「信康」出演の市川染五郎「祖父・松本白鸚のように“魂を削る”表現を」

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「六月大歌舞伎」第2部「信康」に出演する市川染五郎の取材会が、本日5月19日に東京都内で行われた。

市川染五郎

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市川染五郎

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「信康」は、徳川家康の長男・徳川信康を題材に田中喜三が作を手がけ、1974年に初演された作品。約26年ぶりに上演される今回は、齋藤雅文が演出を担い、染五郎が信康、染五郎の祖父・松本白鸚が家康を勤める。染五郎は上演の経緯を「祖父と一緒にできる作品を、ということで、候補となったいくつかの作品の中に『信康』がありました。作品自体は知りませんでしたが、タイトルから『どんな作品なんだろう』と興味を持ち、また祖父も『これがいいんじゃないか』ということで決まりました」と明かす。さらに「ここまでガッツリとセリフ劇をやるのは久しぶりですし、歌舞伎座で主演を務めさせていただくのは初めて。大きな挑戦になります」と言葉に力を込める。

市川染五郎扮する徳川信康。(撮影:永石勝)

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齋藤とは、すでに1対1の稽古を二度重ねた。「齋藤さんは物静かでいらっしゃいますが、作品や舞台に対して熱い方で、お話しやすい。セリフの1つひとつの間や、言い方、トーンや大きさなど、細かく分析して教えてくださいます。映画『反逆児』といった信康を題材にした作品とも、またこれまでの上演版とも違う新しい『信康』を作ろうと、一緒に取り組んでいます」とほほ笑む。また「齋藤さんからは、俳優として学ぶことも多くあります。(齋藤が)『劇場は遊園地みたいなもの』とおっしゃっていたのが印象的で。舞台には、行かないと体験できない、得られない感動がある。その感動は、役者が作らないといけないんですね」と語る。

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「信康」では、その優秀さから織田信長に警戒された、信康の悲劇が展開する。信長から信康を始末するよう指示された家康は、我が子を守ろうとするが、信康は家のため、自らの命を差し出すことを決意。染五郎は「1場の前半では、信康の、理知的で落ち着いてはいるけれど明るく若々しいところをしっかり見せて、そのあとの悲劇とのギャップで魅せたい」と意気込みを述べる。また、信康に共感する部分を記者から問われると、「信康は、若くして『何が正しくて、何が正しくないのか』ということをしっかりとわかっていた人。彼の、周囲のやり方が理解できなかったり、不満を抱えたりするところは、現代なら誰もが共感する部分かと思います。僕と違うのは、(信康の)頭が良いところですね(笑)」と回答し、笑いを誘った。

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また、染五郎が源義高役を演じた、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に触れ、「義高も信康も、若くして悲劇的な運命をたどる、という点が似ているので、義高を演じた経験は信康にも生きるかと」と述べる。「今回僕は、21歳で命を散らした信康と、比較的近い年齢で演じることになります。齋藤さんの手で、より登場人物たちの感情がストレートに伝わり、現代の方にもわかりやすい作品になったかと思いますので、十代、二十代の若い世代のお客様にもご来場いただき、自分たちと同年代の信康が、これだけの覚悟を持って生きていたことを観ていただきたい」と来場を呼びかけた。

なお白鸚とは、まだ本作について話していないといい、「一緒に作っていくのは、稽古場に入ってからですね。どこまでが本気かはわからないのですが、祖父からは『自分のことで精一杯だから、あまり頼らないでくれ』と言われました(笑)」と話し、会場を笑いで包む。取材会の最後には、白鸚から染五郎へのメッセージが読まれた。「平成19年、初お目見得で手を引いて舞台に出てから15年 夢の様です。信康はむつかしい役で勉強になると思います。一日一日魂を込めて勤めてほしく思います」との白鸚からの言葉に、染五郎は深くうなずきながら、「祖父は、舞台でも映像でも、魂を削るような表現をしていて、そこを尊敬しています。僕も祖父と同じ舞台で、同じく“魂を削る”表現ができるよう、信康を作っていきたい」と気合十分な様子を見せた。

「六月大歌舞伎」は、東京・歌舞伎座で6月2日から27日まで。

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「六月大歌舞伎」

2022年6月2日(木)~27日(月)
東京都 歌舞伎座

第1部

一、「菅原伝授手習鑑 車引」

出演
梅王丸:坂東巳之助
桜丸:中村壱太郎
杉王丸:市川男寅
藤原時平:市川猿之助
松王丸:尾上松緑

二、澤瀉十種の内「猪八戒」

作:岡鬼太郎
補綴:市川猿翁

出演
童女一秤金実は猪八戒:市川猿之助
孫悟空:尾上右近
沙悟浄:市川青虎
村長張寿函:市川寿猿
女妖緑少娥:市川笑三郎
女妖紅少娥:市川笑也
霊感大王実は通天河の妖魔:市川猿弥

第2部

一、「信康 岡崎城本丸書院の場、二俣城外の丘の場、二俣城本丸広間の場」

作:田中喜三
演出:齋藤雅文

出演
徳川信康:市川染五郎
松平康忠:中村鴈治郎
平岩親吉:中村錦之助
本多重次:市川高麗蔵
大久保忠佐:坂東亀蔵
大久保忠泰:大谷廣太郎
御台徳姫:中村莟玉
鵜殿又九郎:中村歌之助
奥平信昌:嵐橘三郎
大久保忠教:澤村宗之助
酒井忠次:松本錦吾
天方山城守:大谷桂三
大久保忠世:大谷友右衛門
築山御前:中村魁春
徳川家康:松本白鸚

二、「勢獅子」

出演
鳶頭:中村梅玉
鳶頭:尾上松緑
鳶の者:坂東亀蔵
鳶の者:中村種之助
鳶の者:中村鷹之資
鳶の者:尾上左近
手古舞:中村莟玉
芸者:中村扇雀
芸者:中村雀右衛門

第3部

「ふるあめりかに袖はぬらさじ」

作:有吉佐和子

出演
芸者お園:坂東玉三郎
通辞藤吉:中村福之助
遊女亀遊:河合雪之丞
岩亀楼主人:中村鴈治郎

※澤瀉の「瀉」のつくりは、わかんむりが正式表記。
※第3部は片岡仁左衛門の休演により、演目が変更になりました。

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