て、『すごいな! こんなことがあるんだな』と思ったんですよね」と笑顔を見せた。さらに壱太郎は、出演が決まったあと、獅童の勧めで絵本を読んだと話し、「絵本を通じて日常忘れていること……例えば自分の親のこととかを考えたりしました。絵本と歌舞伎の台本では少し内容が違いますが、絵本を読んで感じた最初の思いを大事に演じたいなと思っています」と思いを述べた。

なお今回の上演で変わる点について、獅童は「これまでも上演のたびに演出を細かく変えていて、今回も、出演するキャストに合わせて少し台本が変わる部分もあります」と説明。さらにこれまで読み聞かせやアニメ映画、リーディングなどさまざまな形で携わってきた「あらしのよるに」という作品の魅力について、獅童は「信じる力というのはやっぱり普遍的なテーマだと思います。また自分が役者人生を歩んでいくうえでも、役者以前に1人の人間として、無性の愛は持っていないといけないと思っています。ただそういう優しい気持ちは、日々いろいろなことに追われているとついつい忘れてしまいがちですよね。この作品はそのことを思い出させてくれます」と語り、「原作はオオカミとヤギの物語ですが、差別問題や人種問題、戦争のことなど、いろいろなことに当てはまります。言い出したらキリがないくらい、思いが詰まった作品です。自分のライフワークにしていきたいなと思っています」と作品への熱い思いを語った。

「九月花形歌舞伎 発刊30周年記念『あらしのよるに』」は、9月4日から26日まで南座にて行われる。

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九月花形歌舞伎 発刊30周年記念「あらしのよるに」

2024年9月4日(水)~26日(木) ※公演終了
京都府 南座

スタッフ

原作:きむらゆういち(講談社)
脚本:今井豊茂
演出・振付:藤間勘十郎

出演

がぶ:中村獅童
めい:中村壱太郎
みい姫:坂東新悟
はく:市村竹松
穴熊ぴか:市村光
たぷ:澤村國矢
山羊のおじじ:市村橘太郎
がい:河原崎権十郎
狼のおばば:市村萬次郎
ぎろ:中村錦之助

公演・舞台情報
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