坂東巳之助、中村児太郎との「ゆうれい貸屋」に「父・坂東三津五郎の思いをかなえられたら」

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『八月納涼歌舞伎』第一部」「ゆうれい貸屋」に出演する坂東巳之助中村児太郎の取材会が、本日7月18日に東京都内で行われた。

左から中村児太郎、坂東巳之助。

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「ゆうれい貸屋」より、坂東巳之助扮する桶職弥六。(c)松竹

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「ゆうれい貸屋」より、中村児太郎扮する芸者の幽霊染次。(c)松竹

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「八月納涼歌舞伎」は、中村勘三郎(当時は五代目中村勘九郎)と坂東三津五郎(当時は五代目坂東八十助)らを中心に、1990年にスタートした、花形俳優が活躍する恒例公演。「ゆうれい貸屋」は、山本周五郎の小説を原作にした人情喜劇で、今回巳之助と児太郎は、父である三津五郎と中村福助が、2007年の「八月納涼歌舞伎」で勤めた、桶職弥六、芸者の幽霊染次をそれぞれ演じる。作中では、桶屋としての腕は確かだが仕事もせず酒に溺れ、女房のお兼(坂東新悟)に逃げられた弥六と、そんな弥六に惚れた美しい幽霊・染次の物語が展開する。「女房にしてくれ」と言い寄る染次に、戸惑いつつまんざらでもない弥六。2人はやがて、恨みを晴らしたい人に幽霊を貸し出す“ゆうれい貸屋”を思いつき、その商いは大繁盛するが……。

坂東巳之助

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巳之助は、昨年の「八月納涼歌舞伎」で、児太郎と舞踊「団子売」を披露したことに触れ「勘三郎のおじさまや父・三津五郎、そして福助のお兄さんらが始めた『納涼歌舞伎』で、昨年『団子売』を2人で踊らせていただいたときは、『やっと自分たちも』と感慨深かったです。そしてその翌年、こうした形で2人でお芝居を任せていただけることは、とてもありがたく思っております」と語る。さらに「しかもそれぞれの父が演じていたお役ですし、また(中村)勘九郎のお兄さんにも、お父様である勘三郎のおじさまが(2007年の上演で)演じていらした又蔵というお役で出ていただきます。なんだか、思い出の中の『納涼歌舞伎』を取り戻していくような感覚がいたします」と言葉に力を込め、「もちろん、当時を知らないお客様もたくさんいらっしゃると思うので、今のお客様にもしっかり楽しんでいただけるように、ほかのご出演の皆さんと力を合わせて、良い演目にします」と述べた。

中村児太郎

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児太郎も「昨年の『団子売』の千秋楽で、巳之助兄さんと『来年も何かできたらいいね』というお話をしていたので、本当にうれしいです。『団子売』から『ゆうれい貸屋』につながったと思うので、出演者一同力を合わせ、お客様に『楽しかったね、また観たいな』と思っていただけるように、夏らしいお化けの演目を立ち上げていきたい」と意気込みを語る。

なお今回の上演は、福助が監修を担う。このことについて児太郎は「父にとって『ゆうれい貸屋』は、とても思い入れのある作品。2012年に大阪松竹座で、三津五郎のおじさんが弥六、今の(中村)萬壽さんが染次をやられたとき、父は『お兄さん(三津五郎)が裏切った! たたってやる!』ってふざけて言ってましたからね(笑)」と話し、「演目が決まる前に、父に『ゆうれい貸屋』をやるかもしれないのですが、どう思いますか、と相談したところ、『いいんじゃないの』と。そのあと、まだ決まってもいないのに(福助が)『ゆうれい貸屋』の映像を観ていたので、監修したいのかな、と(笑)。巳之助さんにも相談し、正式に監修をお願いしたら『やったあ!』と喜んでいました。父は病気をしてから、なかなか舞台に出るのが難しくなってしまいましたが、やはりお芝居が大好き。(稽古場では)きっと『お兄さん(三津五郎)はこうだった』から始まると思うのですが(笑)、2人で怒られながら、良いものを作っていければ」と笑顔を見せる。巳之助も「父は真面目な人だったので、芝居をやっている最中に楽しそうにしていることはそうそうありませんでした。でも、この演目をやっているときの父はとても楽しそうで、それこそ萬壽のおじさまとの大阪公演のあと、『福助とも、またやりたいな』と言っていたのを覚えています。その願いはかないませんでしたが、今回こうして息子2人で勤めることで、父の思いをかなえられたらと」と児太郎と目を合わせた。

「ゆうれい貸屋」特別ビジュアル

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話題は、同日に公開された「ゆうれい貸屋」の撮り下ろしのスチール写真の話に。児太郎は、撮影現場に福助が立ち会ったことに言及しつつ、「撮影のスケジュールを、うちのスタッフが父に連絡していたみたいで。父が撮影現場に来ることを当日の朝に知りました(笑)」と振り返る。巳之助は「昨年の『団子売』のスチール写真は、一緒に撮影できなかったので、今回は2人で撮りたいと切望し、かないました」とうれしそうに話し、「撮影現場で、児太郎さんの扮装姿を見て、お父様にそっくりだなと」と児太郎に視線を送る。児太郎は「巳之助さんが顔の角度を決めているときに、あるスタッフの方が『あっ、三津五郎さん』って巳之助さんを呼んだんです。確かにすごく似ていたのですが、家に帰って父と『三津五郎さんって呼ばれてたね』と笑い合いました。父は『(三津五郎と巳之助が似ていて)びっくりだね、びっくりだね』ってずっと言っていましたよ」と微笑む。さらに巳之助が「スチール写真は、かなりの枚数撮っていただいたのですが……『俺が、一番みっくんが面白い顔している写真を選ぶ』って、この写真を選んだのは(尾上)松也兄さんなんです(笑)」と明かすと、児太郎は「100枚ぐらいあった中から、厳選されてね」とうなずき、「撮影で大変だったのは、100回も驚いた顔をした巳之助さんですよ!」と巳之助の苦労を褒めたたえる。児太郎の言葉に、巳之助が「あごが外れた(笑)」と付け加え、児太郎は声を上げて笑った。

「八月納涼歌舞伎」は8月4日から25日まで、東京・歌舞伎座にて。

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「八月納涼歌舞伎」第一部

2024年8月4日(日)~25日(日) ※公演終了
東京都 歌舞伎座

スタッフ

一、「ゆうれい貸屋」

原作:山本周五郎
脚色:矢田弥八
監修:中村福助
演出:大場正昭

二、「鵜の殿様」

原案:山川静夫
作・振付:西川右近

出演

一、「ゆうれい貸屋」

桶職弥六:坂東巳之助
芸者の幽霊染次:中村児太郎
弥六女房お兼:坂東新悟
魚屋鉄造:中村福之助
娘の幽霊お千代:中村鶴松
鉄造女房お勘:市川青虎
爺の幽霊友八:市川寿猿
屑屋の幽霊又蔵:中村勘九郎
家主平作:坂東彌十郎

二、「鵜の殿様」

太郎冠者:松本幸四郎
大名:市川染五郎
腰元撫子:市川笑也
腰元浮草:澤村宗之助
腰元菖蒲:市川高麗蔵

公演・舞台情報
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