「MPAD2023」2日目となる11月16日には、
2011年に始まった「MPAD」は三重県内の飲食店・寺院を会場に、料理と俳優の身体を通じて名作・古典のリーディング公演を楽しめる企画。「『耳で楽しむ古事記』~その3 因幡素兎」は京都を拠点に活動する田中遊と広田ゆうみによる「古事記」のリーディングパフォーマンス第3弾で、現代語訳を橘雪子、演奏を行灯社が担う。なお13回目となる今回の「MPAD」より、百景社代表の
「『耳で楽しむ古事記』~その3 因幡素兎」の会場となったのは、JR阿漕駅近くの古民家をリノベーションした、キッチンワークペコリーノ。高い天井と大きな鏡が開放感を与える店内には、シーリングライトやテーブルライト、クリップライトなどさまざまな照明が配され、さまざまな風合いの光がテーブルをやんわりと照らす。
この日のメニューは、木箱の中に小さな器が賑々しく詰まった見た目も楽しいおかず7種と、メインのロールキャベツ。“木箱の中身”には、甘酢あんがかかったゴロゴロ野菜のがんも、サーモンの西京焼き、じんわりした味わいとサクサク感を楽しむ塩麹唐揚げやゴマの食感が印象的なひじきの中華和え、ほんのり甘いさつまいものレモン煮など、野菜と魚、肉がバランスよく並ぶ。またロールキャベツには優しい味のスープがよく染み込んでいて、その傍らにれんこんチップスやじゃがいも、にんじん、かぼちゃなどが彩りよく添えられた。食後には、甘さの中に苦味も感じられる、小さいながらぎゅっと味わいが詰まったキャラメルプリンも。お腹も気持ちも満たされたところで、カーテンで仕切られた店の奥に案内された。
まずはプログラムディレクターの志賀があいさつ。続けてフルートとハープ、鉄琴の生演奏とともにリーディングが始まった。「耳で楽しむ古事記」では古語と現代語により神様たちの物語が語られる。田中と広田は声を重ねたり、あえて間をとったり、声の高低をつけたりしながら「古事記」を読み進めていく。
最初は意味を追い、語られるイメージを取りこぼさないように聞き入ったが、徐々に語られる内容より“音”のほうに意識がいくようになった。特に、誕生した神々の名前が次々と読み上げられるシーンでは、リーディングの声と音楽とがテンポよく共鳴し合い陶酔感を与えた。
「MPAD2023」は11月24日まで行われる。
「MPAD2023」
2023年11月15日(水)~24日(金)
三重県 各所
林英世「犬を連れた奥さん」
2023年11月15日(水) ※公演終了
三重県 radi cafe apartment
作:アントン・チェーホフ
訳:小笠原豊樹
演出・出演:林英世
田中遊×広田ゆうみ×行灯社「『耳で楽しむ古事記』~その3 因幡素兎」
2023年11月16日(木)※公演終了
三重県 キッチンワークペコリーノ
編纂:太安万侶
現代語訳:橘雪子
出演:
演奏:行灯社
西本浩明「芋虫」
2023年11月17日(金)※公演終了
三重県 塔世山 四天王寺
作:江戸川乱歩
演出:西本浩明
出演:西本浩明、松本拓也
うさぎ庵「十二月八日」
2023年11月22日(水)
三重県 うなぎ料理 はし家
作:太宰治
演出:工藤千夏
出演:大井靖彦
theater apartment complex libido:「残像に口紅を」
2023年11月23日(木・祝)
三重県 中津軒
作:筒井康隆
演出:岩澤哲野
出演:松本一歩
大谷朗×角ひろみ「藤十郎の恋」
2023年11月24日(金)
三重県 割烹旅館 八千代
作:菊池寛
演出:角ひろみ
出演:大谷朗
関連記事
熊井玲 @rei720
そして先週末は毎年秋のお楽しみ、三重の「MPAD」の取材へ。キッチンワークペコリーノさんは味と見た目が完璧に私好みだなと改めて実感。また四天王寺でみた「芋虫」は、「MPAD」におけるリーディングの新境地だったんじゃないかなと思いました。今週末まで開催されてます!
https://t.co/uDQ9fp7sHG