ミゲール・デ・セルバンテスの小説「ドン・キホーテ」を原作とした「ラ・マンチャの男」は、脚本をデール・ワッサーマン、音楽をミッチ・リーが手がけたミュージカル。1965年にアメリカの地方都市で上演されたのち、ブロードウェイに進出し、1969年に白鸚(当時は市川染五郎)主演で日本初演された。白鸚が喜寿を迎えた2019年には、日本初演50周年記念公演が実施され、総上演回数1307回に到達。そして2022年、半世紀以上におよぶ白鸚の“遍歴の旅”が終焉を迎える。
記者会見には白鸚をはじめ、アルドンザ役の
26歳の頃から50年以上にわたって主演を務めてきた白鸚は「人間として、俳優として幸せ者」と笑顔を浮かべ、2019年公演の際に「これで最後」と思ったものの、東宝からのオファーを受けてファイナル公演への出演を決めたと言う。白鸚は今回、かつて本作で共演した娘の松と再び同じ舞台に立つ。このことへの思いを尋ねられた白鸚は「初演のときに生まれてもいなかったたか子と共演できるとは」と目を細め、松のアルドンザ役デビューを「以前のアルドンザは姉御肌でしたが、たか子のアルドンザは野良猫のような、目ばかりギラギラ光っている下働きの娘というイメージで演出しました」と振り返る。続けて「たか子、お稽古に入ったら一生懸命に厳しくやっていきましょう。よろしくお願いします」と松に頭を下げ、報道陣を和ませた。
松がアルドンザ役を務めるのは、2012年以来およそ10年ぶり。出演に向け、松は「『やって良いのか?』と自分なりに考えましたが、いただいたチャンスと自分を使い果たして公演に臨めたら」と意気込む。松は子供の頃、本作に「とにかく怖い」という印象を抱いていたそうで、「舞台が暗く、汚れた服を着たヒゲもじゃの人がたくさんいて……そんな荒くれ男たちが、楽屋では優しくほほ笑みかけてくれるのもまた怖くて(笑)」と述懐しながら、「舞台は怖かったけどきれいだと感じる場面もあり、なぜか惹きつけられました。ミュージカルでこういう表現もできるんだ、ということをたくさん教えてもらった」と話す。
また、父である白鸚が半世紀以上にわたって同じ役を演じてきたことについて、松は「私のようにまだまだの人間からすれば、1つの役を演じ続けることは恐怖でしかない。いつかその役を演じられなくなるときが来るはずですし、『いつまでやるんだ』という声もあるはず。そんな中、強い気持ちを持って舞台に立ち続けていることには、尊敬しかありません」と言葉に力を込めた。
会見では、去る11月28日に死去した弟・中村吉右衛門への思いを白鸚が語る場面も。白鸚は「これまでは『見果てぬ夢』を菊田一夫先生や亡き父に歌ってきた。今回はレクイエムを歌う相手が増えてしまった」と思いを口にし、「いつまでも悲しみに浸っていてはいけない。これを乗り越え、皆様に向けて『見果てぬ夢』を歌いたいと思います」と観客に呼びかける。
ファイナル公演を終えたあとの“夢”を聞かれた白鸚は「もぬけの殻になるでしょうね」と笑い、「作品の主題と俳優・松本白鸚の生き方が一緒になっちゃったんですよ。自分自身もこの作品のテーマと同様に、あるべき姿のために戦う心を失わないようにとやってきた。傘寿が近付き、身体も動かなくなってきましたが、お客様にこのメッセージをお伝えできれば」と抱負を述べ、記者会見を締めくくった。
ミュージカル「ラ・マンチャの男」の公演は2月6日から28日まで東京・日生劇場で行われる。
ミュージカル「ラ・マンチャの男」
2022年2月6日(日)~28日(月)
東京都 日生劇場
脚本:デール・ワッサーマン
作詞:ジョオ・ダリオン
演出:
音楽:ミッチ・リー
キャスト
セルバンテス / ドン・キホーテ:松本白鸚
アルドンザ:
サンチョ:駒田一
アントニア:実咲凜音
神父:石鍋多加史
家政婦:荒井洸子
床屋:祖父江進
ペドロ:大塚雅夫
マリア:白木美貴子
カラスコ:吉原光夫
牢名主:上條恒彦
隊長:鈴木良一
ギター弾き:ICCOU
ムーア人の娘:酒井比那
フェルミナ:北川理恵
美濃良、山本真裕、市川裕之、山本直輝、さけもとあきら、斉藤義洋、宮川智之、下道純一、楢原じゅんや、乾直樹、中野祐幸、小林遼介、堀部佑介、砂塚健斗、ルーク・ヨウスケ・クロフォード、郡司瑞輝、森内翔大、尾関晃輔、岩永俊、鈴木満梨奈
※2022年2月8日追記:2月8日の公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
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のんちゃん @kamikilittledj
いよいよ再来月からですね♡
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