これは、シルク・ドゥ・ソレイユにとって5年ぶりとなる来日公演。「アレグリア-新たなる光-」では、シルク・ドゥ・ソレイユの世界進出のきっかけとなった作品「アレグリア」を、“歓喜”をテーマに新たに生まれ変わらせたステージが展開する。
本作の舞台は、王が亡くなり以前の輝きを失った王国。観客と物語の橋渡し役としてステージの中心に立つのは、自分こそが王位継承者にふさわしいと思い込む道化師ミスター・フルール。ミスター・フルールはコミカルな仕草と表情で、序盤から観客の心を物語の世界へぐいぐいと引き込んでいく。続いて、顔は歪み、くたびれた服を見にまとった古い貴族たちがやって来て、特権を維持するためにミスター・フルールの取り巻きとなる。
権力や過去の栄光に固執する彼らと対になる存在として、変化や希望を求める血気盛んな若者ブロンクスや、ニンフ、エンジェルたちが登場する。彼らは、超絶技巧のパフォーマンスによって、人間の持つパワーやエネルギーを力強く生き生きと表現し、王国に光と調和をもたらしていく。劇中では、ポールを使ったアクロバットや人間ピラミッド、トランポリン、空中ブランコなどを取り入れた、約11演目が披露された。
一方で、対立する2つの勢力から離れ、自由気ままに自分たちだけの世界を楽しんでいるのは、クラウンの2人。わちゃわちゃと小競り合いを繰り返す仲の良い2人だが、互いの心がすれ違ったとき、不思議な力で吹雪を巻き起こし、これが国家再建の後押しとなる。小さなトランクの中から猛烈な勢いで飛び出してくる紙吹雪が会場中を襲う中、眩い光に照らされた2人が、なんとか踏ん張ろうと手をつなぎ耐えるシーンは印象的だ。
第1幕でブロンクスの勇敢さを特に象徴していたのは、“ファイヤーナイフ・ダンス”という演目。炎が燃え盛るナイフを持ち、ジャグリングのように放り投げたり身体中をくぐらせたりする人間離れした芸を、余裕たっぷりかつ得意げな表情で繰り出すブロンクスの姿を見て、会場は熱気と興奮で満たされた。
第2幕冒頭の“エアリアル・ストラップ”では、ブロンクスとエンジェルのカップルが観る者をうっとりさせた。互いの身体の一部を支え合い、バランスを取って空中を舞うこの演目では、繊細ながら大胆な技が次々と繰り広げられ、観客からたびたび感嘆の声が上がった。
なお初演時から引き継がれている「アレグリア」のテーマ曲には、エレクトロニックサウンドやロックのアレンジが加えられている。今回は、正反対でありながら2人そろうと大きな力を発揮する、白のシンガーと黒のシンガーがテーマ曲を歌唱した。
エンディングで出て来た演者たちが半円状のステージのふちにずらりと並ぶと、テントの中が歓喜と鳴り止まない拍手に包まれた。東京公演は6月4日まで開催され、その後、大阪公演が7月14日に開幕する。
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シルク・ドゥ・ソレイユ「ダイハツ アレグリア-新たなる光-」
2023年2月8日(水)~6月4日(日)
東京都 お台場ビッグトップ
2023年7月14日(金)~10月10日(火)
大阪府 森ノ宮ビッグトップ
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風呂屋♨ @furobot
【公演レポート】シルク・ドゥ・ソレイユ5年ぶり来日公演「アレグリア-新たなる光-」“歓喜”に包まれ開幕(舞台写真あり / 写真28枚) https://t.co/ngn5YalbuR