平原慎太郎が手がけるオペラ「浜辺のアインシュタイン」は「全然違うものになる」

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本日7月15日に神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ Vol.1 フィリップ・グラス / ロバート・ウィルソン「浜辺のアインシュタイン」記者発表が行われ、演出・振付の平原慎太郎、指揮のキハラ良尚が登壇。神奈川県民ホール・音楽堂 芸術参与の沼野雄司がオンラインで参加した。

左から平原慎太郎、キハラ良尚。

左から平原慎太郎、キハラ良尚。

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「浜辺のアインシュタイン」は一定の短かい音型を反復する“ミニマルミュージック”の旗手として知られるフィリップ・グラスの音楽で、1976年に初演されたオペラ作品。日本初演は1992年で、今回は30年ぶりに、国内初の新制作で上演される。本作は科学者アインシュタインをモチーフに、彼を詩的に解釈しようと立ち上げられたもので、セリフはあるが物語はなく、歌詞は数字とドレミのみで構成された前衛的なオペラ作品だ。平原による上演版には俳優の松雪泰子と田中要次、バレエダンサーの中村祥子、バイオリニストの辻彩奈のほか、多彩な顔ぶれがそろう。

オンラインで参加した沼野雄司。

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記者発表ではまず沼野が、2025年に神奈川・神奈川県民ホールが開館50周年を迎えることに企画の発端があると明かし、「そこに向けて何か新しいもの、大作や名作を良いキャストで上演するだけでなく、舞台を使った刺激的なことができないか」とスタートしたという。「この作品は21世紀に入ってさまざまな形で上演されてきているので、許されるのであれば、日本人の手によって新制作でやりたい。この作品を大事に感じている方がたくさんいらっしゃると思うので、厳しくも温かく見守っていただければ」と投げかけた。

平原慎太郎

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一方、「音楽と身体が拮抗している舞台をお願いしたい、とオファーをいただいた」と言う平原は、初演では上演時間が4時間近くあったこと、リピテーションによってある種のトランス状態を作り出すような作風であることなどが“枠”として捉えられていると話し、「時代背景やアメリカがいかにして自分たちの文化を獲得していったかということを勉強すればするほど、(この作品は)今の日本に合っているんじゃないかと思いました。初演当時もベトナム戦争や女性の権利への動きがあったり、まさに混沌とした時代。秩序が塗り替えられていくときに行われることは、リピテーションのようにも感じます。今の時代の日本の状況に合った、我々のチームでしかできないもの、希望のある作品を作りたいです」と述べる。

キハラ良尚

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また、指揮者のキハラは本作を通常のオペラ作品とは異なる点が面白いとし、「台本や場面の詳細など、細かいことが何も書かれていないので、制作側に委ねられている部分があります。自由度が高い中で何を伝え、作っていくかがとても難しい。聴衆の皆さんにも想像する自由が多い作品なので、その幅が広がるような表現、舞台作品をお届けできたら」と期待を込める。さらに楽器編成の珍しさについても言及し、「合唱にも役割が与えられておらず、オーケストラの一部として、アンサンブルの響きの中で効果的に扱われています。確かにリピテーションは多いのですが、ただの繰り返しではなく、音が洪水のように次から次へとやってきて、包んでいくようなものになるのではないかと思います」と語った。

今回の上演版は、“一部の繰り返しを省略したオリジナルバージョン”で送られる。これはコロナ禍の情勢に鑑み、作品をできる限り損なわない形で休憩時間を入れたことによるもの。過去にグラスが制作した短縮版が踏襲されるという。

演出について平原は「今、パフォーマンス界では、何かを決めない、お客さんとの間にヒエラルキーを設けない状態が主流となっていますが、個人的には技術を信じたい気持ちや、時間による積み重ねが織りなす何かがあると思っています。アメリカンモダンの精神をひもときながら、ダンサーとしての技術を音楽に寄り添わせるようなものを考えています」と明かした。また、記者発表中に公開された公演トレイラーについて問われると「戦線布告ではないですが(笑)、(これまでとは)全然違うものになると思います」と自信をのぞかせた。

左から平原慎太郎、キハラ良尚。

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また、本公演のチラシのイラストは、平原のオファーで大友克洋が手がけた。大友は「『浜辺のアインシュタイン』というタイトルからイメージが湧いたので、たまには海の絵を描こうと思った。久しぶりに絵を描いたので大変だった」と簡潔なコメントを寄せた。

神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ Vol.1 フィリップ・グラス / ロバート・ウィルソン「浜辺のアインシュタイン」チラシ表

神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ Vol.1 フィリップ・グラス / ロバート・ウィルソン「浜辺のアインシュタイン」チラシ表[拡大]

公演は10月8・9日に神奈川県民ホール 大ホールで行われる。なお、記者発表に際して寄せられた出演者のコメントは以下の通り。

松雪泰子コメント

この度、アバンギャルド演劇の金字塔「浜辺のアインシュタイン」に出演する事となりました。

演出の平原さんと共に、創作に挑みます。

今はまだ、無です。今はまだそれで良いと感じています。無であるという事は、無限の可能性を秘めています。今回私はメッセンジャーという役割を頂きました。「愛 正義 メッセンジャー」がキーワード。言葉を使い音で表現していきたいと思います。フィリップ・グラスの圧倒的な音楽と舞台芸術、身体、言葉。新たな創作の一員として、奇跡的な体験に挑みたいと思います。

田中要次コメント

舞台ですら経験の少ない私に何故オペラ? 何かの間違いかと思い、一度はお断りしようと思ったほどでした。ところが、2014年のパリ公演の記録動画を観て、気持ちは変わりました。普通の演劇やオペラとは違う、この斬新で刺激的な空間の中に立てるのなら挑んでみたいと思えたのです。

これは例えて言うならテクノオペラ。音楽と動作と言葉の繰り返しの中にある不可思議な世界にトランス出来れば4時間はちっとも長くない。それも本番がたったの2回だけだなんて! 想像しただけで鼻息が荒くなってます。今回を逃したら、次はまた30年後になる可能性が、あるよっ!

中村祥子コメント

今回、オペラということに未知数を感じながらも、自分とは異なる分野のプロフェッショナルな方々と共演させていただくことで、今までとは違った舞台上の世界観が見えてくるだろうし、その中で自分の踊りや表現もきっと新しいものになるのではないかと、とても楽しみにしております。

そして、平原さんが創るその世界観に加わることができるということは、本当に貴重であり、とても大きな挑戦であると、私自身感じております。

新たな空間で表現をより深め、この素晴らしい作品を皆様に伝えられるよう精一杯努めたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

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神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ Vol.1 フィリップ・グラス / ロバート・ウィルソン「浜辺のアインシュタイン」

2022年10月8日(土)・9日(日)
神奈川県 神奈川県民ホール 大ホール

音楽:フィリップ・グラス
台詞:クリストファー・ノウレス、サミュエル・ジョンソン、ルシンダ・チャイルズ
翻訳:鴻巣友季子
演出・振付:平原慎太郎
指揮:キハラ良尚

出演:松雪泰子、田中要次、中村祥子、辻彩奈(バイオリン)/ Rion Watley、青柳潤、池上たっくん、市場俊生、大西彩瑛、大森弥子、倉元奎哉、小松睦、佐藤琢哉、杉森仁胡、鈴木夢生、シュミッツ茂仁香、城俊彦、東海林靖志、高岡沙綾、高橋真帆、田中真夏、鳥羽絢美、浜田純平、林田海里、町田妙子、村井玲美、山本悠貴、渡辺はるか

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