「二月大歌舞伎」第3部、通し狂言「霊験亀山鉾 亀山の仇討」に出演する
1822年に初演された「霊験亀山鉾 亀山の仇討」は、実際にあった仇討ち事件をもとに、仇による“返り討ち”が描かれた作品。仁左衛門はこれまで、藤田水右衛門と隠亡の八郎兵衛の2役を2002年、2009年、2017年に演じてきたが、今回“一世一代”として演じ納めることに。このことに、仁左衛門は「昨年2月(に上演された『義経千本桜 渡海屋 大物浦 片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候』の渡海屋銀平実は新中納言知盛役)に続き、今回も一世一代の栄誉を打たせていただきます。これが最後でございます」と言葉を力を込める。
また「最後だと言ったら、あまり歌舞伎に興味のない方でも観に来てくださるかな、と(笑)」といたずらっぽい表情を浮かべつつ「やっぱり自分の中でも、今ならみっともなくないものをお見せできるという思いがあります。『前のほうが良かった』と言われるのが一番嫌ですし、そういう舞台はお見せしたくない。また作品を次に残していくという意味でも、参考資料として、映像ではなくできれば生を観ていただきたいですね」と話す。
作品について「悪人が主役でありながら、相手側の悲劇も十分書けている作品はあまりない。(『霊験亀山鉾』は)そういう点が面白い」と評し、「演じる2役は、両方好きですね。私はどんな役でも演じると好きになってしまうんです(笑)。水右衛門は冷たいところが演じていて楽しい。どんな局面も冷静ですが、『桜姫東文章』の権助と同じで、最初の場と最後の場では人が違う」と語る。
2役の早替りについては「間に相手方の物語も挟みますし、ほかの早替りがある役と比べたら楽。権助だと化粧も全部落とさないといけませんが、(水右衛門と八郎兵衛は)走る距離も短いですし、着せかえ人形のようですから(笑)」と笑顔を見せる。さらに「冬場ですので、皆様のおかえりができるだけ遅くならないように(笑)、舞台の転換をいかに速くできるか研究し、前回より尺をカットします。物語の筋が通れば良い、というものではないので、兼ね合いは難しいですね。みんなで話し合いながら進めていければ」と明かした。
仁左衛門は「義経千本桜 渡海屋 大物浦」の知盛のほか、「女殺油地獄」の与兵衛、「絵本合法衢」の左枝大学之助と立場の太平次を“一世一代”として演じ納めてきた。役を演じていて“達成感”を感じることがあるかとの記者からの問いに「やり遂げた満足感、というのはなかなか無いですね。いつも、ある部分では満足して、ある部分では満足できない。もし達成感を得ることができたら、きっと最後の舞台を終えてすっきりできるんでしょうけど……因果なお仕事ですよね(笑)」と述べた。公演は2月2日から25日まで、東京・歌舞伎座にて。
歌舞伎座新開場十周年「二月大歌舞伎」
2023年2月2日(木)~25日(土)
東京都 歌舞伎座
第一部
「三人吉三巴白浪」
作:河竹黙阿弥
出演
<序幕>
和尚吉三:尾上松緑
お嬢吉三:中村七之助
おとせ:中村壱太郎
お坊吉三:片岡愛之助
<二幕目・大詰>
和尚吉三:尾上松緑
お嬢吉三:中村七之助
手代十三郎:坂東巳之助
おとせ:中村壱太郎
捕手頭長沼六郎:市村橘太郎
八百屋久兵衛:嵐橘三郎
堂守源次坊:坂東亀蔵
お坊吉三:片岡愛之助
第二部
一、「女車引」
出演
千代:中村魁春
八重:中村七之助
春:中村雀右衛門
二、五世中村富十郎十三回忌追善狂言「新歌舞伎十八番の内『船弁慶』」
作:河竹黙阿弥
出演
静御前 / 平知盛の霊:中村鷹之資
源義経:中村扇雀
亀井六郎:中村松江
片岡八郎:中村亀鶴
伊勢三郎:澤村宗之助
駿河次郎:中村吉之丞
舟子浪蔵:尾上左近
舟子岩作:中村種之助
舟長三保太夫:尾上松緑
武蔵坊弁慶:中村又五郎
第三部
通し狂言「霊験亀山鉾 亀山の仇討」
作:四世鶴屋南北
出演
藤田水右衛門 / 隠亡の八郎兵衛:
芸者おつま:中村雀右衛門
石井源之丞 / 石井下部袖介:中村芝翫
源之丞女房お松:片岡孝太郎
石井兵介:坂東亀蔵
若党轟金六:中村歌昇
大岸主税:片岡千之助
石井源次郎:中村種太郎
石井家乳母おなみ:中村歌女之丞
縮商人才兵衛:片岡松之助
丹波屋おりき:上村吉弥
藤田卜庵:松本錦吾
仏作介:片岡市蔵
大岸頼母 / 掛塚官兵衛:中村鴈治郎
貞林尼:中村東蔵
関連記事
ryugo hayano @hayano
【会見レポート】片岡仁左衛門「霊験亀山鉾」を“一世一代”で勤める「映像ではなく生を観ていただきたい」 https://t.co/a4Co0XVrcO