これは「戦争を考える2作品連続上演」と銘打たれた渡辺源四郎商店とうさぎ庵の公演。「空に菜の花、地に鉞」では、独裁者にある使命を託され、東北地方北部にやって来た青年を描く。「千里眼」は、1910年を舞台に千里眼能力の真偽に振り回される、ある家族の物語となる。
上演に際し「空に菜の花、地に鉞」の作・演出を手がける
「空に菜の花、地に鉞」は5月2日から5日まで東京のザ・スズナリ、28日から6月1日まで青森・渡辺源四郎商店 しんまち本店2階稽古場にて上演され、「千里眼」は5月7日から10日までザ・スズナリ、20・21日に渡辺源四郎商店 しんまち本店2階稽古場にて上演される。また「空に菜の花、地に鉞」は6月10日から7月10日まで、「千里眼」は6月1日から30日まで配信も行われる。
畑澤聖悟コメント
斧(おの)と鉞(まさかり)の違いはなんであろう。「刃先の幅が狭いのが斧、広いのが鉞」と、聞いたことがある。検索したら「斧の小型のものを鉞という」という解説が出てきたが、違うんじゃないか。「♪鉞かついだ金太郎」と歌われるからには担がねば持ち運べない大きさでなければならない。両手で渾身の力を込めなければ振り下ろせない。下手に振り回してはいけない類いのモノだ。さて、青森県の下北半島はその形状から「鉞半島」の異名がある。鉞の柄の付け根に当たる地域にはかつて石油コンビナートの誘致が企画され、世界最大の開発と謳われたが頓挫した。その跡地には現在、原子力発電所やプルトニュウムや使用済み核燃料を収容した核施設がひしめいている。その目と鼻の先には極東最大の空軍基地である米軍三沢基地。
上空を轟音と共にジェット戦闘機が旋回する。某国からしきりに飛んでくる怪しい飛翔体は、実はこの界隈を標的にしているという噂もある。日本の国策に振り回され続けているこの危険な鉞が逆襲の一撃を振り下ろす日が来ないものだろうか。そんなことを夢想しつつ筆を執った。お楽しみ頂けたら幸いである。
工藤千夏コメント
この「千里眼」のためにハレー彗星のことを調べていたら、1986年2月9日にハレー彗星が地球に接近したときの記憶が全くないことに気づき、愕然とした。いくら日本から見づらかったとはいえ、メディアではそのブームが取り上げられ、南半球への観測ツアーも大人気だったはずだ。が、とにかく何も覚えていない。空を見上げる余裕もなかったのだろうか......そうだ! なかったのだ! 1985年の年末、勤務していた広告代理店の仕事納めの日の夕刻、銀座のとあるビルの屋上から落ちて来た看板が私を直撃した。救急車で近くの病院に運ばれ、頭を4針縫う。1月初旬に一度出勤するも、PTSDなのかフラフラし、ひとりで電車に乗ることもままならなくなり、思い切って3月いっぱい実家に戻っていたのだった。さすが、禍の兆し、ハレー彗星だ。しかも、降ってきた看板というのは演劇で使用したコンパネを屋上に積んでいたもので、突風で舞い上がり、ビルの軒先テントでワンバウンドしてから私に当たったという曰わく付きの代物だった。きっと、その祟りで、私は今や演劇界から抜けられない羽目に陥っているのである。
さすがに2061年にこの世に居るとは思えないので、今回のお芝居で一緒に夜空を見上げてみませんか?
戦争を考える2作品連続上演 渡辺源四郎商店第38回公演「空に菜の花、地に鉞」、渡辺源四郎商店第38回公演Presents うさぎ庵Vol.19「千里眼」
「空に菜の花、地に鉞」
2023年5月2日(火)~5日(金・祝)
東京都 ザ・スズナリ
2023年5月28日(日)~6月1日(木)
青森県 渡辺源四郎商店 しんまち本店 2階稽古場
作・演出:
出演:山上由美子、工藤良平、音喜多咲子、松野えりか、工藤和嵯、三津谷友香、白石恭也、
「千里眼」
2023年5月7日(日)~10日(水)
東京都 ザ・スズナリ
2023年5月20日(土)・21日(日)
青森県 渡辺源四郎商店 しんまち本店 2階稽古場
作・演出:
出演(五十音順):
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