「吉例顔見世大歌舞伎」が本日11月1日に東京・歌舞伎座で開幕。これに先駆け、
染五郎と團子は第4部「義経千本桜 川連法眼館」、通称「四の切」で初役に挑む。2人が歌舞伎座の舞台に立つのは、染五郎は昨年11月、團子は今年1月にそれぞれ松本幸四郎、市川猿之助と勤めた「連獅子」ぶり。出演が決まったときの気持ちを「1年ぶりに舞台に立てることが、とにかくうれしかった」と振り返る染五郎は、今回勤める源義経役について「大きなお役で、自分がやらせていただいてもいいのかという不安はありました。義経は、過去に『勧進帳』で2度勤めさせていただきましたが、歴史的にも好きな人物です。『四の切』の義経も位が高い役ですので、1つひとつのセリフを丁寧に、堂々と演じたい」と瞳を輝かせた。
「四の切」に憧れがあったと語る團子は、その魅力を「衣装がきれいですし、(佐藤)忠信の狐っぽい動きもかわいい。視覚的にも観やすい作品だと思います」と笑顔で話す。さらに「僕は駿河次郎を勤めますが、本来は亀井六郎を演じたあとに勤めるようなお役。いきなり駿河をやらせていただくことに緊張はありますが……じいじ(市川猿翁)や猿之助さんが勤めてきた『四の切』は、どちらも派手でカッコよかった。僕もしっかり勤めたい」と決意を新たにした。
取材会では、稽古で染五郎が父・幸四郎から、團子が市川猿弥から役を教わっているというエピソードも明かされた。古典歌舞伎の難しさについて、染五郎は「新作歌舞伎は現代語なので、セリフの意味をつかみやすいのですが、古典だとセリフが難しかったり、調べないとわからないものが多い。なので、父からもらった演目の解説書のコピーや、劇評を読んだりして、自分の中の役をふくらませています」とコメント。團子はそれに頷きつつ、「セリフを発するときも、古典の七五調だと早くなってしまいがち。なので、ゆっくり、しっかり、きっちり。猿弥さんからは『止めすぎるのもよくないし、流れすぎるのもよくない』というアドバイスをいただいています」と話した。
染五郎と團子の初共演は、2013年に東京・国立劇場で上演された「春興鏡獅子」。2016年にスタートした、幸四郎と猿之助による“弥次喜多”シリーズには、共に欠かさず出演している。染五郎は團子について「僕は人見知りなので、唯一と言っていいほど仲のいい歌舞伎俳優さん」と照れくさそうに語り、「(團子は)『四の切』をずっとやりたいと言っていましたし、とにかく舞台に対する情熱がすごいです」と述べる。染五郎の言葉に「照れるなあ」とはにかんだ團子は、「(染五郎は)クールな印象を持たれがちですが、一緒に歌舞伎の話をしていると『こいつは本当に歌舞伎が好きなんだな』と感じます。あと僕にはない、俯瞰した視点を持っている」と語り、「それから……僕は彼の横でボケまくるんですけど、それに苦笑いを返してくるのが好き。でも心の中では笑ってるんだよね?(笑)」と染五郎に投げかける。これに対して染五郎が無言の苦笑いで応答すると、團子は「……そういう関係です(笑)」と締め、記者たちを笑わせた。
最後は、2人がハマっているものの話に。團子は「BTSですね。自粛期間中にBTSの『DNA』の、テテ(V)パートは踊れるようになりました!」と笑顔を見せ、「(BTSのメンバーだと)テテが好きですね。いっくん(染五郎)に似てると思ってて……なので、推しに会えているような気分で眼福です(笑)」と、画面越しに染五郎に目線を送る。染五郎は「僕はずっと変わらずマイケル・ジャクソン。マイケルの動きを歌舞伎に取り入れられないか考えていて、例えば『操り三番叟』で、マイケルのパントマイム的な振りを生かせないかな?と考えています」と微笑んだ。
「義経千本桜 川連法眼館」には、染五郎、團子のほか、佐藤忠信 / 源九郎狐役の中村獅童、亀井六郎役の澤村國矢、そして静御前役の中村莟玉が登場する。「吉例顔見世大歌舞伎」は11月26日まで。
「吉例顔見世大歌舞伎」
2020年11月1日(日)~26日(木)
東京都 歌舞伎座
第1部「蜘蛛の絲宿直噺」
出演
女童熨斗美 / 小姓澤瀉 / 番新八重里 / 太鼓持彦平 / 傾城薄雲:市川猿之助
源頼光:中村隼人
碓井貞光:中村福之助
金時女房八重菊:市川笑三郎
貞光女房桐の谷:市川笑也
坂田金時:市川猿弥
※小姓澤瀉の「瀉」のつくりは、わかんむりが正式表記。
第2部「新古演劇十種の内 身替座禅」
作:岡村柿紅
出演
山蔭右京:尾上菊五郎
太郎冠者:河原崎権十郎
侍女千枝:尾上右近
同 小枝:中村米吉
奥方玉の井:市川左團次
第3部「一條大蔵譚 奥殿」
出演
一條大蔵長成:松本白鸚
吉岡鬼次郎:中村芝翫
女房お京:中村壱太郎
八剣勘解由:松本錦吾
女房鳴瀬:市川高麗蔵
常盤御前:中村魁春
第4部「義経千本桜 川連法眼館」
出演
佐藤忠信 / 源九郎狐:中村獅童
源義経:
駿河次郎:
亀井六郎:澤村國矢
静御前:中村莟玉
※初出時より、本文の表現を変更しました。
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【会見レポート】「吉例顔見世大歌舞伎」“四の切”で初役に挑む市川染五郎&市川團子「とにかくうれしい」 https://t.co/2tqzVaXDql