「カスパー」は、実在したドイツ人孤児カスパー・ハウザーを題材とした、ペーター・ハントケの戯曲。今回の上演版では、寛一郎がカスパーを演じ、ウィル・タケットが演出を手がける。劇中では、幼少期より約16年間監禁され、発見されたときは1つの文章しか話せなかったと言われるカスパーが、言葉を知ることにより社会に囚われていく様が描かれる。寛一郎以外の出演者には、プロンプター役に
囲み取材には、寛一郎、首藤、タケットが出席した。本作が初舞台となる寛一郎は、「『カスパー』という作品に惚れ込んだから、今までやるつもりがなかった舞台の仕事を受けました。この戯曲は言葉を大事に扱っていますが、僕らが普遍的に使っている“言葉”というものの本当の意味をちゃんと理解したうえで、僕らは言葉を使っているのか、ということに向き合うために、『今この舞台をやりたい』という気持ちがありました」と作品への思いを語る。
また稽古を振り返り、「映像にはある程度の瞬発力が必要なんですけど、舞台は持続性と持久性と自分を客観視しながら常にやらなきゃいけないという戸惑いと違和感が最初はありました。(演出の)ウィルさんには愛のある教鞭をとって頂いて……。稽古場では『なにくそ!』と思いながらやっていました(笑)」と明かした。
首藤は、「今の時代と無理やり結び付けるつもりはないのですが、今の情報過多な社会で生きている僕たちにとっては、とても必要なテーマを投げかけられる話で、僕はこれを読んだとき『みんな、1回カスパーに戻らないといけないな』と思いました」と語り、自身の役柄について「プロンプターという役は、カスパーに力や言葉、それを含めた通常社会のルールや秩序などを調教していく役目です。ちなみに、バレエを披露するシーンは、ありません(笑)」と紹介した。
タケットは、「日本の素晴らしいスタッフとキャストに恵まれ、稽古場に入ってから苦労はありませんでした。英国で1人で台本に向き合っているときが最も苦しい時間でした(笑)」と述べ、本作について「“自分たちがなぜ人間であるか”ということや、“なぜ人間が社会に入れるか、社会でやっていけるか”ということを問いかけるのが本質的なテーマとなっています。言葉は、お互いに攻撃し合うことに使ったり、励まし合うことに使ったりする。今の社会では、TwitterなどのSNS上で“言葉の選択”に気をつけながら生きていますが、そういう部分は(本作と)共通していると思います。言葉の使い方によっていろいろな影響を与えるので」と説明した。
さらにタケットは、寛一郎が本作で初舞台を踏むことについて「本当に可哀想です。初舞台が僕と一緒で本当に申し訳ない(笑) 。彼には素晴らしい芝居をしていただいております。たぶん映像に早く戻りたいと思われているかもしれないですけど、また舞台をやってほしいです。もう戻っては駄目ですよ(笑)」とおちゃめにコメント。「舞台の難しさは撮り直しがきかないことですが、良い点はカメラの前にずっといなければならないということがないことです。舞台は映像とは違う自由さがあります。(今作では)70数分間、同じ時間を皆さんと共感できる。役者はお客さんに届けて、逆にお客さんからももらうこともできる。だから、寛一郎さんは演劇(舞台)をもっとやったほうが良いですよ。もし再演があれば、ぜひ」と話した。
上演時間は約1時間15分。東京公演は3月31日まで行われ、そのあと4月9日に大阪・松下IMPホールで上演される。
「カスパー」
2023年3月19日(日)~31日(金)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト
2023年4月9日(日)
大阪府 松下IMPホール
作:ペーター・ハントケ
訳:池田信雄
演出:ウィル・タケット
出演
カスパー・ハウザー:
プロンプター:
カスパーの分身たち:
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鉾久奈緒美 @MUKUNAOMIrakuda
今日は「カスパー」初日を見てきました!
出演している方々全員の“言葉”が舞う舞台にゾクゾクしました。
「カスパー」
3/19(日)~31(金)東京芸術劇場 シアターイースト
4/9(日)松下IMPホール
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