荒牧慶彦らが火花散らす!演劇への愛と可能性に満ちた一夜「演劇ドラフトグランプリ」

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荒牧慶彦がプロデュースする一夜限りのイベント「演劇ドラフトグランプリ2023」が、去る12月5日に東京・日本武道館で開催され、5チームのうち、玉城裕規率いる劇団「恋のぼり」がグランプリに輝いた。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より。

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「演劇ドラフトグランプリ」は、昨年荒牧の発案で始まった“ガチンコ演劇バトル”。20分以内の演目、オリジナル脚本、衣裳チェンジなし、出演者が動かせない大道具の使用禁止などのルールのもとで作品が披露され、審査員、会場にいる観客、配信を視聴する観客による投票で優勝劇団が決定する。2度目の開催となる今年は、荒牧、高野洸染谷俊之、玉城、七海ひろきが座長を務める5チームが参戦し、個性あふれる作品をぶつけ合った。イベントは山寺宏一の総合司会で進行し、ナビゲーターの鈴木拡樹による作品紹介や、特別審査員の中川晃教による国歌斉唱なども行われた。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より「こいの濠」。

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劇団「恋のぼり」が披露したのは、私オムが脚本・演出を手がけた「こいの濠」。本作では、戦時中の日本を生きた4人の少年と、その様子を懐かしそうに見つめる現代の老人による物語が展開した。少年たちが濠から出てくるシーンでは、降参を表す白旗を、友人の恋を応援するための鯉のぼりに見立てて懸命に振る姿が印象的な演出となった。審査員からは、“初恋”から徐々に“友情”の物語へと移行していく面白さ、同じ衣裳の少年4人の個性が見える演技力などが評価され、セリフを中心とした“ストイックな演劇”と称された。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より「天に態を招く」。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より「天に態を招く」。[拡大]

このほかイベントでは4チームが作品を上演した。高野率いる劇団「びゅー」は、色鮮やかな衣裳をたなびかせながら登場し、松崎史也脚本・演出の「天に態(わざ)を招く」を披露。日本神話を兄弟の物語として親しみやすく仕立てた本作では、岩戸に籠ってしまった姉を外に誘い出すため、観客を“八百万の神”に見立ててボディパーカッションでの参加を求め、会場を温めた。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より「君だけの宝物」。

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染谷座長の劇団「国士無双」は、中屋敷法仁が脚本・演出を手がけた「君だけの宝物」を披露した。劇中では、紛争地域で孤独に生きる少年と、クリスマスに欲しいものが手に入る魔法の宝箱を巡り、ビターなファンタジーが展開。2人のサンタと2匹のトナカイによる笑いを交えた軽快なやり取りから一転、物語がシリアスな方向へに引き込まれると俳優たちの気迫が増し、ラストの心温まる幕切れに説得力を持たせた。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より「愛のシンクロ」。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より「愛のシンクロ」。[拡大]

七海が座長を担う劇団「品行方正」は、三浦香脚本・演出による「愛のシンクロ」を披露した。アーティスティックスイミングの選手、一発屋の歌手とマネジャー、忍者、駆け出しの歌い手といった個性的なキャラクターたちが、歌やオタ芸、ダンスで会場を沸かせ、伏線がちりばめられたどんでん返しのストーリーで観客をアッと言わせた。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より「Last Shining Ray」。

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荒牧座長の劇団「一番星」は、川尻恵太が脚本・演出を担当した「Last Shining Ray」を届けた。舞台は、アイドル活動が禁じられた世界。隠れてライブの練習をする4人組を取り締まりに来た警察官は、4人のファンサに心を奪われて……。劇中では、武道館という会場を生かした演出と、出演者による本格的なライブパフォーマンスで、観客の心を1つにした。

また、各劇団による発表の合間に楽屋から中継でイベントを盛り上げていたのが、楽屋レポーターの高木俊と、アシスタントレポーターの田中涼星だ。高木はまるで観客の心を代弁するかのように、観劇後の興奮を演者たちに伝え、出演者たちからコメントを引き出す。田中はヴィジュアル系メイクと堕天使風の衣裳で登場し、画面に映るたびに会場の笑いを誘った。田中が要所要所でボケを入れ、高木が冷静にいなす姿は漫才コンビのようだったが、2人は次回は「俳優としてバトルに参加したい」と訴えていた。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より、グランプリを獲得して喜ぶ劇団「恋のぼり」のメンバー。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より、グランプリを獲得して喜ぶ劇団「恋のぼり」のメンバー。[拡大]

