「笑の大学」制約があるとうれしい三谷幸喜、“逆手に取る”創作を語る

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笑の大学」で作・演出を務める三谷幸喜の取材会が、11月末にオンラインで行われた。

三谷幸喜

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PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「笑の大学」チラシビジュアル

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笑の大学」は、1996年にパルコ・プロデュース公演として初演され、第2回読売演劇大賞最優秀作品賞を受賞した、三谷の作劇による二人芝居。劇中では警視庁の取調室を舞台に、警視庁検閲係の向坂(内野聖陽)と、浅草の劇団・笑の大学の座付き作家である椿(瀬戸康史)が相対するさまが描かれる。戦時色が濃厚な昭和15年、非常時に喜劇など断じて許さないとする向坂は、上演中止に追い込もうと椿に無理難題を要求する。しかし椿はそれらの要求を逆手に取り、あくまで真正面から作品を書き直し続け……。

今回初めて本作の演出も手がける三谷は、本作が「とても特別な作品」だと言う。三谷は本作が「テレビドラマの脚本を書き始めた頃の、僕とプロデューサーのせめぎ合いがもとになっている。だからこの作品の世界観は、自分に置き換えて考えやすいもの」と明かし、「もとが自分の話ですし、僕はこの作品の演出に向いているのでは」と冗談交じりに述べた。

三谷は「大事な作品なので、託せる俳優さんが2人そろわなければやりたくないと思っていた」と率直に語る。向坂役の内野は三谷脚本による大河ドラマ「真田丸」で徳川家康を演じた。これを振り返って三谷は「僕は脚本を書いただけで、演技については何もオーダーしていません。でも『真田丸』で内野さんは、僕がやってほしいことを100%具現化してくれて驚きました。以来、僕が最も信頼する俳優さんの1人です」と口にする。

椿役の瀬戸は、「23階の笑い」「日本の歴史」で三谷とタッグを組んだほか、三谷脚本の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも出演。瀬戸について三谷は「『23階の笑い』で、瀬戸さんの笑いへの貪欲さに驚きました。彼はきちんと計算して観客を笑わせようとしているし、そのことを隠さない。椿は劇作家ですが、コメディアンのにおいもする人物。瀬戸さんに合うと思ったし、演じてほしいなと思いました」と厚い信頼を寄せた。

三谷は登場人物について「椿は僕の『こういう脚本家でありたい』という理想に近い人物」「椿が僕自身だとして、向坂は僕に立ちはだかる“制約”を人間に置き換えた存在」と明かす。さらに三谷は「制約とは僕にとって、たこ揚げの“たこ糸”のようなもの。制約があるとうれしくなる(笑)。今はコロナ禍の影響で脚本を変更することがありますが、そういう状況でも『逆手に取ってもっと面白くしよう』と思うんです。そうやって知恵を絞るのが、僕には向いているのだと思います」と創作と制約に対する思いを語った。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「笑の大学」ポスタービジュアル

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また椿は、喜劇作家・菊谷栄がモデルとなっている。三谷は戦前の浅草を舞台にしたある舞台を観たことで、「自分だったらこの時代をどう描くだろう?」と考え「笑の大学」を生み出したという。菊谷の作品「最後の伝令」を読んだ感想を、三谷は「菊谷さんは当時の、“今”の人を笑わせようとこれを書いたのだと感じた」と話し、続けて「僕も今を生きる人のために脚本を書いています。もっと言えば、今日この劇場に来たお客さんを笑わせるために仕事をしていて、『何十年後のために残そう』とは思っていない。僕自身もあくまで、“今”の人に向かい合って作品を作っているのだと気付きました。だから菊谷さんは、僕が物語を書くうえでとても大切な指針を見つけさせてくれた方です」と感慨深げな表情を浮かべた。

さらに取材会では、三谷がPARCO劇場への思いを明かす場面も。三谷はPARCO劇場(当時は西武劇場)で観劇した「おかしな二人」をきっかけに演劇の面白さを知ったというエピソードを挙げ、「僕はまだまだこの劇場に恩返しをしきれていない。新しくなったPARCO劇場の代表作、そして新しい僕の代表作と呼べるものをまた作らなくてはいけないなと感じています」と言葉に力を込めた。

笑の大学」のPARCO劇場公演は2月8日から3月5日まで。本作はその後、11日から4月21日にかけて新潟・長野・大阪・福岡・宮城・兵庫・沖縄を巡演する。

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PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「笑の大学」

2023年2月8日(水)~3月5日(日)
東京都 PARCO劇場

2023年3月11日(土)・12日(日)
新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場

2023年3月18日(土)・19日(日)
長野県 まつもと市民芸術館 主ホール

2023年3月23日(木)~26日(日)
大阪府 サンケイホールブリーゼ

2023年3月30日(木)~4月2日(日)
福岡県 キャナルシティ劇場

2023年4月6日(木)~9日(日)
宮城県 電力ホール

2023年4月13日(木)~16日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

2023年4月20日(木)・21日(金)
沖縄県 那覇文化芸術劇場なはーと

作・演出:三谷幸喜
出演:内野聖陽、瀬戸康史

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れいなじる @reinajiru

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