「渋谷・コクーン歌舞伎 第十八弾『天日坊(てんにちぼう)』」が、本日2月1日に東京・Bunkamura シアターコクーンで開幕。これに先駆け、昨日1月31日にゲネプロが行われた。
コクーン歌舞伎は、
本作では、鎌倉時代を舞台に、天下を狙う主人公・法策の旅路が描かれる。修験者である観音院の弟子・法策は、17年前に捨てられていたところを観音院に拾われた孤児。ある日、自分を孫のようにかわいがるお三婆の元に酒を届けに行った法策は、そこでお三婆の死んだ孫が源頼朝の落胤であることを知る。葛藤の末、法策は人生の逆転を図り、お三婆を殺してその孫に成り済ますことに。さまざまな悪事を重ねながら鎌倉に向かう道中、法策は盗賊の太郎とその妻・お六と出会う。とある秘密を抱えた太郎とお六は、法策の腕の痣からその出自を見抜き……。
物語はバンドによる生演奏と共につづられ、場面展開は人力で動かされる小屋を用いて、スピーディかつダイナミックに行われる。勘九郎は、物語の冒頭では観音院やお三婆らへの丁寧な応対で、法策の心優しさを際立たせるが、お三婆の告白をきっかけに悪事を思いついてしまうシーンでは、それまでの物腰柔かな青年像を一転。表情を消して声色にも薄気味悪さをにじませ、法策の心の闇を表現した。
七之助と獅童は、息のあったかけ合いで、願いを1つにする夫婦を演じる。七之助は、女中に扮し美人局を行うお六を、脚をチラリと見せる仕草でセクシーかつコミカルに表現。獅童は男らしく兄貴肌の太郎を、太い声と堂々とした佇まいで説得力を持って勤める。また虎之介と鶴松は、時貞と高窓太夫の若いカップルを、愛らしくはつらつと演じた。
開幕に際し、勘九郎は「法策という人物を一言で表すなら“無”。結局最後まで自分が誰なのかわからない。そうした精神的な複雑さに加えて、ずっと出ずっぱりなうえに衣裳も重い。もう毎回、ぐったりでした。今まで生きた中で一番疲れた役です。その法策としてまた生きる。もう一度“無”になってその場その場で感じることを大切に、一方で、ビジュアル部分もしっかりと見せていきたいと思います」とコメント。獅童は「前回ご覧くださった方の中には、コクーン史上最高傑作とおっしゃってくださる方もいらして、再演を望む声も多く本当にうれしかったです。その期待に応えられるよう、今回はさらに進化したものをお見せしたいと思います。江戸時代のアウトローのかっこよさを感じていただけたら」と述べる。
七之助は「初演はちょうどスカイツリーがオープンした年でエレベーターを降りたところに浮世絵が飾ってあったんです。マーメイドドレスのようなシルエットで髑髏柄の着物を着た女性の絵を見ると『人丸お六』と書いてあったんです。衣裳や小道具はそれを参考に作らせていただきました。前回は時間的に間に合わなかった部分もありましたので、今回はこだわっていきたいと思っています」と思いを語った。上演時間は休憩を含む約3時間10分で、公演は2月26日まで。
なおステージナタリーでは、「渋谷・コクーン歌舞伎 第十八弾『天日坊(てんにちぼう)』」の特集を展開中。串田と虎之介、鶴松が作品の魅力を語っている。「渋谷・コクーン歌舞伎 第十八弾『天日坊(てんにちぼう)』」
2022年2月1日(火)~26日(土)
東京都 Bunkamura シアターコクーン
原作:河竹黙阿弥「五十三次天日坊」
脚本:
演出・美術:
出演:
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