諦めを超えるのは“かすかな共感”ではないか?「東京芸術祭2021」開幕

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「東京芸術祭2021」が本日9月1日に開幕した。

宮城聰

宮城聰

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2016年にスタートした「東京芸術祭」は、豊島区池袋周辺エリアで開催される都市型総合芸術祭。今回の「東京芸術祭2021」では、上演や配信を行う「東京芸術祭プログラム」と、人材育成事業「東京芸術祭ファーム」の2本柱を設定。またこれまで「東京芸術祭」の一環として開催されてきた「フェスティバル/トーキョー」が「東京芸術祭プログラムFTレーベル」に生まれ変わる。

開幕に際し、東京芸術祭総合ディレクターの宮城聰は、「新型コロナのパンデミック、という全世界をほぼ同時に覆った危機、国々がその主義や体制の違いを超えて力を合わせる好機だったのですが、むしろ世界のブロック化(グループ間の対立)が進行したように見えます」と指摘。そのうえで「自分とは違う価値観を理解するのは至難です。でも、『理解しようとしない』という、あらかじめ諦(あきら)めているスタンスに陥ってしまうのは、今いちばん避けねばならないことだろうと思います。この諦めにハマることは人間というものの否定につながると思うからです。じゃあ、どうやってこの諦めを超えるのか?」と問いかけ、舞台芸術が他人の肉体を凝視するものであること、それによって「存在の許容」という“かすかな共感”が生まれることを挙げ、「この『かすかな共感』の道筋こそ、こんにちの世界では、もっとも堅実な希望ではないでしょうか?」とコメントしている。

「東京芸術祭2021」は11月30日まで、東京・豊島区各所にて行われる。

宮城聰コメント

東京芸術祭2021によせて

いまげんざいの世界を、どのように感じていらっしゃるでしょうか?

僕には……立場や価値観が異なる人々のあいだの溝が、いっそう深まっているように見えています。まことに残念ながら。

新型コロナのパンデミック、という全世界をほぼ同時に覆った危機、国々がその主義や体制の違いを超えて力を合わせる好機だったのですが、むしろ世界のブロック化(グループ間の対立)が進行したように見えます。

価値観を異(こと)にするもの同士はわかりあえるはずがない、という前提に立ってしまうと、結局なにかを解決できるのは「力」だけだ、という原始的な結論が浮上するからでしょう。

日本国内を見ても、「人々のブロック化」とでも言えるような、あるグループは他のグループを理解しようとはしない、という現象が進んでいるように感じられます。

もちろん、自分とは違う価値観を理解するのは至難です。でも、「理解しようとしない」という、あらかじめ諦(あきら)めているスタンスに陥ってしまうのは、今いちばん避けねばならないことだろうと思います。この諦めにハマることは人間というものの否定につながると思うからです。

じゃあ、どうやってこの諦めを超えるのか?

素朴な言い方ですが、「へえ、人間同士って、理解し合える瞬間があるんだなあ」という経験を味わうことができれば、それでいいはずですよね。

いやもちろん、すでにあちこちでそのような共感の場を作る努力はなされていると思います。ただ、ちょっと危なっかしいと感じることもあります。それは、(進行する分断への焦りゆえでしょうか、)いきなり「感情を共有する」という方法が最近目立っているように思えるためです。

感情を共有している、という実感は確かに一体感を確実に味わわせてくれるのですが、でもその時冷静さは引っこみがちです。

たとえば、現在の日本で多くの人が内心に抱いているのは、「自分は我慢している」という気持ちではないでしょうか。でももしもこの感情で一体感を感じてしまったら、そりゃあ、我慢していないように見える人を「ズルい」と指弾したくなるでしょう。

こういう時世こそ舞台芸術が頑張れるんじゃないかと僕が思うのは、「いきなり共感」みたいなことがそもそも舞台芸術には出来ないからです。舞台芸術とは、いまどき珍しくも、他人の肉体をまじまじと見つめる時間です。で、他人の体を凝視すれば、おのずと違和感が湧き上がってきます。何でこんなに違うんだ、と思い知らされて、でもそのうち(うまくいくと)ふと「その場にいる者がみな、ここにいていい、ここにいることを許されている」という「存在の許容」といった感覚が湧いてきます。それは、「自分はこういうことで感動する」と前から知っていることをズバリ見せられたときの感動、とはぜんぜん違う、もっとかすかなものです。

でもこの「かすかな共感」の道筋こそ、こんにちの世界では、もっとも堅実な希望ではないでしょうか?

