東京・世田谷パブリックシアターが、2022年度の主催事業ラインナップを発表。これに際し、本日4月19日にラインナップ発表記者会見が行われた。
演劇作品には、2020年に公演中止となった
また夏に開催される「せたがやこどもプロジェクト 2022」には、
会見には今年4月1日に世田谷パブリックシアター芸術監督に就任した
世田谷パブリックシアターは1997年に、初代芸術監督の佐藤信が掲げた“劇場は広場だ”という理念と共に開場した。白井はそのスローガンから「大きな勇気を得てきた」と言い、「人が集まることが難しい状況で、劇場が広場であるためにどうすれば良いか考えたい」「街に病院や鉄道、警察、水道があるように、人々が集まって心を癒やす劇場は、公共財としてなくてはならない」と思いを述べる。さらに白井は「世田谷パブリックシアターの空間には、たくさんのアーティストの魂があふれている。その精神を引き継いで活動できれば」と意気込んだ。
また世田谷パブリックシアターでは、演劇やダンス公演以外にも子供たちや区民を対象としたワークショップ、世田谷区立の小中学校に出向いて行われるワークショップ、高齢者や障害者など、劇場に足を運ぶことが難しい人々のための移動劇場「あっとホーム公演」、大学生を対象としたインターンや舞台技術講座など、さまざまな学芸事業も行っている。白井はこれに触れて、「これほど学芸事業に力を入れている公共劇場はなかなかない。自分もあと押ししたいですし、公演事業と学芸事業がクロスするような事業を今後何かやれないか?という夢も抱いています」と、意欲を見せた。
続いて登壇者が、それぞれの作品について語った。5月11日に開幕する「お勢、断行」では、江戸川乱歩の短編の登場人物をもとにしたオリジナルストーリーが展開。倉持は「本来上演されるはずだった2年前より、善悪を巡るテーマがより鮮烈に観客の目に映るのでは」と話し、「2年間、待ちに待った初日の幕が開くのが楽しみ」と述べた。
倉科は「2年前の公演中止は悔しかったです。あの頃『2年後に上演しましょう』と言ってくださった世田谷パブリックシアターさんの心意気と、ご尽力くださった皆さんへの感謝でいっぱいです」と上演の喜びをかみ締める。今回初参加となる福本は、倉持の作品への出演や、世田谷パブリックシアターの舞台に立つことを夢見ていたと明かし、「若い世代の方々にも劇場に足を運んでもらえたらうれしい」と目を輝かせた。
7・8月に行われる夏の劇場・りんかん学校は、今回新たにスタートする企画。白井は自身の子供時代に、電気技師の父を手伝って舞台の仕込みに参加した思い出を振り返りながら、「バックステージのワクワク感が、僕を今ここにいさせているのではないかと。あのワクワクを感じた子供たちの中から、僕のような人が出てくるかも」と笑顔を見せ、「“臨感”学校という当て字を考えました。子供たちが劇場を感じられる企画になれば」とコメントした。
またシアタートラムでは、二人芝居シリーズとして「毛皮のヴィーナス」「建築家とアッシリア皇帝」が上演される。8月の「毛皮のヴィーナス」で演出を手がける五戸は「客席の時間と舞台の時間が同時進行する、ライブ感がある作品。演出家、女優の“あるある”エピソードに共感できる」と同作の魅力を分析し、「高岡さん、溝端さんのいろいろな面を引き出せれば」「知的でスリリングな作品。人の心を活性化するような舞台にしたい」と期待を寄せた。
11月の「建築家とアッシリア皇帝」を演出する生田は、キャストの岡本と成河について「岡本さんは少年のような好奇心と挑戦心、演劇を楽しむ心をお持ちです。また成河さんは作品のディテールをすべて理解し、何でも受け止めてご自分もジャンプする方。私がやることは、お2人が遊べる場を準備することかなと」と話し、「お客様を誘導しすぎず、ただ物語を提示することで、さらに面白い舞台になるのでは」と語った。
9月の「住所まちがい」は、ルイージ・ルナーリの代表作。演出の白井は、2002年にルナーリ作の二人芝居「パードレ・ノーストロ-我らが父よ」に出演したことを挙げ、「当時来日したルナーリさんに『僕の作品をいつか演出してくれ』と言われました」というエピソードを披露し、20年越しにルナーリ作品に挑戦することへの期待をのぞかせた。
10月の「夏の砂の上」からは、作者の松田と演出の栗山からコメントが寄せられ、白井が代読した。1998年に同作を執筆した松田は、執筆にあたって夏の長崎を歩き回ったと言い、「石段に身体がへばりつく感覚でセリフを書いた覚えがあります」「私は、『日常』の劇から『生と死』に直面する劇へと変容するような戯曲を書きたかったのかもしれません。それでも、おそらくは『作者の思い』などこえて上演されるのが演劇の面白さでしょう。上演を拝見するのがとても楽しみです」と語る。栗山は「この『夏の砂の上』の風景の中を流れるジリジリとした熱い感情と、しかし静かに刻む時間の一刻一刻に身を任せ、この荒涼とした現在から、そこにその時生活していた人たちを見つめてみたい」と思いを述べた。
