1月に京都・ロームシアター京都 ノースホールで、レパートリーの創造
レパートリーの創造は、ロームシアター京都が劇場のレパートリー演目として時代を超えて末永く上演されることを念頭に、2017年度から取り組んでいるプログラム。その第5弾として上演される「妖精の問題 デラックス」は、2016年に神奈川県相模原市で起きた障害者施設での事件をきっかけに、市原が創作した「妖精の問題」のリクリエーション作品となる。第1部「ブス」では、作品世界でマイノリティとされる“ブス”の女学生2人、第2部「ゴキブリ」では、家に生息するゴキブリに悩まされている貧困夫婦、第3部「マングルト」では、自分自身の体内常在菌を利用して作る食べ物“マングルト”についてのセミナーを巡る物語が展開する。
稽古は12月から京都で本格的にスタート。取材に訪れた12月中旬は、各部に分かれて稽古が進められていて、取材日はちょうど2部の稽古が行われていた。市原は演出席ではなく、稽古場の床に座って
スマホを片手に缶ビールを飲みながらテレビを見ている夫を、妻は気怠げな身体と虚ろな目で眺めている、というシーンを、セリフを用いず、動作で繰り広げる2人。やがて夫が部屋を出ていき、続けて部屋を出た妻は、突如思いの丈を歌にし、感情を爆発させる。髪を振り乱し、メロディに身を揺らし、微笑みながら熱唱する姿には、先ほどまでの気怠さがすっかり消え、色っぽくさえ見える。そんなキキの熱唱シーンが終わると、市原は「めっちゃミュージカル!」と笑顔を見せつつ、舞台美術の図面を広げて、俳優2人と演出助手の山田航大、そしてこの日稽古場を訪れていた衣裳担当のお寿司・南野詩恵を交えて、舞台のどこでどんな見せ方をすると良いか、話し合い始めた。
その話し合いを経て、先ほどは動作だけで表現しようとしていた夫婦の日常シーンに、録音した妻のモノローグを乗せてみることになった。すると、妻が現実に対して不満や諦めを持ちつつも、表面的には変わらぬ日常を過ごしている様がはっきりと浮かび上がり、妻が熱唱する心境も伝わってくるようになった。
やがて妻に続いて夫も、抑えていた感情を歌い始める。夫は、妻のようなドラマティックなメロディではなく、ラップのような、叫びに近いような歌声を披露した。曲が終わっても息が上がったままのキキと大石に、「思っていたイメージに近い!」と市原は声をかけつつ、再び図面を広げながら「今のシーン、例えばここで歌うとどう見えるかな?」と新たなプランを提案すると、キキは汗を拭きつつ「それ、めちゃくちゃ面白そうですね!」と賛同し、大石も大きくうなずいた。
翌日は第3部の稽古からスタート。第3部はセミナー形式のため、稽古場にプロジェクターが準備された。そしてキャストの
また市原は「このマングルトの会がどのような団体として(観客に)伝わるかが大事ですよね」と言い、カリスマ性と親しみやすさ、どちらでオーディエンスの心をつかむのが良いと思うか、俳優たちに問いかけた。俳優たちは「親しみやすさかな?」「そもそもこのセミナーに来ているお客さんってどんな人たちなんだろう?」とさまざまにイメージを膨らませ、作品を立体的に立ち上げていこうとしていた。
レパートリーの創造 市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」は1月21日から24日まで、ロームシアター京都 ノースホールにて。22日18:00開演回と、24日14:00開演回にはアフタートークが実施され、22日回には市原と本作のドラマトゥルクである木村覚、24日回には市原と音楽担当の
レパートリーの創造 市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」
2022年1月21日(金)~24日(月)
京都府 ロームシアター京都 ノースホール
作・演出:
音楽:
演奏:
出演
第1部:
第2部:
第3部:
関連記事
薙野信喜 @nonchan_hg
【稽古場レポート】市原佐都子「妖精の問題」京都で“デラックス化”に向け稽古中 https://t.co/rQWGMm0DbR