「演劇ドラフトグランプリ2023」より、鈴木拡樹から優勝旗を授与される玉城裕規。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より、鈴木拡樹から優勝旗を授与される玉城裕規。[拡大]

5チームによる作品披露が終わり、表彰式ではグランプリの劇団名が中川により読み上げられた。劇団「恋のぼり」の面々は拍手を浴びながら前に進み出て、鈴木から座長の玉城に優勝旗が贈られた。私オムは「このチームで芝居ができて良かったです!」とコメントし、玉城は「鯉のぼりを掲げたあとに、この優勝旗を掲げられたこと、本当にうれしく思います。素敵な催しをやってくれたマッキー(荒牧)、ありがとうございました!」と感謝を口にし、メンバーと喜びを分かち合った。

結果発表後、全劇団の演出家と俳優たちが一言ずつあいさつした。川尻は「悔しいので、また呼んでいただけたらコメディでてっぺん取りたいです」と闘志を燃やし、松崎は「素晴らしい5作品を観られたこと、すっごく幸せでしたが、すっごく悔しい。この気持ちを糧にこれからの演劇を作っていきます」と言葉に力を込める。中屋敷は「リーダーが言っていた『良い子にしていれば来年会える』を信じて、これからもがんばっていきます」と作品に絡めて意気込みを述べ、三浦は七海座長のリーダーシップに感謝を伝えながら「(5作品を観て)演劇の可能性はまだまだあるなと感じました!」と期待に声を弾ませた。俳優たちは、今回参加できたことへの喜び、負けた悔しさ、演劇や演劇業界への思いなど、それぞれ気持ちを述べた。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より、閉幕のあいさつをする荒牧慶彦。

「演劇ドラフトグランプリ2023」より、閉幕のあいさつをする荒牧慶彦。[拡大]

プロデューサーの荒牧は、演劇への愛、すべての関係者への感謝を語りながら「今日を通して、演劇を愛する気持ちがさらに深まりました」と話す。最後に、荒牧の「本日は、誠に!」を音頭に、参加者が「ありがとうございました!」と声をそろえ、イベントは終幕を迎えた。

なお、舞台専門プラットフォーム・シアターコンプレックスTOWNでは、12月13日18:59まで見逃し配信を実施。配信終了後は、19日23:59までメイキング映像を楽しめる。

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「演劇ドラフトグランプリ2023」

2023年12月5日(火)※公演終了
東京都 日本武道館

プロデューサー:荒牧慶彦
総合演出:植木豪
総合司会:山寺宏一
ナビゲーター:鈴木拡樹
レポーター:高木俊(楽屋レポーター)、田中涼星(アシスタントレポーター)
特別審査員:中川晃教

参加劇団

劇団「一番星」

座長:荒牧慶彦
脚本・演出:川尻恵太
演劇テーマ:アイドル
出演:木津つばさ高橋怜也福澤侑松井勇歩

劇団「びゅー」

座長:高野洸
脚本・演出:松崎史也
演劇テーマ:天気
出演:北川尚弥高木トモユキ古谷大和松島勇之介

劇団「国士無双」

座長:染谷俊之
脚本・演出:中屋敷法仁
演劇テーマ:宝箱
出演:糸川耀士郎椎名鯛造鳥越裕貴長妻怜央

劇団「恋のぼり」

座長:玉城裕規
脚本・演出:私オム
演劇テーマ:初恋
出演:石川凌雅小西詠斗萩野崇服部武雄

劇団「品行方正」

座長:七海ひろき
脚本・演出:三浦香
演劇テーマ:待ち合わせ
出演:加藤大悟唐橋充後藤大廣野凌大

※高木俊の「高」ははしご高が正式表記。

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あみ @tbEiO511GUsuFgZ

とても楽しくて盛り上がってきました🎉自分では、上手くレポ出来ないので助かります❗️
https://t.co/HsndbRSeJI

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