「衛生」では、水洗トイレが普及する前の日本を舞台に、汲み取り業者の諸星衛生を軸とした物語が展開。脚本・演出を
本作はまず、し尿の歴史を紹介するナンバーからスタート。「くそくそぴっちゃん、くそぴっちゃん」というフレーズが繰り返される中、江戸時代から昭和にいたるまで糞尿が日本でどのように扱われてきたのかが解説され、観客を物語の世界にいざなった。
劇中ではキャッチーな楽曲群に乗せ、“うんこ”をはじめとした下ネタが次々と飛び出して観客を笑わせる。初めは仕事内容から差別的な扱いを受けていた諸星衛生だったが、酒やギャンブルなど人々の欲求を的確に見抜くことでビジネスチャンスをつかみ、急成長を遂げる。諸星衛生を親子で営む諸星良夫と大(まさる)は、金のためなら裏工作や殺人もいとわない。危険な目に遭っても懲りずに悪の道を貫く彼らの姿は、ギラギラと輝く生命力を感じさせた。
良夫役の古田は、コミカルな笑いからドスの効いた声での恫喝まで緩急自在な演技を見せ、次に何をするかわからない良夫の恐ろしさを具現化した。大役の右近は、ツケの音に合わせてランニングシャツ姿で見得を切る。またスーツのポケットに手を突っ込んで悠々と歩く様子から、ふてぶてしいほど自信にあふれた大の人物像を立ち上げた。
さらに
ゲネプロ前に行われた囲み取材には、古田、右近、咲妃、
右近は「僕は歌舞伎以外の舞台の経験が少なく、皆さんに助けられました。歌舞伎とミュージカルの共通点を見つけたところもありますし、歌舞伎らしい演出を取り入れてもらったシーンもあります」と話し、「この作品では、人間の生きる力が描かれます。人が強く生きている姿を自分なりに演じられたら」と抱負を述べた。
「これまで避けて通ってきた道の、ど真ん中を突き進む感じ」と心境を明かすのは咲妃。咲妃は「お稽古場ではアワアワしたこともありましたけど、それは私がいわゆる“おしも”な内容を表面的に捉えてしまっていたから。この作品は、深く人間性を掘り下げるミュージカルだと思います」と実感を語る。咲妃のコメントを受けた古田が「“おしも”って……」と笑い声を漏らすと、咲妃は「なんで笑うんですか!」と即座にツッコミを入れ、座組の仲むつまじさを垣間見せた。
石田はオファーを一度は断ったものの、ルミネtheよしもとまで訪ねてきたプロデューサーと演出の福原から改めて出演を依頼されたと言い、「『最悪、歌わなくてもいい。歌ってるふりをしてもらえたら』と頼まれた。『それならいける!』と思ってお受けしたのに実際はめちゃくちゃ自分で歌っている。詐欺に遭った気分」とエピソードを語り、取材陣の笑いを誘う。
もともとミュージカルファンで「王道のキラキラしたミュージカルが好き」だと言うともさかは、今回ミュージカルに初挑戦する。ともさかは「毎日“おしも”な言葉に囲まれていたらなぜか、古田さんや右近さんがそういうワードを連発するほどにカッコ良く見えてくる。これはこれでキラキラしています。ひどい人しか出てきませんが、不思議な爽快感のある作品に仕上がりました」と出来栄えに自信をのぞかせた。
5月にミュージカル「レ・ミゼラブル」デビューを果たした六角は「『衛生』は、ちょっと前までやっていた作品とはだいぶ違う」と切り出して記者たちを笑わせる。六角は続けて「今年はミュージカルに包まれて生きている、珍しい1年。今回の作品にお客様がどう反応するかまったくわかりません。楽しみですね」と期待を口にした。
最後に古田は「舞台は終演後にみんなで食べたり飲んだりしながらしゃべるのが楽しいのに、今回はそうもいきません。だから先に(お酒を)飲んできてください。酔っていると舞台で何が起きたのかわからなくなると思うので(笑)、『バカだな、こいつら』と思いながら帰ってもらえたら」とジョーク交じりにあいさつし、取材を締めくくった。
上演時間は休憩20分を含む約3時間5分。東京公演は本日7月9日から25日までTBS赤坂ACTシアターにて。また本作は7月30日から8月1日まで大阪・オリックス劇場、9日から11日まで福岡・久留米シティプラザでも上演される。
「ミュージカル『衛生』~リズム&バキューム~」
2021年7月9日(金)~25日(日)
東京都 TBS赤坂ACTシアター
2021年7月30日(金)~8月1日(日)
大阪府 オリックス劇場
2021年8月9日(月・振休)~11日(水)
福岡県 久留米シティプラザ
脚本・演出:
音楽:水野良樹(
出演:
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みやこわすれ @kenzakikuniko
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