12月に「凪げ、いきのこりら(仮)」を上演する安住の地の中村は、劇団の拠点が京都であることを説明して、「コロナ禍でこうした機会をいただけてうれしい」と喜ぶ。今作では岡本と私道が共同で脚本・演出を担当。私道は「脚本は交換日記のような形で書き進めます。稽古では2人並んで演出席に座るので、俳優は嫌かもしれません(笑)」と創作過程について述べ、岡本は作品の内容について「人間や獣人、妖怪などさまざまな種族の生き物が、生き残るため他者とコミュニケーションをとります。一見ファンタジーですが、生きる中で難しいと思っていることを、フィクションの力を借りて描いてみたい」と構想を口にした。
さらに来年3月の「ハムレット」からは、野村裕基のビデオメッセージが公開された。今年2月の「戯曲リーディング『ハムレット』より」で現代劇に初挑戦した野村裕基は「多くの俳優の皆さんと共に、父・野村萬斎のもとで舞台に立つのは大きな経験でした」と出演を振り返り、「『ハムレット』をさらにアップデートしてお目にかけたい」とコメントした。
世田谷パブリックシアター 2022年度ラインアップ
「世田谷パブリックシアター新芸術監督就任イベント ―公共劇場における芸術監督の役割を考える―」
2022年4月19日(火)
東京都 世田谷パブリックシアター
登壇:
進行:
「フリーステージ2022」
2022年4月29日(金・祝)~5月5日(木・祝)
ダンス部門
東京都 世田谷パブリックシアター
音楽部門
東京都 シアタートラム
「お勢、断行」
2022年5月11日(水)~24日(火)
東京都 世田谷パブリックシアター
原案:江戸川乱歩
作・演出:
音楽:斎藤ネコ
出演:
「せたがやこどもプロジェクト 2022」
「子どもとおとなのための◎読み聞かせ『お話の森』」
2022年7月30日(土)・31日(日)
東京都 シアタートラム
出演
7月30日:
7月31日:
「せたがや 夏いちらくご」
2022年7月30日(土)
東京都 世田谷パブリックシアター
出演:
夏の劇場・りんかん学校「流星スプーン」
2022年7月26日(火)~8月4日(木)
東京都 世田谷パブリックシアター ほか
演出:白井晃
「毛皮のヴィーナス」
2022年8・9月
東京都 シアタートラム
脚本:デヴィッド・アイヴス(原作:L・ザッヘル=マゾッホ作「毛皮を着たヴィーナス」)
翻訳:徐賀世子
演出:
出演:
りゅーとぴあ×世田谷パブリックシアター「住所まちがい」
2022年9月26日(月)~10月9日(日)
東京都 世田谷パブリックシアター
原作:ルイージ・ルナーリ
上演台本・演出:白井晃
出演:
世田谷アートタウン2022「三茶 de 大道芸」
2022年10月15日(土)・16日(日)
東京都 キャロットタワー周辺
世田谷アートタウン2022 関連企画 カンパニーXY with ラシッド・ウランダン「Mobius / メビウス」(日本初演)
2022年10月21日(金)~23日(日)
東京都 世田谷パブリックシアター
演出・振付・出演:カンパニーXY
振付・コラボレーションアーティスト:ラシッド・ウランダン
※「Mobius」のoはウムラウト付きが正式表記。
「夏の砂の上」
2022年11・12月
東京都 世田谷パブリックシアター
作:
演出:
出演:
「建築家とアッシリア皇帝」
2022年11・12月
東京都 シアタートラム
作:フェルナンド・アラバール
翻訳:田ノ口誠悟
演出:
出演:
シアタートラム ネクスト・ジェネレーション vol.14 安住の地 第8回本公演「凪げ、いきのこりら(仮)」
2022年12月
東京都 シアタートラム
脚本・演出:
ピーピング・トム「マザー」(日本初演)
2023年2月6日(月)~8日(水)
東京都 世田谷パブリックシアター
構成・演出:ガブリエラ・カリーソ
ドラマトゥルク・演出補佐:フランク・シャルティエ
「ハムレット」
2023年3月
東京都 世田谷パブリックシアター
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:
演出:
演出:野村萬斎、
「地域の物語2023」
2023年3月
東京都 シアタートラム
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