第44回松尾芸能賞の贈呈式が、本日3月29日に東京都内で行われた。
1980年に創設された松尾芸能賞は、日本の芸能の保存・向上に寄与した人物に与えられる芸能賞。贈呈式には、大賞の
演劇部門で優秀賞に輝いた菊之助は、受賞者紹介VTRに「子供の頃は楽屋の廊下を走り回り、水鉄砲で遊んでいた」というナレーションがあったことに触れて「手の付けられない悪ガキだった自分が、この栄誉ある賞をいただけるとは」と笑い交じりに話す。続けて菊之助は尾上菊五郎、中村吉右衛門が松尾芸能賞の大賞を受賞していることを挙げて「父と岳父の背中を追い、これからも精進したいと思います」と語った。
同じく演劇部門で優秀賞を獲得した天海は「驚きと恐縮、誇らしさでいっぱい」と顔を輝かせ、「一緒に受賞された素晴らしい方々と共に、お客様にたくさん楽しんでいただける作品を作れたら」「私を選んでくださった皆さん、いつも応援してくださる皆さんに恥じないよう、がんばっていきたい」と意気込みを述べた。
また舞踊部門で優秀賞に選ばれた友五郎は、宝塚歌劇団やOSK日本歌劇団の振付も手がける。友五郎は「私のように、ほぼ大阪でしか活動していない者にも目を向けていただいたことに感謝します」「これからも大阪、そしてエンタテインメントの力になれるように精進したい」とあいさつ。さらに文楽部門で優秀賞の玉男は「今年の秋に国立劇場が閉館します。50年以上も国立劇場で修業してきたので本当に寂しい。でも2代目国立劇場ができるそうですから、健康に気を付けて芸道に励みます」と意気込んだ。
大賞の市村は、第19回松尾芸能賞で優秀賞に選ばれたことを振り返りつつ「もうご縁がないかと思っていましたが、今回大賞をいただけた」と語り、「大賞となると名前の字が大きく書かれる(笑)。『もっともっと大きな俳優になれ』という励ましの賞をいただいたのだと思う。今年74歳になりましたが、大賞に恥じない大きな俳優を目指してさらにがんばっていきたい。ありがとうございました!」とスピーチし、盛大な拍手を浴びた。
贈呈式のあとに行われた囲み取材には、市村、天海、菊之助、そして三山が出席し、改めて受賞の喜びを述べた。市村は「俳優生活50周年の今年、大賞をいただけて……“あんたが大賞”ですね」と海援隊の楽曲「あんたが大将」に引っかけたジョークを飛ばし、「松尾芸能賞は大衆演劇から出発していると聞き、『やはり僕はこの賞をもらう人間だな』と思いました。僕も大衆に向けた演劇を目指していますから」とほほ笑む。また市村は、第19回松尾芸能賞で優秀賞を受賞したときのことをインタビュアーに尋ねられると「あのときもトロフィーをいただきましたね! 今日もらったものより小さめのを……(笑)。なんかごめんね!」と周囲の優秀賞受賞者たちに声をかけ、一同を笑わせた。
天海は「感謝していますし、同時に(受賞には)責任があって怖いなとも思います。トロフィーは家の一番目立つところに飾ります!(笑)」と笑顔。菊之助は「コロナの影響で難しい状況でしたが、だんだんお客様が歌舞伎に戻ってきてくださっている。エンタテインメント界全体をもっと盛り上げたいという気持ちでいっぱい」と言葉に力を込める。
「夢見心地です」と言う三山は「師匠に名前を付けてもらってから15年間歌ってこられた。ファンの皆様にお礼を言いたい」と感慨深げな表情を浮かべ、「今日はけん玉を持っていないですが……持ってきたほうが良かったでしょうか(笑)」と笑いを誘った。
取材では受賞者が、これから挑戦したいことについて明かす場面も。市村は「僕は先日の市村座で、挑戦を終えたばかり。秋のミュージカル『生きる』は身体が弱った役だから、ほかのことでエネルギーを使おうかな……(笑)。一生懸命身体を鍛えます。体調はばっちりです!」と、得意の脚上げを披露して報道陣を沸かせた。
天海が4月から始まるカンテレ・フジテレビ系テレビドラマ「合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~」、三山が4月に大阪・新歌舞伎座で上演される「デビュー15周年記念 三山ひろし特別公演」をそれぞれの挑戦として挙げると、市村は「それが天海さんの新しい挑戦ですね」「歌だけじゃなくて芝居もやるんだね。わからないことがあったらいつでも聞いて!」と、元気に相槌を打つ。菊之助は「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」が4月12日まで東京・IHIステージアラウンド東京で上演されていることに触れて「絶賛、挑戦中です」とコメント。市村がすぐさま「遊びに行きます!」と笑顔を向けると、菊之助も「“大将”、ありがとうございます!」と頭を下げ、記者たちを和ませた。
第44回松尾芸能賞受賞者
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