ミュージカルコメディ「Gang Showman」が昨日9月18日に開幕。これに先駆け、去る9月17日にゲネプロと囲み取材が行われた。
「Gang Showman」は、脚本・作詞・演出・振付を
舞台は、1940年代のアメリカ・ニューヨーク。70年以上続く小さなショーの店・Club Smileでは、新オーナーのメアリー(平野)が、メンバーのロバート(入野)、パトリシア(花乃)、デイビット(松平)と共にショーのリハーサルに明け暮れていた。メアリーの父である前のオーナーが亡くなって2週間。なんとしてでも店を再開させたいメアリーは、焦る気持ちを抑えられない。そこに、ギャングのジェイムズ(屋良)が、子分のウィリアム(中村)とマイケル(鯨井)を引き連れて、借金の取り立てにやってくる。払えないと言うメアリーに対し、彼らは返済を待つ条件として、ジェイムズを主役にしたショーを作るよう迫る。しかしジェイムズは潔癖症で高所恐怖症、おまけに金属アレルギーで、演技で近づくこともままならない。困り果てるメアリーだったが、そこに、人気ストリップダンサーのリンダ(妃海)、そして演出家のリチャード(中山)と、振付家のフランク(玉野)が現れ、彼らも仲間に加わることになり……。
物語は、登場人物たちがショーの準備に取り掛かるパートと、彼らがシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を原作にしたショーを上演する劇中劇パートの二重構造になっている。屋良は、迫力ある態度と声量で、説得力を持ってギャングのジェイムズを演じきるが、潔癖症であることが明らかになるシーンで「全員距離を取れ!」と叫び、キャスト同士のソーシャルディスタンスを取らせ観客の笑いを誘う。また、ジェイムズがメアリーにタップダンスで愛を伝えようとする劇中劇の1シーンでは、生演奏に合わせて靴音を響かせ、華麗な身のこなしで観客を魅了。メアリーたちと過ごすうちに、ショーに真剣になっていくジェイムズの不器用ながらも実直な性格を、屋良は表情や声色の移り変わりで繊細に表現した。
平野は、気丈に振る舞い続けるメアリーのポジティブさと愛らしさを強調。歌唱シーンでは、劇場いっぱいに美声を響かせ、亡くなった父や、ショーへの熱い思いを歌に乗せた。リンダ役の妃海は、深いスリットの入った赤いワンピースに身を包みながら、セクシーなダンスと歌声で観客の視線を集める。花乃は、メアリーの父を思い続けるパトリシアを、ピュアさを際立てながら演じ、ロバート役の入野は、パトリシアへの滑稽なアプローチで笑いを誘いつつ、劇中劇パートでは透き通る歌声で魅せた。
中山は、メアリーの父の生まれ変わりとして現世に戻ってきたリチャードを、深い愛情と包容力がにじむ芝居で立ち上げる。また、劇中劇が始まる前に披露されるジョークと軽快なタップダンスで存在感を見せながら、狂言回しとして物語を陰で支えた。リチャードと同じく、Club Smileのために幽霊から人間へと姿を変えたフランク役の玉野は、タップダンスの才を見せるジェイムズに対しての複雑な心境をコミカルに表した。
ゲネプロの後に行われた囲み取材には、屋良、玉野、中山が出席。まず屋良は「どうなるかもわからず稽古していましたが、こうして観ていただけることがすごくうれしい。自分はステージで生きる人間なんだな、と改めて感じました」と心境を話す。中山は「面白いものを伝えていかないといけないので、こういうご時世ですけど、楽しい舞台にできればなと思っています」とほほ笑む。
「予定していた作品から、急遽新作を作ることになったんです」と明かした玉野は、「ソーシャルディスタンスを逆手に取るような作品ができないかと思いつき、当て書きのように書き上げました。コメディ作品なので、マスクの下で笑っていただけたら」とコメント。屋良は、玉野の執筆の速さに「ずっとオリジナルの作品にこだわってきた玉野さんだからできたことだと思います。また今の状況を逆手に取る、というのも『ああ、玉野さんらしい面白い発想だな』と思いましたね」と言葉に力を込める。
タップダンスについて、屋良は「玉野さんの作品に出演するのは、今回で3作目なんですけど、一番難易度が高い」と語り、「練習は1月から始めていました。自粛中もイメトレしたり、練習した動画を玉さんに送ったりして。成長はしたと思います」と自信を見せる。もともと経験者であった中山は「とは言え15年ぶりなので、玉さんに1から指導していただきました。自粛期間にはタップ用のシートを買って駐車場で練習したり、マラソンをして体力をつけていましたね。油断するとタップじゃなくて地団駄になってしまうので(笑)」と冗談交じりに話し、周囲を笑いで包む。
なお、屋良と中山が共演するのは、テレビのバラエティ番組の出演以来約20年ぶりのこと。中山が「真面目で大人しい子でした。『あの子がこんなふうになるんだ』って感動しています」と当時を振り返ると、屋良が「おかげさまで37歳に……(笑)」と照れ混じりに続ける。屋良は中山との再会に「むしろ覚えててくれてるかな、って不安だったんですけど、会ったときに『屋良っち、久しぶり!』って言ってくれて。そういう“頼れる兄貴”感は、昔から変わってないですね」と懐かしそうに目を細めた。
最後に屋良は「ミュージカルの面白さは、やはり“生”の表現にあると思いますし、こういう状況だからこそ、笑って、泣ける玉野さんマジックが、きっと皆さんに伝わるんじゃないかと思っています。万全な準備をして劇場でお待ちしています!」と来場を呼びかけ、囲み取材を締めくくった。
上演時間は2時間で、公演は10月3日まで。なお、このたび千秋楽公演のライブ配信が決定。配信媒体はStreaming+で、アーカイブは1週間視聴可能だ。視聴チケットの販売は本日9月19日17:00からスタート。
ミュージカルコメディ「Gang Showman」
2020年9月18日(金)~10月3日(土)
東京都 シアタークリエ
脚本・作詞・演出・振付:
出演:
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