中村鷹之資、勉強会「翔之會」で同学年の野村裕基と「二人三番叟」初共演時に“脳汁”出た瞬間明かす

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中村鷹之資勉強会 第九回『翔之會』」が、8月12日に東京・国立能楽堂で上演される。これに先駆け、昨日6月28日に東京都内で取材会が行われた。

左から中村鷹之資、野村裕基。

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カメラマンからの「握手をしてください」というリクエストに応えて握手するも、思わず笑ってしまう中村鷹之資(左)と野村裕基(右)。

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「翔之會」は、中村鷹之資が2013年から行っている勉強会。9回目を迎える今回は、第1回の会場でもあった国立能楽堂を舞台に、鷹之資が、同じ1999年生まれで同学年の狂言師・野村裕基と舞う「二人三番叟」、尺八・琵琶奏者の長須与佳による演奏「扇の的」、そして尾上松緑が指導を担い、鷹之資が次郎冠者、松緑の長男・尾上左近が太郎冠者、中村錦之助が曽根松兵衛を勤める「棒しばり」が披露される。

中村鷹之資

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取材会には、鷹之資と裕基が出席。鷹之資は「近年、新作歌舞伎に出させていただく機会が多くあったのですが、その作品をきっかけに、古典歌舞伎に親しんでくださるようになった若いお客様からのお声を、多くいただいておりまして。古典の勉強はもちろん、新しいことにチャレンジすることへの重要性を感じており、今回は能楽堂にちなんだ演目立てにしつつ、新たな試みとして、他ジャンルの方と共演させていただくという趣向になっております」と語った。また「公演ではまず、同級生の狂言師・裕基さんと『二人三番叟』を上演し、そのあと、新作歌舞伎『刀剣乱舞』でご一緒した長須与佳さんに、歌舞伎にゆかりのある『扇の的』をはじめとした曲を披露していただきます。最後には、僕自身、大好きな演目でもある『棒しばり』を、尾上松緑の兄の指導の元で勤めます。僕の相手役となる左近さんは、実直で真面目でエネルギッシュで、これからもご一緒したい方。(『棒しばり』を)一緒に本興行で勤められたら、という思いで挑みます」と、それぞれの演目を紹介した。

野村裕基

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鷹之資と裕基は、今年1月に石川県・石川県立音楽堂で行われた、裕基の父・野村萬斎によるプロデュース公演「萬斎の芸能玉手箱」でも「二人三番叟」を披露した。2人は、鷹之資の仕舞の師匠である片山九郎右衛門による紹介をきっかけに親交を深め、1月の公演が初共演だったことを、仲睦まじげな様子で報道陣に明かす。鷹之資は「お狂言と歌舞伎でジャンルは異なりますが、同じ伝統芸能という世界で芸の道を志す者同士、やはり『舞台を一緒にしたいね』という話を2人でずっとしていました。その思いがあっての1月公演、そして今回の『翔之會』ですので、(裕基との共演は)本当にうれしくて、興奮しています。『三番叟』は大元が狂言ですし、歌舞伎舞踊としても、とても格調高く、式典等でも必ず踊られる大事な演目。1月に、裕基さんのお父様の萬斎さんの公演で、お互いにとって大事な『三番叟』を一緒に踊らせていただけたのは、楽しかったですし、良い経験になりました」と裕基と目を合わせながら話す。

