本日12月1日に東京・歌舞伎座で開幕する「十二月大歌舞伎」より、出演者の
勘九郎と菊之助は、第2部「ぢいさんばあさん」に出演。本作は森鴎外の短編小説を原作に、宇野信夫が作・演出を手がけた作品で、勘九郎は美濃部伊織役、菊之助はその妻・るん役を、いずれも初役で勤める。
菊之助は「(本作には)きく役でこれまで2回出させていただいたのですが、そのときは父(尾上菊五郎)がるんを勤めておりました。お互いのことを“思う”、“偲ぶ”、“慈しむ”という、なかなか今では感じづらくなっている日本人の大事にしなければいけない心というものが、この作品にはこもっていると感じておりました。勘九郎さんと2人でこの心を大切にしながら、先人たちが築き上げてきた心を大事にしながら勤めていきたいと思います」と意気込みを述べる。
勘九郎は、過去に宮重久右衛門役を演じたことがあると明かし、「そのときは、父(十八世中村勘三郎)が伊織、(坂東)玉三郎のおじさまがるんを演じておりました。久右衛門は最初の場面で出番が終わってしまうのですが、そのあとの2場面を毎日のように拝見して、演じていないのに毎日涙が出ていた記憶があります。すごくあったかい作品でもありますし、父や祖父のようにチャーミングで可愛らしい伊織や、夫婦像というのを菊之助さんとともにできればいいなと思っております」と目標を掲げた。
勘九郎と菊之助が夫婦役を演じるのは、2016年に「明治座 四月花形歌舞伎」で上演された「浮かれ心中」ぶりのこと。菊之助は「そのときも、いろいろとお話をさせていただきながら作り上げていった思い出もありますので、今回も2人で話し合いながら作り上げていければ」と語る。また勘九郎は「5年前もバカップルというか……イチャイチャが激しい夫婦を演じさせていただいて。今回の伊織とるんも、上品ではありますけれど(「浮かれ心中」に)負けず劣らずのおしどり夫婦。(菊之助は)本当に信頼しきっている方なので、(演じていて)とても楽しいです」と菊之助への信頼を垣間見せた。
最後に菊之助は、結婚して間もない夫婦が離れ離れになり、37年ぶりの再会では互いに姿かたちが“おじいさん”と“おばあさん”になっている、という今作のあらすじを紹介しつつ、「勘九郎さん演じる伊織との、日々の舞台上での化学反応を楽しみながら、37年という時間を噛み締め、日々勤めたいと思っております」と言葉に力を込める。勘九郎は「今、まだコロナ禍ということで大切な人、会いたい人に会えない時代で、とてもお客様の心に刺さる作品になっているなと思います。先人たちが築き上げてきた素晴らしい演出や、技というものを受け継ぎながら、今の私たちの心を入れて勤めたいと思っております。ほっこりできる作品ですので、ぜひ劇場へ足をお運びください」と観客にメッセージを送った。
「十二月大歌舞伎」は12月26日まで。
「十二月大歌舞伎」
2021年12月1日(水)~26日(日)
東京都 歌舞伎座
第1部
「三代猿之助四十八撰の内 新版 伊達の十役」
作:四世鶴屋南北
補綴・演出:奈河彰輔、石川耕士
演出:市川猿翁、市川猿之助
出演
乳母政岡 / 松ヶ枝節之助 / 仁木弾正 / 絹川与右衛門 / 足利頼兼 / 三浦屋女房 / 土手の道哲 / 高尾太夫の霊 / 腰元累 / 細川勝元:市川猿之助
八汐:坂東巳之助
侍女澄の江 / ねずみ:中村玉太郎
政岡一子千松:市川右近
妙林:市川弘太郎
渡辺外記左衛門:市川寿猿
松島:市川笑三郎
沖の井:市川笑也
妙珍:市川猿弥
渡辺民部之助:市川門之助
栄御前:市川中車
第2部
一、「男女道成寺」
出演
白拍子花子:
白拍子桜子実は狂言師左近:尾上右近
強力不動坊:市村橘太郎
強力普文坊:中村吉之丞
二、「ぢいさんばあさん」
原作:森鴎外
作・演出:宇野信夫
出演
美濃部伊織:中村勘九郎
下嶋甚右衛門:坂東彦三郎
宮重久右衛門:中村歌昇
宮重久弥:尾上右近
久弥妻きく:中村鶴松
山田恵助:中村吉之丞
柳原小兵衛:坂東亀蔵
伊織妻るん:
※鴎外の「鴎」は旧字体が正式表記。
第3部
一、「義経千本桜 吉野山」
出演
佐藤忠信実は源九郎狐:尾上松緑
静御前:中村七之助
二、「信濃路紅葉鬼揃」
出演
鬼女:坂東玉三郎
平維茂:中村七之助
鬼女:中村橋之助
鬼女:中村福之助
鬼女:中村歌之助
鬼女:尾上左近
鬼女:上村吉太朗
山神:尾上松緑
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よしぼう @bafkm
5年ぶりに“おしどり夫婦”演じる中村勘九郎&尾上菊之助「化学反応を楽しみながら」(コメントあり) https://t.co/VV8gX5b4FR