ステージナタリーでは、「東京芸術祭2021」に参加するBaobabの北尾亘、KIKIKIKIKIKIのきたまり、CHAiroiPLINのスズキ拓朗の座談会を掲載している。

関連する特集・インタビュー

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「東京芸術祭2021」東京芸術祭プログラム ラインナップ

観劇サポート講座

2021年9月1日(水)、4日(土)
東京都 あうるすぽっと 3F 会議室B

講師:廣川麻子、美月めぐみ、鈴木橙輔

【シリーズ・持続可能な舞台芸術の環境をつくる】東京芸術祭2021 シンポジウム「ライブでしか伝わらないものとは何か? ~教育、育児、ダンスの現場から~」配信

2021年9月中旬~

出演:佐藤学、開一夫、北村明子
司会:横山義志多田淳之介

「クリスト ウォーキング・オン・ウォーター」配信

2021年9月17日(金)~27日(月)

監督:アンドレイ・M・パウノフ
出演:クリスト

The City & The City: Mapping from Home 最終成果プレゼンテーション

2021年9月17日(金)~20日(月・祝)
東京都 ターナーギャラリー / オンライン

参加メンバー:[東京チーム]ラナ ・トラン、リリー・シュウ(LILY SHU)、迫竜樹 / [バンコクチーム]アチッタポン・ピアーンスックプラサート(ニックネーム:フィーム)、ティップスダー・ライマトゥラポン(ニックネーム:フーリー)、ピッチャーパー・ワンプラサートクン(ニックネーム:ナムウン)

近藤良平・コンドルズ「にゅ~盆踊り」

2021年9月23日(木・祝)
東京都 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)

構成・振付:近藤良平
出演:近藤良平(映像出演)、コンドルズ

※2021年9月6日追記:近藤良平・コンドルズ「にゅ~盆踊りは新型コロナウイルスの影響で中止になりました。

「Me, My Mouth and I」配信

2021年10月1日(金)~11日(月)

監督:ソフィー・ロビンソン
出演:ジェス・トム

みんなのシリーズ 第六弾「能でよむ~漱石と八雲~」

2021年10月3日(日)
東京都 あうるすぽっと

出演:安田登、玉川奈々福、塩高和之
聞き手:木ノ下裕一

みんなのシリーズ 第六弾「能でよむ~漱石と八雲~」スペシャルトーク

2021年10月3日(日)
東京都 あうるすぽっと

出演:安田登、木ノ下裕一
トークゲスト:いとうせいこう

From the Farm「フレ フレ Ostrich!! Hayupang Die-Bow-Ken!」

2021年10月6日(水)~8日(金)
東京都 南大塚ホール / オンライン

ディレクションチーム:ジェームズ・ハーヴェイ・エストラーダ、Aokid額田大志
パフォーマー:バニー・カダッグ、ロビ・ルスディアナ、山中芽衣

Hand Saw Press「つながる!ガリ版印刷発信基地」

2021年10月8日(金)~11月7日(日)
東京都 豊島区内各所
全国各所

ディレクション:Hand Saw Press

ロロ「Every Body feat. フランケンシュタイン」

2021年10月9日(土)~17日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト

原案:メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」
脚本・演出:三浦直之
出演:亀島一徳篠崎大悟島田桃子望月綾乃森本華 / 緒方壮哉、関彩葉、名児耶ゆり日高啓介松本亮

※日高啓介の「高」ははしご高が正式表記。

「移動祝祭商店街 歩く庭」

2021年10月9日(土)・10日(日)
東京都 豊島区内東池袋中央公園

パフォーマンスデザイン:セノ派(杉山至坂本遼佐々木文美中村友美、鈴木健介、袴田長武、濱崎賢二)
プロジェクト設計・リサーチ:阿部健一

おどる演劇「FESTE~十二夜~」

2021年10月14日(木)~17日(日)
東京都 あうるすぽっと

原作:ウィリアム・シェイクスピア
振付・構成・演出:スズキ拓朗
出演:スズキ拓朗、エリザベス・マリー、小林らら、清水ゆり、ジョディ、ジントク / 井田亜彩実、香取直登柏木俊彦福島梓村松洸希、浦島優奈、小野塚茉央

