これはサファリ・P の新作公演。アルバニアの代表的な作家イスマイル・カダレの小説「砕かれた四月」を出発点とし、約2年間の準備を経て、
ある男が、人殺しを免除してもらおうと市役所に相談にやって来る。窓口の職員は冷淡に陳情をはねつけるが、実はこの職員も“掟”に翻弄されていて……。
開幕に際し山口は「この作品の上演を決めたときには、まさかそのタイミングで現実に殺し合いが起きてしまうとは想像もしていませんでした。このような状況の中で、自分もどこか、映画を観るように戦争の動画を検索してしまっているかもしれないと気付いて恐ろしく思います。でもそれはまさに、『透き間』の(また『砕かれた四月』の)テーマの一つでもあります。悲惨な出来事を物語として、物珍しい娯楽として消費してしまう人間の残酷さに向き合わねばならないと思っています」と述べ、「戦争は絶対に現実に起きるべきではなくて、もしもそういうものが見たいのならば舞台の上で行われるのを見ればいい。けれど現実にそれが起きてしまっているというときに、舞台は何を提示すべきなのだろう。舞台に来る人は何を見に来るのだろう。舞台を見に来る人は誰なのだろうということをずっと考えています」と思いを語っている。
京都公演は明日3月5日まで。そのあと、11日から13日まで東京・東京芸術劇場 シアターイーストでも上演される。
山口茜コメント
「透き間」はアルバニアの小説家イスマイル・カダレの「砕かれた四月」という作品を出発点にしています。古くから続く掟によって、仇討ちが義務付けられた場所で出会う男女の話です。このカヌンと呼ばれる掟は、フィクションではなくてバルカン半島に今も伝わっているものです。掟が定める復讐=殺し合いの連鎖をどうすれば止められるかという問いを核としつつ、傷痍軍人であった私の祖父や、コソボ紛争を経験した友人のことも考えながらこの作品を作りました。
子供の頃にシリアスな演劇をやったことでそれをネタにいじめられた経験から、ずっと、演劇が好きな自分をどこかでダサいと思って生きてきたように思います。本当は演劇にとても興味があるのに、それを正々堂々ということにてらいがあるような状態でずっとやってきました。けれど今回、死や死者というこの上なくシリアスなものをテーマにした作品を作る中で、どういうわけだか、ある時突如私の中で死者たちがユーモラスに踊りはじめたのです。シリアスの極みと思える死の中にユーモアが宿る。それに気づいたとき、これまでシリアスさや真面目さというものに感じていた疎ましさが消えて、それらを愛しく思えるようになりました。
この作品の上演を決めたときには、まさかそのタイミングで現実に殺し合いが起きてしまうとは想像もしていませんでした。このような状況の中で、自分もどこか、映画を観るように戦争の動画を検索してしまっているかもしれないと気付いて恐ろしく思います。でもそれはまさに、「透き間」の(また「砕かれた四月」の)テーマの一つでもあります。悲惨な出来事を物語として、物珍しい娯楽として消費してしまう人間の残酷さに向き合わねばならないと思っています。
戦争は絶対に現実に起きるべきではなくて、もしもそういうものが見たいのならば舞台の上で行われるのを見ればいい。けれど現実にそれが起きてしまっているというときに、舞台は何を提示すべきなのだろう。舞台に来る人は何を見に来るのだろう。舞台を見に来る人は誰なのだろうということをずっと考えています。
サファリ・P 第8回公演「透き間」
2022年3月4日(金)・5日(土)
京都府 京都府立文化芸術会館
2022年3月11日(金)~13日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト
上演台本・演出:
振付:足立七瀬
出演:高杉征司、芦谷康介、達矢、
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東京芸術劇場 @geigeki_info
2年間の準備を経て、サファリ・P新作「透き間」京都で幕開け!東京公演は、2022年3月11日(金)~13日(日) #東京芸術劇場 シアターイースト
上演台本・演出:山口茜
振付:足立七瀬
出演:高杉征司、芦谷康介、達矢、佐々木ヤス子、大柴拓磨 https://t.co/EELEUXIO5O