2月特別企画公演「月・雪・花-四季折々のこころ-」、3月歌舞伎公演「時今也桔梗旗揚」に出演する
四世鶴屋南北が手がけた「時今也桔梗旗揚」は、本能寺の変を起こすまでの明智光秀の姿を描いた作品。今回は、本作で武智光秀(明智光秀)を長年勤めてきた
菊之助は「時今也桔梗旗揚」を上演作品に選んだ理由を2つ挙げ、1つは自身の岳父・吉右衛門が演じた本能寺馬盥の場に憧れ、吉右衛門を通して光秀という人物に興味を持ったことだと話す。「(吉右衛門の)芸の大きさ、セリフまわしの鮮やかさ、形の美しさ。私はそういうものに見入っていたのですが、実際に稽古に入ると、それらはすべて、小田春永(織田信長)への思い、天下泰平に対する思いといった、心情の積み重ねの結果であったことに気付かされました」と改めて吉右衛門が演じた光秀の素晴らしさを振り返った。
もう1つの理由を、先日最終回を迎えた、光秀を主人公にしたNHK大河ドラマ「麒麟がくる」だと言う菊之助は「(ドラマにより)反逆的とされていた明智光秀像が、実は天下泰平を望んでいたと再解釈されている機運があって。ちょうどお客様も明智光秀公に興味を持っていらっしゃるのでは」と語り、「麒麟がくる」で光秀役を演じた長谷川博己との関係性を「以前蜷川幸雄さんの舞台でご一緒して以来、交流があって。今回、明智光秀を演じるにあたり、どのような資料を読んでいたのかなど、アドバイスをしていただきました」とエピソードを明かした。
さらに菊之助は「主君と家臣の1つのボタンの掛け違いが、全てを狂わせてしまう……このような劇的な構造は鶴屋南北の作品ならでは」と、その魅力に触れ、「陰々滅々とした中にも、形の美しさを見せるのが歌舞伎です。それが饗応でも、馬盥でも、三方の踏み割りでも、その“形の美しさ”を見せるためには、内面が積み上がっていないと、形というものがものまねになってしまいます。三方を踏み割るまでの、春永公に対する思いの積み上げ方。そこに、演技の成否がすべて詰まっている」と言葉に力を込めた。
2月特別企画公演「月・雪・花-四季折々のこころ-」は、日本文化を体現する祭典「日本博」の一環として上演される。本公演で、舞踊を披露する菊之助は「月は『羽衣』、雪は『鷺娘』、花は『娘道成寺』の男舞、最後に『石橋』を舞わせていただきます。各々の舞踊を7分ほどにまとめ、1日に4つの舞踊をすべて舞わせていただく、非常に挑戦的な公演となっております」とアピールし、「またこのたび、“日本博サポーター”にも就任させていただきました。ぜひこの公演とともに、これからも世界に向けて日本の伝統文化の良さを発信していきたいと思っております」と意気込みを述べた。
「月・雪・花-四季折々のこころ-」は2月28日、「時今也桔梗旗揚」は3月4日から27日まで、いずれも東京・国立劇場 大劇場にて。
令和3年2月特別企画公演「月・雪・花-四季折々のこころ-」
2021年2月28日(日)15:00~
東京都 国立劇場 大劇場
月
歌舞伎舞踊 「羽衣」
出演:
声明「九條錫杖」
出演:天台聲明 七聲會
篠笛「京の夜」
出演:福原徹
新内「明烏後正夢」
出演:新内多賀太夫、鶴賀喜代三郎
雪
歌舞伎舞踊「鷺娘」
出演:尾上菊之助
尺八「木枯」
出演:田辺頌山
箏曲「鉢の木」
出演:山勢麻衣子、奥山益勢、福原徹
笙「盤渉調調子」
出演:東野珠実
花
歌舞伎舞踊「娘道成寺」
出演:尾上菊之助
琉球古典音楽 「宮城くわでさ節」「伊集早作田節」
出演:新垣俊道、仲村逸夫、入嵩西諭、久志大樹
琵琶「春の宴」
出演:首藤久美子
大薩摩 歌舞伎舞踊 「石橋」
出演:尾上菊之助
フィナーレ
長唄:杵屋巳津也、杵屋巳太郎
囃子:望月太左久
※鶴賀喜代三郎の「喜」は異体字、奥山益勢の「益」は旧字体が正式表記。
令和3年3月歌舞伎公演「時今也桔梗旗揚」
2021年3月4日(木)~27日(土)
東京都 国立劇場 大劇場
「入門 歌舞伎の“明智光秀”」
案内:片岡亀蔵
「時今也桔梗旗揚」
作:四世鶴屋南北
監修:
出演
武智光秀:尾上菊之助
小田春永:坂東彦三郎
光秀妻皐月:中村梅枝
森蘭丸:中村萬太郎
光秀妹桔梗:坂東新悟
森力丸:中村鷹之資
山口玄蕃:中村吉之丞
住職日和上人:片岡亀蔵
連歌師宇野丈巴:河原崎権十郎
安田作兵衛:中村又五郎
ほか
関連記事
ryugo hayano @hayano
【会見レポート】上演理由は中村吉右衛門と大河ドラマ「時今也桔梗旗揚」尾上菊之助が光秀役への思い語る https://t.co/4O1U2y3LVh