ご当地VRアイドルグループを取り巻くとある村の群像劇、無名劇団「あなとうと」

無名劇団「あなとうと」が10月6日から9日まで大阪・ABCホールで上演される。

これは、無名劇団にとって初となるABCホールでの公演。過疎化が進む架空の村を舞台にした本作では、村の再起をかけて誕生したご当地バーチャルリアリティアイドルグループ・なずなんボーイズを取り巻く群像会話劇が展開する。人気が出たなずなんボーイズは、村の秋祭りでリアル交流会を行うことに。“実写版”なずなんボーイズに選抜されたのは、地元消防団の若者たち。彼らは無事に、祭りを遂行することができるのか……。劇中では、なずなんボーイズによる歌やダンスも登場する。

出演者には安藤夢叶、石原正一、尾形大吾、神咲有希乃、黒川葉月、中井美空、中村ユリ、樋口みどりこ、藤戸佑飛、古川剛充、山田真彩子、川下大洋のほか、無名劇団メンバーの泉侃生、島原夏海、東田萌希、柊美月が名を連ねた。脚本・演出を担う島原は「今回物語の場に選んだのは、過去の豪雨災害で人口減少に歯止めがかからない架空の村。村民の賑やかな秋祭りの1日のなかにある悲しみ、祈り、希望を表現したい」と語っている。上演時間は1時間30分を予定。

島原夏海コメント

私はこれまで、自分自身が体験した痛みや悲しみを劇作に変えてきた。そうでないと当事者の心理には至れないと思ってきたからだ。経験していない戦争や震災や凶悪事件を扱うのは“ネタ”にしているだけではないかと怒りすら感じていた。

けれども今回、私は自分自身が体験していない悲しみや苦しみを描こうと思った。近年何作も劇作を続けるなかで、ようやく「他人の痛みや悲しみを、私ごととして捉えられるか」という当たり前のことに気付けたからである。これは人間生活を営む上で、とても重要なことである。自分にはどうでもいいことでも、それを辛いと感じる人がいる。その理由を考えず、結果だけを取り上げて持論を展開すると、最終的に巨大な軋轢を生んでしまう。

自分への戒めを込めて。

今回物語の場に選んだのは、過去の豪雨災害で人口減少に歯止めがかからない架空の村。村民の賑やかな秋祭りの1日のなかにある悲しみ、祈り、希望を表現したいと思う。