「愛するとき 死するとき」は、ドイツの劇作家フリッツ・カーターによる3部構成の戯曲。アルミン・ペトラスの演出により、2002年にハンブルクのタリア劇場で初演された本作は、2003年にドミュルハイム演劇祭で劇作家賞を受賞したほか、ドイツの演劇祭・テアタートレッフェンに選出された。
本作は、ベルリンの壁崩壊前に、社会主義体制下の東ベルリンで青春期を過ごし、1987年に西ドイツに移住、1990年の壁崩壊後に再びベルリンに戻ったという、カーターの稀有な経験が反映されており、劇中では社会主義国家の息苦しい日常や反体制運動、西ドイツへの逃亡といったドラマが、愛と人生をテーマに描かれる。
翻訳も手がける小山は、本作ついて「2002年、ペーテル・ゴタールの『Time Stands Still』やエリッヒ・マリア・レマルク原作の『A Time to Love and a Time to Die』といった映画をモチーフにし、青春群像劇やメロドラマの要素を織り込みながら、大きな夢が社会システムにより残酷に断ち切られる様を悲喜劇として描いた作品」と語り、「構成も独特で、関連がなさそうな3部が、根底の部分では繋がりを見せ、ジャンルもモノローグ・会話・音楽等様々な要素を行き来します」と明かす。
今作でシアタートラムに初登場する浦井は「実は、憧れと、少しの怖さがある劇場です。このような形で実現させていただき、心から、光栄です」と語りつつ、内容について「東西ドイツが分断されていた頃の東ドイツが舞台のお話です。若者や挫折を味わった元ヒーローや、家庭のある男性の苦悩。僕は色んな年齢の、色んなシチュエーションの男性を演じる予定です。閉塞感の中の日常のもがきが、今のコロナ禍の状況とどこか通じている気もしますが、傍から見たら恵まれているなぁと思う人生でも、人には言えない満たされない思いや悩みが、きっとあるはず。この作品は今のこの時期の人々の鬱屈とした心情を炙り出したりする気がしています」とコメント。追加キャストや公演スケジュールなどの詳細は続報を待とう。
小山ゆうなコメント
「愛するとき 死するとき」の作者フリッツ・カーターには、作家フリッツ・カーターと演出家アーミン・ペトラスの2つの名前があり、カーターのプロフィールには「アーミン・ペトラスのプロフィールと混同しないように」と記されていますが、異なる2つのプロフィールに共通するのは、彼が何らかの方法・事情で東から西への移動自体が難しかった1990年東西ドイツ統一以前に東から西ドイツに移住しているという点です。
本作は、この稀有な経歴の作家が2002年、ペーテル・ゴタールの「Time Stands Still」やエリッヒ・マリア・レマルク原作の「A Time to Love and a Time to Die」といった映画をモチーフにし、青春群像劇やメロドラマの要素を織り込みながら、大きな夢が社会システムにより残酷に断ち切られる様を悲喜劇として描いた作品で、同年の「今年の代表作」に選ばれました。
構成も独特で、関連がなさそうな三部が、根底の部分では繋がりを見せ、ジャンルもモノローグ・会話・音楽等様々な要素を行き来します。
2017年ヴォルフガング・ヘルンドルフ原作、ロベルト・コアル上演台本の「チック」を、19年再演時と18年には同作家の「イザ ぼくの運命のひと」のリーディング上演をしました。同じく同時代ドイツ作家の作品で、この大好きなシアタートラムで創作に入れる事を楽しみにしています。また、ミュージカルからシェイクスピアなど古典ストレートプレイまで演劇の世界を自由に横断しながら、常に日本の演劇界を牽引していらっしゃる浦井健治さんが初めてシアタートラムに登場との事、私自身、浦井さんをトラムで拝見できるなんて! とワクワクしております。1年前にお目にかかった際、浦井さんは、演劇の話から社会や世界の話まで奥深く考察されながら話して下さり、聞き入ってしまった事を思い出します。浦井さんを通してカーターの言葉がどの様に聞こえてくるのか楽しみです。ほか、強力なクリエイティブチーム、キャストが集結予定です。不安定な時期ではありますが、楽しい作品が作れればと思っております。
浦井健治コメント
演出の小山さんと初めてお目にかかったのは、ちょうど1年くらい前のことです。今自分が考えていること、興味があること、コロナ禍中での想いなども交えながら、前を向いて、演劇のことを考え、想いを寄り添わせ、とても貴重な時間だったことを覚えています。そんなやりとりをきっかけにして、今回の「愛するとき 死するとき」をやってみないか、というお話を頂きました。
東西ドイツが分断されていた頃の東ドイツが舞台のお話です。若者や挫折を味わった元ヒーローや、家庭のある男性の苦悩。僕は色んな年齢の、色んなシチュエーションの男性を演じる予定です。閉塞感の中の日常のもがきが、今のコロナ禍の状況とどこか通じている気もしますが、傍から見たら恵まれているなぁと思う人生でも、人には言えない満たされない思いや悩みが、きっとあるはず。この作品は今のこの時期の人々の鬱屈とした心情を炙り出したりする気がしています。そんな、やるせない人たちの生き方を小山さんと描き出していけたらと考えています。そして、今後発表される共演者の皆さまと、どんな化学反応になっていくのか、今からとても楽しみです。
そして僕にとっては初めてのシアタートラムへの出演となります。実は、憧れと、少しの怖さがある劇場です。このような形で実現させて頂き、心から、光栄です。お客様との距離も近く、緊張感のある空間で、濃密なドラマをつくり出せたらなと思っています。皆様、どうぞ楽しみに待っていてください。
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浦井健治がシアタートラムに初登場、小山ゆうな翻訳・演出「愛するとき 死するとき」(コメントあり)
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