Kバレエカンパニー「カルメン」は、同カンパニーが2014年に世界初演した作品。同作ではプロスペル・メリメの小説「カルメン」をもとにしたジョルジュ・ビゼーのオペラを、
リハーサルではまず「カルメン」2幕2場が、日高・石橋ペア、成田・山本ペア、小林・堀内ペアによって披露された。この場面では嫉妬に狂ったホセが、何を言っても取り合ってくれないカルメンを激情のまま拳銃で撃ち殺してしまう様が描かれる。日高と石橋はカルメンとホセの対峙を緊迫感たっぷりに踊りで表現し、成田と山本は、冷たいカルメンと彼女を引き留めるホセの温度差を表情で巧みに具現化する。また小林はどこか余裕のあるカルメン像を立ち上げ、堀内はそんなカルメンに対して暴力性をあらわにしながらも、彼女のなきがらを抱き上げる姿に深い悲しみを漂わせた。
さらにリハーサル後半では、今回約4年ぶりに舞台出演を果たす浅川により「ハバネラ」のシーンが披露された。オペラ「カルメン」の「ハバネラ」は、ホセを惑わすカルメンが歌うアリアだ。浅川演じるカルメンは、大勢の男性に囲まれながら、蠱惑的な表情でしなやかに踊る。楽曲が盛り上がるパートで男性ダンサーが一斉にジャンプすると、浅川は頬杖を突いて笑みを浮かべながらその様子を見守り、カルメンの奔放さや人を狂わせる魔性をのぞかせた。
リハーサル後の質疑応答には、ダンサーたちに加えて熊川が参加。熊川は本作を“演劇バレエ”として捉えていると言い、「舞踊劇としてのバレエはクラシックなものともまた違うなと」と考えを述べる。熊川は出演者に「みんな良い演者」と信頼を寄せ、「(登場人物の心情や所作を)教えてしまうと彼らのアイデンティティがなくなってしまうので、ダンサーには自分なりの見せ方で踊ってもらいたい。僕が最後にホセを踊ったときはカルメン役のダンサーが若手でしたから、(実年齢を反映して)『おちょくるな!』という怒りでカルメンを殺めていました。ダンサーの成長や変化も踊りに映し出されるのでは」とコメントした。
その後は熊川の進行で、ダンサーがそれぞれの役の心情について自分なりの考えを語る。ホセを真面目な一途なキャラクターとして捉えているという石橋は「ホセは強い怒りを持っていて、初めからカルメンを殺めようと決めていたと考えています。怒りと『なぜカルメンに思いが伝わらないんだ』という悲しみがある」とコメント。堀内は「真面目な青年が『全部彼女のために捨てたのに逆に捨てられてしまう』と傷付き、愛が伝わらないことに混乱したのだと思います」と分析し、高橋は「ダークでカオスな思考に陥った結果、殺めてしまうのだと考えました」と回答した。
カルメン役の日高は本作がオペラをもとにしていることに触れながら、「カルメンのベースには自由奔放さがある。それを理解したうえで、歌うように踊りたい」、小林は「自由に恋をしながら周りを巻き込み、翻弄できれば」とそれぞれ意気込む。さらに成田は「カルメンからホセへの情はあまりなさそう。今風に言うと“ワンナイトラブ”の相手なのにしつこいので、『うざったい』と思っているんじゃないかな」と率直に意見を述べ、笑いを誘った。
浅川は「私はKバレエの『カルメン』が大好き。2014年の初演以来、8年ぶりにカルメンを踊れてとても光栄です」と喜びをかみ締める。また、「オペラ『カルメン』に出てくる『私に惚れるのは自由だけど、お気を付けなさい』という歌詞が印象的なので、そのイメージで踊っています。どんなカルメンになるかは、ぜひ劇場で確かめていただければ」とメッセージを送った。
熊川哲也 Kバレエカンパニー SPRING 2022「カルメン」
2022年6月1日(水)~5日(日)
東京都 Bunkamura オーチャードホール
芸術監督:
音楽:ジョルジュ・ビゼー
キャスト
カルメン:
ドン・ホセ:
エスカミーリョ:堀内將平、杉野慧、栗山廉
ミカエラ:飯島望未、岩井優花、山田夏生、吉田早織
ほか
※日高世菜、高橋裕哉の「高」ははしご高が正式表記。
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