「天一坊大岡政談」尾上松緑、自身が演じる大岡越前守の墓参りに「身の引き締まる思い」

「四月大歌舞伎」第1部「通し狂言 天一坊大岡政談」に出演する尾上松緑が、昨日3月17日に神奈川県茅ヶ崎市にある浄見寺を墓参した。

「天一坊大岡政談」は、初代神田伯山による講談を元に、河竹黙阿弥が書き下ろした作品。“天一坊事件”という実際に起きた事件を題材にした本作では、将軍・吉宗の子に成り済ました主人公・天一坊と、その参謀役・山内伊賀亮、そして天一坊を詮議する名奉行・大岡越前守の物語が描かれる。「通し狂言 天一坊大岡政談」では、天一坊役を市川猿之助、山内伊賀亮役を片岡愛之助、大岡越前守役を松緑が演じる。

浄見寺は、大岡越前守の菩提寺。大岡越前守の墓前で手を合わせた松緑は「大岡様というと越前守の忠相を思い浮かべますが、本日、歴代の大岡家のお墓参りをさせていただいて、歴史と重みを感じました。自分が大岡越前守を勤めさせていただくことがあるとは思ってもおりませんでしたので、非常に身の引き締まる思いです。『あいつに大岡を任せてよかったな』と思ってもらえる大岡越前守を勤めたい」と意気込みを述べつつ、「今回、大岡忠相の息子・忠右衛門を私の息子である尾上左近が演じさせていただくので、『親子で勤めさせていただきます』というご挨拶ができました」と語る。

また、大岡越前守のイメージを「歌舞伎では、尾上菊五郎のお兄さん、（十二世）市川團十郎のおじ、中村梅玉のお兄さんなど尊敬する先輩方が演じられてきた重要な役。時代劇では加藤剛さんや北大路欣也さんの印象があり、私が生まれる前には『大岡政談 池田大助捕物帳』という時代劇で父が池田大助を、祖父が大岡越前守を勤めています」と言い、役について「師匠でもある菊五郎のお兄さんからは、『自分なりの大岡を作るように』と言っていただきました。私は演じる年齢が皆さんに比べて若いので、その分、颯爽と爽やかに勤めたいと思います。大岡越前守は曲がったところのない、理知的で、真っすぐな人物。久しぶりにど真ん中の正義を1カ月貫いて演じたい」と話した。

さらに猿之助、愛之助との共演に向けて「お二人とも気心の知れている仲なので、心配はありません。共演を楽しみに、3人で良い舞台を作っていければ。大岡越前守として、きっちりと猿之助さん、愛之助さんを裁きたいと思います！」とコメント。最後に「まだまだ大手を振って劇場にいらしてくださいとは言えない状況ですが、観に来てくださった方には、芝居をご覧になっている間はコロナのことや世界情勢のことなどを忘れていただけるよう、爽快な物語を猿之助さん、愛之助さんをはじめとした皆さんと作っていきたい」と気合い十分な様子を見せた。

「四月大歌舞伎」は東京・歌舞伎座にて4月2日から27日まで。