「東京芸術祭2021」の記者発表会が、本日7月2日にオンラインで行われた。
2016年にスタートした「東京芸術祭」は、豊島区池袋周辺エリアで開催される都市型総合芸術祭。本日の会見にはプランニングチームより、2018年から同芸術祭の総合ディレクターを務めている
今回の「東京芸術祭2021」では、上演や配信を行う「東京芸術祭プログラム」と、人材育成事業「東京芸術祭ファーム」の2本柱を設定。またこれまで「東京芸術祭」の一環として開催されてきた「フェスティバル/トーキョー」が「東京芸術祭プログラムFTレーベル」に生まれ変わる。
宮城は、今年のテーマである「歴史のまばたき」について「この言葉からいろいろなイメージを浮かぶと思う。例えば僕たちがおサル電車のように歴史という乗り物に乗っていて、それが短いトンネルを抜けるとあたりの景色が変わっている、というような。僕たちは今“まばたき”のただなかにいます。まばたきを経ることで、物事を新しい目で見たり、受動的に受け入れていたものを批評的に見たりすることができるようになれば、という期待を込めました」とコメント。
続けて宮城は「今の世界には『異質なものは敵であり、相容れない』という考え方がはびこっています。しかし舞台芸術においては、異なるバックグラウンドを持つ人間が同じものを観て感動することで、人間は違いを越えて理解し合えるのではないかという希望を持てる。昨年はコロナ禍によって世界中の劇場が閉じてしまいましたが、今回改めて舞台芸術の使命を確認できるかもしれません。そういう“トンネルの向こう側”を見ながら、今年の芸術祭をやっていけたら」と言葉に力を込める。
また芸術祭の体制が大きく変わったことについて宮城は「以前は各事業が独立した社内カンパニーのように集まっていました。しかしお互いを知るにつれて、競争心と同時に仲間意識が高まった。このため、より効率的でパワフルな組織を目指し、『東京芸術祭』という1つの人格を持ったカンパニー、という方向に1歩踏み出しました」と語った。
会見では、注目公演となる太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)「金夢島 L'ILE D'OR KANEMU-JIMA(仮題)」と、野外劇「ロミオとジュリエット」について、宮城と青木がそれぞれ語る場面も。宮城は、約20年ぶりに来日するフランスの太陽劇団について「この劇団のメンバーは、世界各国の身体表現をコピーするかのように深く学びます。そのうえで、“今の世界”をありのまま舞台に立ち上げるため、集団創作のような形で作品を磨いている。劇団のその姿は、世界の多くの演劇人が夢見た1つの理想像だと思う」と話し、「そのような劇団が今も世界に残っているのは、同時代の僕らにとってうれしいこと。“今観ておかなくてはいけない”と言われる太陽劇団が、また日本に来てくれます」と喜びをのぞかせた。
野外劇「ロミオとジュリエット」の上演台本・演出を担う青木は、これまで何度かシェイクスピア作品をオールメールで上演してきた。しかしオーディションでキャストを選出したという今回は、俳優たちの出演機会を均等にすることを目指し、ロミオの属するモンタギュー家の面々を女性キャストが、ジュリエットの属するキャピュレット家の面々を男性キャストが演じるという。青木は宮城が口にした“相容れない世界”という言葉に触れつつ「今回は男性と女性が“相容れない世界”における『ロミオとジュリエット』になりそう」「誰もが入り込みやすい野外劇を目指して取り組んでいます。全ステージ観てもさほど高価ではないので(笑)、多くの方に観ていただきたいです」とメッセージを送った。
「東京芸術祭2021」は9月1日から11月30日まで行われる。ラインナップは以下の通りだ。
関連する特集・インタビュー
「東京芸術祭2021」東京芸術祭プログラム ラインナップ
観劇サポート講座
2021年9月1日(水)、4日(土)※予定
東京都 あうるすぽっと 会議室
講師:廣川麻子、美月めぐみ、鈴木橙輔
近藤良平・コンドルズ「にゅ~盆踊り」
2021年9月23日(木・祝)
東京都 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
構成・振付:
みんなのシリーズ 第六弾「能でよむ~漱石と八雲~」
2021年10月3日(日)
東京都 あうるすぽっと
出演:
聞き手:
みんなのシリーズ 第六弾「能でよむ~漱石と八雲~」スペシャルトーク
2021年10月3日(日)
東京都 あうるすぽっと
出演:安田登、木ノ下裕一
トークゲスト:
From the Farm「フレフレ Ostrich!! Hayupang Die-Bow-Ken!」
2021年10月6日(水)~8日(金)
東京都 南大塚ホール
参加アーティスト:ジェームズ・ハーヴェイ・エストラーダ、
Hand Saw Press「つながる!ガリ版印刷発信基地」
2021年10月8日(金)~11月7日(日)
東京都 豊島区内各所
