「九月大歌舞伎」の出演者である
2人は、“六世中村歌右衛門 二十年祭 七世中村芝翫 十年祭”と冠された、「九月大歌舞伎」第1部に出演。梅玉は、父・六世中村歌右衛門が得意とした松風物の舞踊作品「須磨の写絵」で在原行平を勤め、芝翫は「お江戸みやげ」で、父・七世中村芝翫の当り役であったお辻を初役で演じる。
梅玉は「一門のみんなで追善できるということは、非常に意味のあること。なので、こういった状況の中でも追善をさせていただけることをありがたく思っています」と感慨を述べる。さらに「須磨の写絵」は、六世歌右衛門が自身の自主公演「第一回莟会」で披露した演目であることを説明。「父は、この作品に強い思い入れを持ち、大事にしておりました。今回は海女松風を(中村)魁春、その相手役を私が勤めさせていただきます。都を落ち延びた公家が、海女の姉妹と戯れているという内容の舞踊ですが、百人一首や、古今和歌集のような風情のある舞台ができればうれしい」と話す。
梅玉が本作で在原行平を演じるのは、これが3回目。「父が松風を最後に演じたとき、そして先代芝翫(七世芝翫)の兄が松風を演じたときも(在原行平を)勤めました。供養の思いを込めて、一所懸命勤めたい」と決意を新たにした。
芝翫は「今回、父の追善と、六世歌右衛門のおじさまの追善を、合わせてさせていただけることが非常にうれしい」と語りつつ、「歌右衛門のおじさまは、厳しくも優しくもあり、偉大なお方でした」と六世歌右衛門を惜しんだ。また「父が亡くなってから、早くも10年。今回、(中村)福助の兄も完全ではないですが、こういった形で一緒に追善できることはとてもありがたいです」と、今回「お江戸みやげ」に常磐津文字福役で出演する
今回女方として、お辻を勤める芝翫は「父は女方で、私は立役。父が勤めていて、私ができるお役はあまりないのですが、とにかく『お江戸みやげ』を勤めていたときの父は、機嫌が良かった。精一杯やらせていただきます」と言葉に力を込める。そして「不安が続く中ではございますが、笑いとともに、ほっと心が明るくなるような芝居づくりができれば」とアピールした。
さらに福助からもコメントが到着。福助は「今回、自分も出させていただけることを、大変うれしく、ありがたく思っています。おじと父という、ふたりの偉大な存在に少しでも近づけるよう、自分にとっても、今回の出演は、日々のリハビリのモチベーションになっております。『お江戸みやげ』では、父がお辻を勤めた際に、お紺で出演しております。あの、父の独特の世界観を、今回久しぶりにDVDで見て、こみ上げてくるものがありました。そして、大変懐かしく感じました。コロナ禍での開催となりますので、安全に、つつがなく、無事に千穐楽までできること、そして、自分自身精一杯勤めたいと思います」と思いを述べた。
「九月大歌舞伎」は、9月2日から27日まで東京・歌舞伎座にて。なお、現在同劇場では、8月28日まで「八月花形歌舞伎」が開催されている。
「九月大歌舞伎」
2021年9月2日(木)~27日(月)
東京都 歌舞伎座
第1部 六世中村歌右衛門 二十年祭 七世中村芝翫 十年祭
一、「お江戸みやげ」
作:川口松太郎
演出:大場正昭
出演
お辻:
おゆう:中村勘九郎
阪東栄紫:中村七之助
角兵衛獅子兄:中村福之助
角兵衛獅子弟:中村歌之助
小女みの:中村玉太郎
女中お長:中村梅花
お紺:中村莟玉
鳶頭六三郎:中村松江
常磐津文字福:
常磐津文字辰:中村東蔵
二、「『須磨の写絵』行平名残の巻」
出演
在原行平:
海女村雨:中村児太郎
海女松風:中村魁春
第2部
一、「『近江源氏先陣館』盛綱陣屋」
出演
佐々木盛綱:松本幸四郎
高綱妻篝火:中村雀右衛門
和田兵衛秀盛:中村錦之助
盛綱妻早瀬:中村米吉
信楽太郎:中村隼人
高綱一子小四郎:尾上丑之助
盛綱一子小三郎:坂東亀三郎
北條の臣:中村吉之丞
北條の臣:澤村宗之助
竹下孫八:大谷廣太郎
古郡新左衛門:松本錦吾
伊吹藤太:中村歌昇
北條時政:中村又五郎
盛綱母微妙:中村歌六
二、「女伊達」
出演
木崎のお光:中村時蔵
男伊達中之島鳴平:中村萬太郎
男伊達淀川の千蔵:中村種之助
第3部
「『東海道四谷怪談』四谷町伊右衛門浪宅の場 伊藤喜兵衛内の場 元の浪宅の場 本所砂村隠亡堀の場」
作:四世鶴屋南北
出演
お岩 / お花:坂東玉三郎
直助権兵衛:尾上松緑
小仏小平 / 佐藤与茂七:中村橋之助
お梅:片岡千之助
按摩宅悦:片岡松之助
乳母おまき:中村歌女之丞
伊藤喜兵衛:片岡亀蔵
後家お弓:市村萬次郎
民谷伊右衛門:片岡仁左衛門
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