6月24日に東京で開幕した
「ヴィクトリア」(原題:A Spiritual Matter)は、スウェーデンの映画監督
東京での開幕を経て、藤田は「鮮烈で悲しくて美しい、舞台でしか表現できないような、言葉を大事にした作品にできたのではないかと思っております。ベルイマンが映画や舞台にしたかったという作品が、大竹しのぶさんという、“控えめにいって”世界一の女優さんが役に魂を宿してくださったことで、2023年の今、この作品が鮮烈に輝いているのではないかと思います」と手応えを述べる。
藤田にとってベルイマンは「自分の人生に決定的な影響を与えた人物」で、「十代の頃からたくさん作品に触れてきて、自分の細胞の中にもベルイマンの作品が入っています。ベルイマンは美しい構図の中で人間そのものを描いている。表現者としてこういう作品を作りたいと思いますし、彼が映画人であり演劇人でもあるというところが、自分が目指す理想形で、憧れを感じていました。ですので、まさかベルイマンの作品に挑戦できる日が来るとは想像していませんでしたし、このような機会をいただけてうれしいです」と今回の巡り合わせに喜びを語る。
稽古では「言葉によっていかに観客の想像力をかき立てるかという、演劇のプリミティブな魅力に向き合い続けました」と言い、大竹やプランナーたちからさまざまなアイデアが湧き出す、非常にクリエイティブな共同作業だったと振り返る。そんな大竹の魅力について、「常にお客さんのことを全身で意識している、非常に稀な俳優だと思います。お客様が発する空気が変われば演技も変わる、毎日変化し続けている方」と賞賛する。「特に『ヴィクトリア』は一見すると、精神を病んでしまった女性の狂気を描いているようにも見えますが、合わせ鏡のように女性の愛らしさやチャーミングな部分も描いている作品。女性の多面性を描いたベルイマンの『鏡の中の女』という作品がありますが、まさに大竹さんは、そんなヴィクトリアの多面性を同時に表現する力を持っていらっしゃいます」と厚い信頼を寄せる。
本作には、翻訳の肥田光久、美術の松井るみ、衣装の前田文子、ステージングの小野寺修二と魅力的なスタッフが集結している。ステージングを担う小野寺とは、「ヴィクトリアの思考が変わるところで11シーンあるのですが、そのシーンをどうつないでいくかという点と、ヴィクトリアが(会話の)対象と相対しているときとそうでないときがあり、対象をはっきりさせたほうが良いかどうかをシーンごとに話し合いました。そのことによって、ヴィクトリアの狂気とリアルな世界を構築することができたのではないかと思います」と話す。また美術の松井、衣裳の前田には「“白の世界”を徹底したいと伝えました」と言い、「1970年代の作品ですし、ベルイマンの作品ではありますが、ピーター・ブルックの60・70年代の作品や『なにもない空間』のことも意識にあり、無垢であること、何もないことを想起させる色として白が大事ではないかと考え、皆さんと話し合いを重ねてアイデアを統合し、今のデザインになりました」と話した。
そしてそんな本作の魅力は、ラストシーンに詰まっていると話す。「『ヴィクトリア』は人間讃歌であり女性讃歌の作品です。喜怒哀楽すべて入っていますが、ラストシーンは大竹しのぶさんにしかできない形で女性の希望が表現されています。少しでも表現に興味があったり、ものを見ること、作ることに興味がある方には必ず感動していただけると思います」と言葉に力を込めた。
東京公演は6月30日まで。その後、7月5・6日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール、8・9日に京都・京都芸術劇場 春秋座、11日に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホールでも公演が行われる。なお、東京公演の6月28日14:00開演回と京都公演の7月8日14:00開演回は八嶋智人、兵庫公演の5日14:00開演回には高橋克実、愛知公演の11日14:00開演回には中井美穂をゲストに迎えたアフタートークが行われる。さらに関連企画として、イングマール・ベルイマン監督作品「鏡の中の女」が、6月29日まで京都・出町座で上映される。
シス・カンパニー公演「ヴィクトリア」
2023年6月24日(土)~30日(金)
東京都 スパイラルホール
2023年7月5日(水)・6日(木)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2023年7月8日(土)・9日(日)
京都府 京都芸術劇場 春秋座
2023年7月11日(火)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
作:
翻訳:肥田光久
演出:
出演:
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【会見レポート】「ラストは大竹しのぶさんにしかできない表現に…」藤田俊太郎が「ヴィクトリア」の手応え語る https://t.co/lrTSVa64HH