PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「ラビット・ホール」の取材会が、3月中旬にオンラインで行われた。
「ラビット・ホール」は、2007年にピュリツアー賞を受賞したデヴィッド・リンゼイ=アベアーの戯曲。2010年には、ニコール・キッドマンの主演・製作による映画「
今回の取材会には、演出の
宮澤はベッカの役作りを「『息子を亡くした母親なんだ』と形から入らないよう心がけています。息子を失った前後にも、ベッカには人生があったはず。だから事故以前の彼女を一生懸命想像していて。稽古をする中でほかのキャラクターとの関係性をあぶり出しながら、タマネギの皮をむくようにしてベッカという人を探っています」と語り、「人の死は遠ざけたいし無視したいけど、身近なものです。『ラビット・ホール』を観ると近しい人と話したくなったり、自分の中に対話が生まれたりするかもしれません」と言葉に力を込めた。
「ラビット・ホール」を2007年頃に知ったという藤田は、本作を「日常の中に非日常はいくらでもあるのだということを物語る作品」と分析し、「今改めて読むと初読のときとまるで印象が異なり、戯曲に描かれている2000年代初頭がとても客観的に感じられます。2020年以降、私たちはさまざまな喪失を経験してきました。私たちがこの作品を改めて立ち上げることで、戯曲のセリフが“今”の言葉になっていくと思う」と述べる。
藤田は「『すでに公演中かな?』というレベルで、稽古場の演技合戦がすごすぎる。本番前に出し尽くしてしまうのではと思うくらい盛り上がっています(笑)」と稽古の充実ぶりを語る。また演出面で意識していることを尋ねられた藤田は、台本に作者による「必要以上に泣かないで」「スキンシップをとらないで」などの注が書かれていることに触れて、「登場人物の泣く、泣かないは僕の演出指針にもなっている。劇中でお客様にカタルシスを感じさせるのではなく、物語を持ち帰ってそれぞれの人生の中でカタルシスを作ってほしいということではないかと解釈しています」と言い、「この作品は希望そのものを伝えるわけではないと思う。希望や再生を感じるラストシーンにしたいとは思っているのですが、それを具体的に描きすぎないのがこの舞台の生命線になるのかなと。名付けられない喜びのようなものや悲しみのようなもの、言葉の向こう側にあるものを手渡せたらいいなと思います」と思いを口にした。
取材会では2人が互いの印象を語る場面も。藤田は2013年に初めて舞台で宮澤を観たことを振り返って、「彗星のごとく現れた宮澤さんに『この方、誰なんだ!』と思ったんです。僕がまったく知らなかった方法論で舞台に立っていて、鮮烈な印象を受けました」と話し、「清々しく、美しい表現をされる俳優さんだと思います。いつか出会いたいと思っていましたし、今回会話劇でご一緒できる巡り合わせに感謝しています」と宮澤に笑顔を向ける。
藤田の絶賛に宮澤は「あはは! ありがとうございます」と応じ、2016年から2017年頃に藤田と初めて対面したことに言及。宮澤は実際に藤田の演出を受けた印象を「俳優の自立性を信じて大切にしてくれる。カンパニーのメンバーそれぞれがやるべき仕事をすごくリスペクトしていらっしゃるから、“みんなで作っている”という感覚があります」と述べ、続けて「『いつも笑顔の藤田さんも、実は家では“闇・藤田”なんじゃないか?』と考えたこともありますが、『やっぱり常にこの柔らかいお人柄なのかも?』という気もしています(笑)。上演までに素顔をもっと暴きたいですね!」と記者たちの笑いを誘った。
公演は4月9日から25日まで東京・PARCO劇場で行われるほか、28日に秋田・あきた芸術劇場ミルハス 中ホール、5月4日に福岡・キャナルシティ劇場、13・14日に大阪・森ノ宮ピロティホールでも上演される。
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「ラビット・ホール」
2023年4月9日(日)~25日(火)
東京都 PARCO劇場
2023年4月28日(金)
秋田県 あきた芸術劇場ミルハス 中ホール
2023年5月4日(木・祝)
福岡県 キャナルシティ劇場
2023年5月13日(土)・14日(日)
大阪府 森ノ宮ピロティホール
作:デヴィッド・リンゼイ=アベアー
翻訳:小田島創志
演出:
出演:
※山崎光の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。
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【会見レポート】宮澤エマらと挑む「ラビット・ホール」に藤田俊太郎「言葉の向こう側のものを手渡したい」
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