※「FESTE」の最後の「E」は反対向きが正式表記。

ガチャガチャガチャ

2021年10月中旬~ ※売り切れ次第終了
東京都 豊島区内各所

ディレクション:遠山昇司

【シリーズ・持続可能な舞台芸術の環境をつくる】東京芸術祭2021 シンポジウム「アジアから舞台芸術と民主主義を考える ~タイ、台湾、フィリピンの現場から~」配信

2021年10月中旬~

出演:ササピン・シリワーニット、リバー・リン、JK アニコチェ
司会:横山義志、長島確

「The Life and Times」配信

2021年10月15日(金)~25日(月)

振付・演出:ジョアン・クレヴィエ

野外劇「ロミオとジュリエット」

2021年10月17日(日)~24日(日)
東京都 池袋西口公園 野外劇場 GLOBAL RING THEATRE

作:ウィリアム・シェイクスピア
訳:松岡和子
上演台本・演出:青木豪
出演:阿久津仁愛、川原琴響 / 谷田奈生、塚越健一、みしまりよ、柳内佑介、齋藤千裕、近藤廉、末次由樹、友田宗大、井上平、滝本圭、河口勇太朗、明樂哲典

太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)【代替企画】Special Event for “KANEMU-JIMA”

2021年10月上旬予定
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス

※L'ILEの「I」は、アクサン・シルコンフレクス付きが正式表記。

Baobab「ジャングル・コンクリート・ジャングル」

2021年10月22日(金)~24日(日)
東京都 あうるすぽっと

振付・構成・演出:北尾亘
出演:岡本優植田崇幸、HEIDI、小林利那、高橋唯子、小麦粉くり子、河内優太郎、内堀愛菜、中川友里江、沼田駿也、生田目麗 / 福島玖宇也、伊藤奨 / 岡田太郎 / 伊藤まこと、シュミッツ茂仁香、目澤芙裕子米田沙織、北尾亘

※高橋唯子の「高」ははしご高が正式表記。

きたまり / KIKIKIKIKIKI「老花夜想(ノクターン)」

2021年10月22日(金)~24日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト

原作:太田省吾
振付・演出:きたまり
出演:きたまり、竹ち代毬也、下村よう子(唄)
演奏:やまみちやえ、望月庸子、望月実加子、望月左太晃郎(Wキャスト)、藤舎呂近(Wキャスト)、堅田崇、富澤優夏
謡:山道太郎

アトカル・マジカル学園 アートサポート児童館

2021年10月22日(金)~24日(日)
東京都 東京芸術劇場

「Learning from the Future」配信

2021年10月29日(金)~11月8日(月)

振付・演出:コレット・サドラー

オンラインディスカッション「映像のパフォーマンス」

2021年10月29日(金)~11月30日(火)

スピーカー:岡田利規、竹下暁子、深田晃司

Farm-Lab Exhibition 成果発表(ワークインプログレス)「unversed smash」

2021年10月29日(金)~31日(日)
東京都 東京芸術劇場

ディレクションチーム:ネス・ロケ、敷地理
出演:メロディ・ドルカス、石田ミヲ、オギ、レウ・ウィジェ

「Asian Performing Arts Camp 最終公開プレゼンテーション」配信

2021年10月30日(土)

ファシリテーター:JK アニコチェ、山口惠子
参加者:ワリッド・アリ、アン・シャオティン、アルバート・ガルシア、菊地もなみ、草薙樹樹、セリーナ・マギリュー、エカ・ワヒュニ、ワン・ハォイェー

「としまおやこ小学校」

2021年11月13日(土)~12月5日(日)
東京都 あうるすぽっと 3F 会議室B

「The New Gospel ─新福音書─」配信

2021年11月13日(土)~28日(日)

作・監督:ミロ・ラウ

オンラインディスカッション「公共空間でつくる意味」

2021年11月13日(土)~30日(火)

スピーカー:北澤潤、毛利嘉孝、ラファエル・トリュニャン

「第34回としま能の会」

2021年11月19日(金)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス

出演:観世喜正、野村万蔵野村萬 ほか

「池袋演劇祭 Restart!池袋演劇祭」

2021年9月1日(水)~30日(木)
東京都 豊島区内15会場

※初出時、情報に一部誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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