ヨーロッパ企画新作ミステリーは予想を超えた展開に…永野宗典「僕もその境地へ」

ヨーロッパ企画「切り裂かないけど攫（さら）いはするジャック」の記者会見が本日8月1日に大阪府内にて行われた。

「切り裂かないけど攫いはするジャック」は、ヨーロッパ企画が25周年を記念して行うツアー公演。会見にはヨーロッパ企画の上田誠、酒井善史、諏訪雅、中川晴樹、永野宗典、藤谷理子、客演の早織、金丸慎太郎、藤松祥子、内田倭史、岡嶋秀昭が登壇した。

まずは上田があいさつ。ミステリーは以前からやりたかったが、ハードルの高さを感じていたと言い、今回、満を持しての創作となる。続けて劇団員があいさつ。「貴族の役をやらせていただきます酒井です。僕は……ジャックなのでしょうか？」「オルガン弾き役の諏訪です。一番ジャックだと思われるようにしたいと思います」「銀行家……（と一瞬言いよどみ、周囲から『これは怪しいですね』とツッコミが入る）役の中川です！」「人攫いジャックを追跡する警部役の永野です。今回、ビジュアルのセンターを取ったので（笑）、その意気込みでやろうと思います！」「推理婦人役の藤谷です。推理婦人というからには、警部よりも名推理を繰り広げたいと思います」と自身の役どころを語り、仲の良さを見せる。

劇団員の調子に合わせて、客演陣もあいさつ。ヨーロッパ企画作品に出演するのが3作目となる早織は「わけありげなパブの主人を演じます。ヨーロッパ企画は公演が終わるととても寂しくなる劇団。今回も出演できてうれしいです」、常連の金丸は「拾い屋です。何を拾うのかはわかりません（笑）。7月24日に稽古が始まったのですが、すでにめちゃくちゃ面白いです」、初参加の藤松は「花売り役です。皆さん、舞台上で観るときと同じように稽古初日から面白くて、私も私にできることを探してがんばります」、同じく初参加で煙突掃除夫役の内田は「演劇を始めたときから憧れていたヨーロッパ企画さんにオファーをいただいてびっくりしています」、さらに「ヨーロッパ企画の京都の先輩です」と自己紹介した岡嶋は「ミートパイ屋です。シンプルに25年で一番面白い舞台になるようがんばります」とそれぞれに意気込みを述べた。

その後、酒井のナレーションで、前回公演「あんなに優しかったゴーレム」から現在までの、ヨーロッパ企画の活動が次々とスクリーンに映し出された。舞台、映画、テレビドラマ、ラジオなどその幅広さと量に、司会者も思わず「この1年のこととは思えないくらいの量ですね！」と驚きを口にする。さらに25周年の今年は、7月に行われた「ヨーロッパ企画25周年カフェ」を皮切りに、新作「切り裂かないけど攫（さら）いはするジャック」全国ツアー、11月のヨーロッパ企画25周年特別興行 in 南座「きっと、私UFOを見た。」とお祝いムードが続く。

25周年について諏訪は「もともと自分たちでやりたい公演をやるという活動ペースだったのが、いつの間にかいただいた仕事を打ち返すことが増えていたのでは、と思い直し、やりたいことをやるペースに戻していこうという思いで『25周年カフェ』を企画しました。ただただ楽しく幸せな1週間でしたね。でもそれだけでは地味なのでは、という周囲の声もあり、もう少し大きな会場でイベントを、と考える中で、偶然南座さんで特別興行を行えることになりました」と説明した。京都を拠点にするヨーロッパ企画にとって、京都を代表する劇場の1つ、南座で公演することには「思い入れがあります」と上田。「しかも南座でSFをやるという（笑）。旗揚げ公演が『ところで、君はUFOを見たか？』だったので、今回はそのアンサーのようにもなっています」と語った。

また永野は25周年に向けて、これまでヨーロッパ企画で演じられたキャラクターが現在のメンバーを祝福するというコンセプトのイラストを描いたと言い、「過去の映像を見返しながら、衣裳など細かく描き込みました。ものすごく大変でした！ でも描きながら、『この作品ではこんなことがあったな』『このときの自分の演技はこうだったな』など、さまざまな出来事も思い出しました」と振り返った。

「切り裂かないけど攫（さら）いはするジャック」はミステリー劇のため「今回だけはネタバレ厳禁で！」と話す上田に対し、記者が「誰がジャックなのかは、上田さんの中では決まっているのか」と問うと、「よくミステリーでは結末が決まっていてそこから逆算して描いていくと言われますが、例えば連続ドラマを書くときも、後半の可能性を感じつつも頭から書いていくことで、後半ができていくことがあります。今回もその書き方でいけるのではないかと思っていて。それで数日前に考えついた『ジャックがこういう人物だったら面白いのでは』というアイデアを諏訪さんと永野さんに話したらリアクションが大きかったので……」と2人に視線を向ける。諏訪は「“25周年の集大成”みたいなことはやりたくないなと思っていたのですが（上田のアイデアを）聞いたら、『何それ』っていうような集大成感のない案だったので（笑）、安心しています」と言い、永野も「思いもよらなかった発想を終盤に持ってきていて、僕の好きな上田くんだなって（笑）。僕もその境地へついていくぞと心を引き締めました。相当沸くと思います！」と観客の期待を煽った。

「切り裂かないけど攫いはするジャック」は9月9日に滋賀・栗東芸術文化会館SAKIRA（さきら） 中ホールで行われるプレビュー公演を皮切りに、11月12日まで京都・東京・高地・福岡・広島・大阪・神奈川・愛知・富山を巡演。また「きっと、私UFOを見た。」は11月21日に南座のみで上演される。

※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。