7月に大阪・大阪松竹座で開催される「七月大歌舞伎」の出演者・
幸四郎は、昼の部「伊賀越道中双六『沼津』」に池添孫八役で、夜の部「平家女護島『俊寛』」「『吉原狐』中万字屋の二階座敷 三五郎とおきちの家」に、それぞれ丹波少将成経役、三五郎役で出演する。幸四郎は「沼津」も「俊寛」も、自身の家にゆかりのある演目であることに触れながら、まず「沼津」について「傑作だと思います。約2時間ありますが、まったく隙のない完成された作品。勉強して挑みたいですね」と言葉に力を込める。また「俊寛」については「今回、松嶋屋のおじ様(片岡仁左衛門)が俊寛を演じられます。おじ様は、ドラマチックで、人の心をわしづかみにするような、感動を与える俊寛をおやりになられるので、丹波少将成経としてご一緒させていただけてありがたい」と話す。さらに「毎年、(大阪松竹座での『七月大歌舞伎』で)おじ様がどんな演目をやられるのか楽しみにしていたところ、今年は『俊寛』なんだ!と」と瞳を輝かせた。
「吉原狐」は、1961年に東京・歌舞伎座で初演され、十七世中村勘三郎がおきち、初代松本白鸚(当時八代目幸四郎)が三五郎を勤めた。2006年にも歌舞伎座で上演され、中村福助がおきち、坂東三津五郎が三五郎、そして当代幸四郎(当時七代目市川染五郎)が、貝塚采女を演じた。今回は、3度目の上演となる。幸四郎は「前回が『納涼歌舞伎』での上演だったのですが、『こんなお芝居あったんだ』『こんなに素敵なお芝居が、なぜそんなに上演されていなかったんだろう』という記憶がとても強くて。大阪松竹座で再び上演することができ、うれしく思っています」と2006年版を振り返る。「珍しい出し物ですけど、とても観やすく楽しく、笑っていただけるし、ほろっとしていただける作品だと思っております。今回をきっかけに、さらに演目に注目が集まるような、そういう上演を目指したいですね」と意気込みを明かす。また自身が演じる三五郎については「三五郎をやるには僕は見た目が若いので。がんばって老けないと……(笑)」と冗談を飛ばし、会場を笑いで包んだ。
息子の市川染五郎は、本公演で大阪松竹座の舞台に初めて立ち、「吉原狐」では2006年に幸四郎が勤めていた采女を演じる。このことに「前回、采女を勤めた俳優さんはとてもカッコいい人だったので、それを目指してもらいたいですね。なかなか難しいとは思うんですけどね……(笑)」とちゃめっ気たっぷりにコメント。また、中村米吉、中村隼人、中村虎之介といった若手の起用に「若い子たちの活躍の場になれば。(中村)鴈治郎さん、(中村)扇雀さん、(片岡)孝太郎さんにも出ていただいていますので、彼らにしっかりと締めていただいたうえで、若い人たちにがんばって弾けてほしい」と思いを語る。さらに「(『沼津』も『俊寛』も)それぞれのジャンルの代表的な作品。それに『吉原狐』という、少し新しく、珍しいお芝居が入ることで、バランスの良い演目立てになったのでは」とラインナップに自信を見せた。
公演は7月3日から25日まで。チケットの一般販売は6月7日10:00にスタート。
※初出時より、本文の内容を変更しました。
「大阪松竹座開場100周年記念『七月大歌舞伎』関西・歌舞伎を愛する会 第三十一回」
2023年7月3日(月)~25日(火)
大阪府 大阪松竹座
昼の部
一、「『吉例寿曽我』鶴ヶ岡石段 大磯曲輪外」
出演
〈鶴ヶ岡石段〉
近江小藤太:中村隼人
八幡三郎:中村虎之介
〈大磯曲輪外〉
工藤左衛門祐経:坂東彌十郎
曽我十郎祐成:片岡千之助
曽我五郎時致:市川染五郎
秦野四郎:大谷廣太郎
大磯の虎:中村米吉
朝比奈三郎:中村亀鶴
二、「『京鹿子娘道成寺』道行より鐘入りまで」
出演
白拍子花子:尾上菊之助
三、「伊賀越道中双六『沼津』」
出演
雲助平作:中村鴈治郎
娘お米:片岡孝太郎
池添孫八:
呉服屋十兵衛:中村扇雀
夜の部
一、「平家女護島『俊寛』」
作:近松門左衛門
出演
俊寛僧都:片岡仁左衛門
丹波少将成経:松本幸四郎
丹左衛門尉基康:尾上菊之助
海女千鳥:片岡千之助
瀬尾太郎兼康:坂東彌十郎
二、「『吉原狐』中万字屋の二階座敷 三五郎とおきちの家」
作:村上元三
補綴・演出:齋藤雅文
出演
三五郎:松本幸四郎
泉屋おきち:中村米吉
越後屋孫之助:中村隼人
仲働お杉:中村虎之介
貝塚采女:市川染五郎
小松屋おえん:片岡孝太郎
松葉屋女将お筆:中村扇雀
遠州屋半蔵:中村鴈治郎
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松本幸四郎、約17年ぶり上演の「吉原狐」に向け気合い十分「がんばって老けないと…」(会見レポート) https://t.co/S4WkV83B6E