内戦状況にある国を舞台にした「骨と軽蔑」にKERA「純然たる会話劇にしたい」

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2月から4月にかけて上演される、KERA CROSS「骨と軽蔑」に向けて、作・演出を手がけるケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が合同取材に応じた。

ケラリーノ・サンドロヴィッチ

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「KERA CROSS」では過去4回にわたり、KERAの作品をさまざまな演出家の手で上演してきた。シリーズのラストとなる今回は、KERAの新作が自身の演出で上演される。

KERA CROSS 第5弾「骨と軽蔑」ビジュアル

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「KERA CROSS」のこれまでについて、自分以外の演出家が自作を演出することにどんな思いを感じていたかを問うと、「かつて、ある時期までは、人に演出を任せるということについて疑念がありました」とKERA。「でも最近は、昔の作品だと自分も内容を忘れているせいか新鮮に面白いと思える。そのうえ脚本使用料までもらえるので(笑)、演出を人に任せることがあまり気にならなくなりましたね」と冗談交じりに話す。また第5弾は自身の新作を自身の演出で上演すると早くから決めていたそうで、「『KERA CROSS』は過去の作品を上演するシリーズだから過去作を、とも考えたんですけど、積極的に取り上げたいと思うものが正直なくて……きっと僕は、あまり再演に積極的な人ではないんでしょう(笑)。それで新作をやることにしました」と語った。

「骨と軽蔑」では、二十世紀半ばの、内戦が起きているある国を舞台に、小説家の姉とその妹をはじめとする女性7人による会話劇が展開する。劇中では、シリアスな状況に置かれながらも、ある意味無頓着に、マイペースに生きる彼女たちのやり取りが連綿と繰り広げられる。毎日稽古を観ながら、「流れるように、書きたいように書いている感じ」と話すKERAは「僕はカフカが好きなのですが、カフカは『小説は暗いトンネルをいくようにして書かなければならない』というようなことを言っていて、つまり登場人物たちと一緒に、作家もどこにいくのかわからず迷いながら書き進んでいるのだ、と。現在僕も毎日稽古を観ながら『こっちに行ったほうが良さそうだな』とか『こう思っていたけれど、全然違うな』というふうに、稽古で作品を熟成させている感覚です」と語った。

KERA CROSS 第5弾「骨と軽蔑」ビジュアル

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KERA作品ではしばしば戦時下の人たちの物語が描かれる。KERAは「内戦状態にある、という設定はよく使いますね。“あっち”と“こっち”のラインがぐんぐん変わっていくところに不条理やナンセンスなニュアンスを含ませやすいのだと思います」と話しつつ、ただ具体的な今の世界状況をモチーフにしているわけではない、と説明する。また「今は現実も戦争中のような……。だからこそあっけらかんと笑えるものが歓迎されるのかもしれませんが、自分の心境がそうならないのはなぜでしょうね。コロナが蔓延し始めた頃は、古田新太たちとやったリーディングのようにただただ笑い飛ばす、ということができたし、ケムリ研究室の旗揚げ公演『ベイジルタウンの女神』(2020年)のようにお客さんを選ばないファンタジーを作ったりもしたんですけど、今はそんな気分ではないんですよね。といっても、昨年上演した『眠くなっちゃった』のように徹底してヘビーな世界観の、笑いに転がることを極力避けたようなものではなく、軽味もある“寓話的な作品”になるのではないかと思います」と話した。その点で、登場人物の1人、姉のマーゴが小説家であるという点がポイントになるのかと問うと、「どこまでそうなっていくかわかりませんが、彼女は幻想小説のようなものを書いているイメージなんです。ホルヘ・ルイス・ボルヘスとか、フリオ・コルタサルとか……」とイメージの断片を明かした。

なお出演者の宮沢りえ鈴木杏犬山イヌコ堀内敬子水川あさみ峯村リエ小池栄子という7人については「力のある人たち」と自信を見せ、「一緒にやったことがある人たちは、どんな人か、どこまでできる人かがよくわかっていますし、初めてご一緒する堀内さん、水川さんもそれぞれ力のある人たちです」と厚い信頼を寄せる。なお今回は「あまり映像などのギミックを使わず、純然たる会話劇にしたい」と考えているそうで、「狙ったわけではないんですけど、昔の自分の芝居、“シリアスコメディ”とよく言われていた頃のような気分になりますね」と話した。

KERA CROSS 第5弾「骨と軽蔑」ビジュアル

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本作はシアタークリエで上演される。銀座は、チャップリン、キートンの映画や雲の上団五郎一座、クレイジーキャッツなどの公演を観るため、小学4年生ぐらいから高校2年生頃まで通っていたというKERAは「ある時期一番慣れ親しんだ街だった」と振り返りつつ、「でも自分が芝居をやる場所としては、銀座は初めて。ミュージカルのお客さんが多い街で“これ”を上演して大丈夫なの?ってシアタークリエの方に聞いたら、『大丈夫だ』とおっしゃったので(笑)、銀座のお客様にも楽しんでいただけたら良いなと思っています」と笑顔を見せた。

本作のビジュアル公開のタイミングで発表されたコメントで「2024年になったらどんなものが書けるだろうか。ピリピリしてばかりはしんどいから、そろそろ少し軽くいきたい」と語っていたKERA。改めて現在の心境を問うと「2023年のような力の入れようで1年過ごすと本当に持たないと思うので、2024年は少し力を抜いて、演劇もライブもやっていきたいなとは思っていますね。社会が硬直していくのはすごくやりづらいですが、『しびれ雲』のような平和的な笑いの作品をやったり、『Don't freak out』のような古い日本屋敷でのホラーをやったり、いろいろやっていくということが継続のコツなのかなと。今年はいい年であってほしいです」と思いを語った。

公演は来年2月23日から3月23日まで東京・シアタークリエ、27日から31日まで福岡・博多座、4月4日から7日まで大阪・サンケイホールブリーゼで行われる。

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KERA CROSS 第5弾「骨と軽蔑」

2024年2月23日(金)~3月23日(土)
東京都 シアタークリエ

2024年3月27日(水)~31日(日)
福岡県 博多座

2024年4月4日(木)~7日(日)
大阪府 サンケイホールブリーゼ

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:宮沢りえ鈴木杏犬山イヌコ堀内敬子水川あさみ峯村リエ小池栄子

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