PARCO PRODUCE 2021「ピサロ」(原題:The Royal Hunt of The Sun)が、本日5月15日に東京・PARCO劇場で開幕。これに先駆け昨日14日、記者会見とゲネプロが行われた。
成り上がりのスペイン将軍ピサロ(
大音響と共に幕が開くと、舞台の上半分を覆う湾曲した大スクリーンに、赤く燃える太陽の映像が映し出される。太陽をバックに宮沢扮するアタウアルパのシルエットがくっきりと浮かび上がり、観客を一瞬で物語の世界に引き込んだ。
スクリーンには、色合いはビビッドだが、水彩画のようににじんだ映像が投影され、黒を基調とした舞台装置が映像の色鮮やかさを引き立てる。ステージには可動式の階段が組まれ、俳優たちが階段を動かしながらその上で演技をすることで、舞台はインカ帝国の段々畑や森、宮殿、極寒のアンデス山脈など、次々に様相を変えていった。
渡辺は表情に憂いをたたえながら、厳しい口調や隙のない身のこなしで、たたき上げの将軍ピサロ像を立ち上げる。その一方で、古傷の痛みに膝を折る姿には、老いや死に恐怖するピサロの弱さをにじませた。宮沢は、インカの民から神とあがめられるアタウアルパを、静かだが確信に満ちた語り口で演じる。アタウアルパが初めてピサロたちと対面する場面では、金色の照明に照らされながらしずしずと歩み出て、舞台上に神秘的な光景を描き出した。
ゲネプロを前に行われた会見には、渡辺と宮沢が出席。渡辺は昨年の公演を「『もう少しで何かに手が届きそうだ』と思ったときに終わってしまった」と振り返る。アンコール公演に際しては「稽古でみんなと再会して読み合わせをしたとき、僕の中で時計が動き始めたような感覚があった」と感慨深げな表情を浮かべ、「このような状況ですが、それでも僕たちは演劇を皆さんにお届けしたい。約3週間をしっかりと、丁寧に走り抜けたいです」と意気込んだ。
宮沢は昨年の公演の中止が決まった際、渡辺がカンパニーのメンバーに「また会いましょう」と声をかけていたと話し、「謙さんのおかげで『きっとまたやれる』と信じられました。公演中止にやるせない思いもありましたが、謙さんの言葉を思い出すと前向きになれた」と述べる。約1年を経ての上演には「若手がパワーアップしています。先輩方に負けない勢いや力で挑んでいます」と言い、「個人的には舞台の再演は初めて。同じ役でも前回とは違う景色が見えて、少しですが自分の成長を感じました。その姿をお届けできて光栄です」と手応えを語った。
渡辺が宮沢の言葉にうなずいて「かなり成長しています」と太鼓判を押すと、宮沢は「プレッシャーですね……」と苦笑い。渡辺は宮沢のリアクションに笑いつつ、「衣装からもわかると思いますが、彼が演じるアタウアルパは超越的な存在です。僕も以前に演じましたが、相当大変だと思う。でも彼には昨年の経験がありますし、今年は稽古場でいろいろ試せてよかったと思います」と述べる。また自身が約1年ぶりに老将軍ピサロを演じることには「僕は1年分老いぼれたので、より一層役に近付けたかな(笑)」と話して記者の笑いを誘った。
会見では2人が、振付家でもあるタケットの演出について語る場面も。宮沢は「ウィルの演出はとても美しい。特にインカでのシーンは踊りやアクションが多くて見せ場だと思います」と見どころをアピール。渡辺は「稽古しながら、彼は言葉の意味も理解したうえで演出していると感じました。彼はイギリス人ですが、稽古では『ちょっとすみません!』と日本語で言ってくる(笑)。セリフの意味やニュアンスについて、僕らと議論しながら深めていこうという意欲を強く感じました」とタケットに厚い信頼を寄せた。
最後に渡辺は「外出がはばかられるこのご時世、観劇に足を運んでもらうことに胸が痛むこともあります。でもやはり僕たちには届けたいものがあり、カンパニー全員がその思いを持っている。くれぐれも用心しながら、ぜひお運びいただければと思います」とメッセージを送り、会見は終了した。
上演時間は休憩20分を含む約2時間50分。公演は6月6日まで行われる。
PARCO PRODUCE 2021「ピサロ」(原題:The Royal Hunt of The Sun)
2021年5月15日(土)~6月6日(日)
東京都 PARCO劇場
作:ピーター・シェーファー
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演出:ウィル・タケット
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【公演 / 会見レポート】「ピサロ」アンコール公演が開幕、渡辺謙「時計が動き始めたような感覚」
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