ミュージカル「VIOLET」が、昨日9月4日に東京・東京芸術劇場 プレイハウスで開幕した。この記事では、9月3日に行われた
1964年、アメリカ南部の片田舎。13歳の頃、父親による不慮の事故で顔に大きな傷を負ったヴァイオレットは、25歳となった現在まで人目を避けながら暮らしていた。しかし彼女は、あらゆる傷を治す奇跡のテレビ伝道師に会うことを決意。ヴァイオレットは長距離バスに1人乗り込み、旅を始めるが……。
西に1500kmを行くバスの旅は、ノースカロライナ州のスプルース・パインに始まり、テネシー州のナッシュビル、メンフィス、アーカンソー州のフォートスミスを通って、オクラホマ州のタルサへと向かう。劇中では、それぞれの地に関連した曲調の音楽が物語を彩った。ヴァイオレットとバスの乗客が旅の始まりで歌う「マイ・ウェイ」では、田舎町を連想させるノスタルジックなハーモニカの音色が響き、ナッシュビルではカントリー調のナンバーが披露される。またブルース発祥の地・メンフィスの場面では、エリアンナ扮するミュージッククラブのシンガーが、アップテンポな楽曲をパワフルに歌い上げた。
ヴァイオレットの目的地であるタルサのシーンでは、畠中扮するテレビ伝道師の“ショー”のリハーサルが演じられる。ここでは舞台後方の壁に、リアルタイムで撮影された伝道師の顔がアップで映し出され、谷口扮するルーラを中心とした信徒たちが熱狂的なゴスペルを披露。会場を大いに盛り上げた一方で、伝道師がいらだった様子で座り込んだり、スタッフや信徒に当たり散らしたりすることで、ヴァイオレットが強く信じ、神聖視していた“伝道師”像が崩れていくさまが描かれた。
シンガーソングライターでもある優河は、フェイクを交えながら多彩な楽曲を歌いこなす。ヴァイオレットが伝道師を前に祈りを込めて必死に歌う場面では、その芯のある美声で観客を惹きつけた。また傷の存在はメイクではなく、顔に触れられることを嫌がるヴァイオレットの仕草や、彼女の顔を見て目を丸くする共演者たちの演技で表現される。優河は、傷を気にして物憂げな表情を浮かべていた田舎娘のヴァイオレットが、白人兵士・モンティ(成河)や黒人兵士・フリック(吉原)らと関わる中で新たな世界を知り、自身の過去を見つめ直していく様子をまっすぐに演じた。
劇中では、モリス・ソフィア演じるヤング・ヴァイオレットと、spi演じるヴァイオレットの亡き父親を中心とした回想シーンが繰り返し挿入されることで、彼女が傷を負った経緯や、父娘の複雑な関係が描写される。spiは、一見粗野でありながらも、心の中では娘に傷を負わせたことを深く悔やみ、彼女の幸せを願ってやまない父親の慈愛を、優しいまなざしや静かな語り口からにじませた。
上演時間は約2時間。公演は9月6日までの3日間限定で、新型コロナウイルス感染拡大対策を行ったうえで実施される。なおステージナタリーでは、唯月がヴァイオレット役を務めたゲネプロの様子もレポートしている。
ミュージカル「VIOLET」
2020年9月4日(金)~6日(日)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス
音楽:ジニーン・テソーリ
脚本・歌詞:ブライアン・クロウリー
原作:ドリス・ベッツ「The Ugliest Pilgrim」
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ステージナタリー @stage_natalie
【公演レポート】多彩な楽曲に乗せ長距離バスの旅へ…優河が祈り込めて歌う「VIOLET」幕開け
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