全国各所
ディレクション:Hand Saw Press
ロロ「Every Body feat. フランケンシュタイン」
2021年10月9日(土)~17日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト
原案:メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」
脚本・演出:
「移動祝祭商店街 歩く庭」
2021年10月9日(土)・10日(日)
東京都 豊島区内
パフォーマンスデザイン:セノ派(舞台美術家コレクティブ /
プロジェクト設計・リサーチ:阿部健一
おどる演劇「十二夜(仮)」
2021年10月14日(木)~17日(日)
東京都 あうるすぽっと
原作:ウィリアム・ シェイクスピア
振付・構成・演出:
野外劇「ロミオとジュリエット」
2021年10月17日(日)~24日(日)
東京・池袋西口公園 野外劇場 GLOBAL RING THEATRE
作:ウィリアム・ シェイクスピア
訳:松岡和子
上演台本・演出:
出演:
太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)「金夢島 L'ILE D'OR KANEMU-JIMA(仮題)」
2021年10月19日(火)~28日(木)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス
作:太陽劇団+エレーヌ・シクスー
演出:アリアーヌ・ムヌーシュキン
音楽:ジャン=ジャック・ルメートル
※L'ILEの「I」は、アクサン・シルコンフレクス付きが正式表記。
Baobab「ジャングル・コンクリート・ジャングル」
2021年10月22日(金)~24日(日)
東京都 あうるすぽっと
振付・構成・演出:
きたまり / KIKIKIKIKIKI「老花夜想(ノクターン)」
2021年10月22日(金)~24日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト
作:
振付・演出:
民俗芸能 in としま2021「まつりのおとがきこえる」
2021年10月31日(日)
東京・池袋西口公園 野外劇場 GLOBAL RING THEATRE
出演:長崎獅子連、冨士元囃子連中 ほか
としまおやこ小学校
2021年11月13日(土)~12月5日(日)※毎週土日
東京都 あうるすぽっと 会議室
第34回としま能の会
2021年11月19日(金)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス
構成:観世喜正
「ガチャガチャガチャ」
時期調整中
東京都 豊島区内各所
ディレクター:遠山昇司
エディター:影山裕樹
リサーチ:立教大学社会学部 小泉元宏ゼミ
「The New Gospel -新福音書-」配信
時期調整中
作・監督:ミロ・ラウ
「Me, My Mouth and I」配信
時期調整中
出演:ジェス・トム
監督:ソフィー・ロビンソン
「東京芸術祭2021」東京芸術祭ファーム ラインナップ
ラボ
「The City & The City:Mapping from Home」
2021年7月8日(木)~9月23日(木・祝)
東京都 ターナーギャラリー ※一部オンラインの可能性あり
「Farm-Lab Exhibition」
2021年7月下旬~11月1日(月)
オンライン開催
東京都 東京芸術劇場 アトリエイースト
東京都 東京芸術劇場 アトリエウエスト ほか
※2021年10月下旬に成果発表。
「Asian Performing Arts Camp」オンライン開催
2021年8月25日(水)~11月1日(月)
※2021年10月下旬に最終公開プレゼンテーション。
インターン
アートトランスレーターアシスタント
2021年7月中旬~11月中旬
制作インターン
2021年8月1日(日)~11月中旬
スクール
「Young Farmers Forum」
2021年7月21日(水)~11月中旬
オンライン開催
東京都 東京芸術劇場 アトリエイースト
東京都 東京芸術劇場 アトリエウエスト ほか
「ダイアローグ・プラス」
開催時期調整中
「学生観劇プログラム」
開催時期調整中
オンライン開催
東京芸術祭会場内
※2021年9月6日追記:「にゅ~盆踊り」は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
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ステージナタリー @stage_natalie
【会見レポート】テーマは“歴史のまばたき”「東京芸術祭2021」に宮城聰「トンネルの向こう側を見ながら」
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