令和5年度(公社)全国公立文化施設協会主催「松竹大歌舞伎」東コースの製作発表記者会見が、昨日6月9日に東京都内で行われた。
「松竹大歌舞伎」は、全国公立文化施設協会が主催する巡業公演。本公演は2019年に実施された西コースを最後に中止となっていたが、今回約4年ぶりに再開される。演目には、「鬼一法眼三略巻 菊畑」と「新古演劇十種の内 土蜘」が並んだ。出演者には
製作発表記者会見には、松緑、そして全国公立文化施設協会の岸正人専務理事 / 事務局長、松竹の山根成之取締役副社長 / 演劇本部長が出席した。松緑は「久しぶりに巡業に行かせていただくことを楽しみにしております」と述べつつ、演目選定に「派手な古典作品を2本披露いたしますので、お客様にも喜んでいただけるのでは」と自信を見せる。
松緑は「菊畑」で吉岡鬼一法眼、「土蜘」で叡山の僧智籌実は土蜘の精を勤める。「菊畑」について、松緑は「私が10歳くらいの頃、市村羽左衛門のおじ様が鬼一法眼、私の父(初世尾上)辰之助が智恵内、(尾上)菊五郎の兄さんが虎蔵をやっていた『菊畑』を観たのですが、出てくる登場人物がすべて素敵で、私のバイブルのような作品になりました。非常に好きです」と思いを述べる。なお、松緑は奴智恵内実は吉岡鬼三太を何度も勤めているが、吉岡鬼一法眼を演じるのは今回が初めてのこと。松緑は「智恵内は、誤解を恐れずに申し上げれば、やっていて気分が晴れやかになる“気の良い”役。今回も智恵内をやりたいところではございましたが、私達世代はそろそろ老けの役に回り、第一線で活躍するようになった後輩たちと歌舞伎を盛り上げていくことも非常に大事なことだと思い、鬼一法眼を演じることにしました」と明かす。
さらに「鬼一法眼は、やはり市村羽左衛門のおじさんや、市川左團次の兄さんのイメージがありますね。懐の深い、“カッコいい”おじさんの役です」とその魅力に触れる。「10年20年経ったあとに説得力を持って鬼一法眼を勤められるよう、歌舞伎俳優としてはまだまだ若造の、今のうちからこの役を勉強し、ゆくゆくは鬼一法眼も智恵内、両方の役で、お客様に喜んでいただけるような俳優になりたいですね」と意気込みを述べた。
「土蜘」で演じる叡山の僧智籌実は土蜘の精は、松緑の祖父である二世尾上松緑や、父である辰之助も得意としてきた役。「私自身、歌舞伎座でも何度も勤め、襲名の際にもさせていただいた狂言。そして、私が初めて師匠である菊五郎の兄さんに巡業に連れて行っていただいたとき、出させていただいた演目でもあります。そのときは、今回(中村)梅枝さんが勤められる源頼光を演じておりました。30年以上前の話ではあるんですけど、そのときのことがとても心に残っておりまして、私がリーダーとして巡業をするときには、絶対に『土蜘』を出したいと思っておりました」と話す。役について「今歌舞伎座でやっている『川連法眼館』の狐忠信もそうですが、私がまだ何もできない若い頃から、菊五郎の兄さんに手取り足取り教えていただいた、大切なお役の1つ。そういうものを、日本全国の皆さんにご覧になっていただけたら」と言葉に力を込めた。
公演は、6月30日から7月31日まで全国で行われる。
令和5年度(公社)全国公立文化施設協会主催「松竹大歌舞伎」東コース
2023年6月30日(金)~7月31日(月)
「鬼一法眼三略巻 菊畑」
出演
吉岡鬼一法眼:
奴智恵内実は吉岡鬼三太:坂東亀蔵(Aプロ)、中村萬太郎(Bプロ)
笠原湛海:尾上左近
皆鶴姫:坂東新悟
奴虎蔵実は源牛若丸:中村梅枝
「新古演劇十種の内 土蜘」
作:河竹黙阿弥
出演
叡山の僧智籌実は土蜘の精:尾上松緑
源頼光:中村梅枝
渡辺源次綱:中村萬太郎
坂田公時:尾上左近
侍女胡蝶:坂東新悟
平井保昌:坂東亀蔵
Aプロは6月30日から7月15日まで、Bプロは16日から31日まで。
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