左から中村鷹之資、野村裕基。

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裕基は「(1月の公演では)歌舞伎舞踊の『三番叟』とは異なり、お三味線の演奏が入らず、笛の唱歌をベースにした“我々の三番叟”にお付き合いいただいた形になります」と説明。鷹之資は「狂言と歌舞伎では、身体の使い方も異なります。歌舞伎舞踊の『三番叟』を“柔”とするなら、狂言師の裕基さんたちがなさる『三番叟』はすごく堅く、鋭いんですね。(舞踊振付を担当した)藤間のご宗家(藤間勘十郎)とも相談し、僕は歌舞伎舞踊らしく踊ったほうが、対比が生まれて面白いんじゃないかということで、そのように進めていたのですが……先ほど裕基さんがご説明された“唱歌”が、我々には慣れないものでして(笑)。歌舞伎舞踊では、基本的に三味線がベースになっていて、その音色のリードで踊るのですが、(唱歌は)もう聞くだけで精一杯。一度、裕基さんに『どうしてもわからないんだけど、教えてもらえないだろうか』と相談したら、裕基さんにとっても“ややこしいほう”の唱歌だったそうで(笑)。慣れている裕基さんがそうおっしゃるものを、どうしたらいいんだろうと思いながら、とにかく家でノイローゼになるぐらい延々と、淡々と稽古していましたね」とその苦労をしみじみ明かし、裕基は「本当によくお付き合いいただいて……(笑)」と鷹之資の苦労を労った。

左から中村鷹之資、野村裕基。

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記者から「二人三番叟」での共演で印象的だったことを聞かれた2人。鷹之資が「一番最後のお仕舞で、同じ拍子を踏むところですね」と答えると、裕基も興奮気味に同意し「そのラストに向けて、僕たちは身体を暴走しすぎないよう制御しているんですよね。お互いの呼吸、そしてお囃子との呼吸も合わないといけない。なので、うまくいったときは、アドレナリンと脳汁がパーッ!っと(笑)」と無邪気な笑顔を見せ、鷹之資も「パーッ!でしたね(笑)」と楽しげに頷いた。

中村鷹之資 自主公演「第九回 翔之會」チラシ表

中村鷹之資 自主公演「第九回 翔之會」チラシ表[拡大]

さらに話題は、それぞれの魅力についての話に。裕基は、鷹之資の身体性を絶賛し「『三番叟』で、それぞれ上手と下手から、走ってすれ違う、という動きがあるのですが、そこでも彼は重心がしっかりしていて、型を崩さないで走れるんですね。その身体性は、歌舞伎舞踊であれ、我々の(能狂言の)舞踊であれ、古典芸能の根幹だと感じました」と語る。鷹之資は「稽古の映像を見て、改めて裕基さんは背が高いなあと。隣に並ぶと(自分が)ちんちくりんだなって……(笑)」と冗談を飛ばしつつ、「裕基さんの舞台は、何回も客席から拝見しているのですが、同じ舞台に立って改めて感じたのは、身体から発せられる、空間を支配するようなパワーのすごさ」と、その魅力に触れた。

報道陣から、2人の今後の展望を問われると、鷹之資は「『船弁慶』は、お能ですとシテ方が静御前と平知盛、狂言方が船頭を演じます。歌舞伎の『船弁慶』として、僕が静と知盛を勤め、裕基さんに船頭として出てきていただく、というのも面白いかもしれません。また、場所で言うと、金沢、東京だけじゃなくて、地方でも一緒にできたらいいですね」と裕基に微笑みかけ、裕基も「フランスに行ったとき、日本の文化に興味のある方がたくさんいらっしゃって。歌舞伎と能楽のコラボレーションも、(海外公演で)需要があるかもしれない」と話し、夢を膨らませた。

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中村鷹之資勉強会 第九回「翔之會」

2024年8月12日(月・振休) ※公演終了
東京都 国立能楽堂

スタッフ

一、「棒しばり」

指導:尾上松緑

案内人:葛西聖司

出演

一、「二人三番叟」

中村鷹之資 / 野村裕基

一、「扇の的」ほか

長須与佳

一、「棒しばり」

次郎冠者:中村鷹之資
太郎冠者:尾上左近
曽根松兵衛:中村錦之助

公演・舞台情報
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石川県立音楽堂 @IshikawaONGAKU

初共演の映像がこちら↓
https://t.co/90FzuJJw2R…
石川県立音楽堂 邦楽ホール https://t.co/YPP1I6Lbds

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