F/T20演目発表、モモンガ・コンプレックスは展示形式?松井周×キム・ジョンの新作も

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10月16日から11月15日まで開催される「フェスティバル/トーキョー20」の演目発表が、本日7月10日にオンラインで行われた。

「移動祝祭商店街」ビジュアル

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今回で13回目となる「フェスティバル/トーキョー」(以下「F/T」)は、国内外のアーティストを招聘し、演劇、ダンス、音楽、美術、映像などの同時代の舞台芸術を池袋エリアで多角的に紹介する芸術祭。今年は「想像力どこへ行く?」をテーマに8組のアーティストたちが作品を提示する。

オンライン会見の様子。左から長島確、河合千佳。

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演目発表会ではまず、ディレクターを務める長島確が、コロナ禍での開催決断について「『F/T』は30年以上、池袋を拠点に続けてきて、会期中以外でも文化交流のプラットフォームになっている。長い時間軸のコミュニケーションを止めたくないと思い、開催を決意した」と語った。また、この状況下で「意味のあるアクションを取るために、できることを見付けていくことが大事。アートはその役割を担えるはずで、想像力が大切になる今、『F/T』のプログラムがそのことへの問いかけとなり、想像力を膨らませ、はばたかせることができると思う」と語った。

「フェスティバル/トーキョー20」ロゴ

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そんな「F/T20」のロゴは“楽しみになる”ことに着目して作られた。アートディレクターの高田唯は「動きづらい状況の中で、深呼吸できるようなビジュアルを意識した」と言う。また、PR動画、音楽を担当した東郷清丸は「小さい頃、寝る前に鳥になって平原を飛ぶ姿を想像していた」と明かし、強いビートの音楽にそのときの風景や思いを込めた。イラストを手がけた芳賀あきなは「芸術祭の持つ想像力の枠を、良い方に広げて使っていけるように」とメッセージを寄せた。

今年のプログラムには、日本・アジアを中心に8作品が並ぶ。昨年のオープニングプログラムを担った「移動祝祭商店街」は今年も登場。同プロジェクトを率いる舞台美術家集団・セノ派の杉山至は「舞台芸術やパフォーマンスは災害と表裏にある。(芸術は)災害が起こったときの衝動から始まっているので、そこをもう一度見つめ直したい」と話す。また、旅や病床から見る“景”を書き取った松尾芭蕉、正岡子規に言及し、「1人ひとりが体験したものが蓄積して、過去のもの、死者、街の風景が語られながら、記憶として祝祭的なものになれば」と構想を語った。

「とびだせ!ガリ版印刷発信基地」ビジュアル

「とびだせ!ガリ版印刷発信基地」ビジュアル[拡大]

少部数の手作り冊子・ZINEを作って交換し合うプログラム、Hand Saw Pressの「ガリ版印 刷発信基地」も昨年に続いて開催される。「とびだせ!ガリ版印刷発信基地」と題された今回、Hand Saw Pressのメンバーは「トラックにリソグラフ(デジタル印刷機)を乗せて、豊島区内で移動式の仮設スタジオとしてできたら」と思いを口にした。

「RENDEZ-VOUS(仮)」ビジュアル

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元ヴッパタール舞踊団の振付家ファビアン・プリオヴィルは、公園やカフェなど公共の場での上演を前提に、360度で撮影されたダンス映像を、観客がベンチに腰掛けて体験するVRプロジェクト「RENDEZ-VOUS」の東京版を作ることを明かした。テクノロジーとコンテンポラリーダンスの掛け合わせで知られる彼は「消費者が手にしている技術をダンスや動作と統合し、それをユーザーの手に戻すと新しい種類の経験を与えることができる」と創作のポリシーを語る。「今は文化全体にとって非常に困難な時期で、フェスティバルのように一緒に何ができるかに光を当てることが重要です。集まり、新しい体験やアートを共有できる場所(が必要)。幸運を祈っています」とビデオメッセージを送った。

「夢の劇(仮)」ビジュアル

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「夢の劇(仮)」は「F/T19」で上演された「ファーム」に続く、劇作家・松井周と韓国の演出家キム・ジョンによる新作。ストリンドベリの「夢の劇」を下敷きに、人間界に降り立った神の娘の物語を、“コスプレ”といった現代カルチャーを通して読み解く。キムは動画を寄せ、原作を選んだ理由に「現代社会のように急いで変化している世の中で、人間の一番普遍的な話を扱っていたから」と述べる。昨年の松井とのコラボレーションは「満足だった」と語り、「会えないけれど、おのおのの場所でそれぞれの考えを作品に取り込めることができるのではないか」と期待を語った。

モモンガ・コンプレックス「わたしたちは、そろっている。」ビジュアル

モモンガ・コンプレックス「わたしたちは、そろっている。」ビジュアル[拡大]

モモンガ・コンプレックスの新作公演「わたしたちは、そろっている。」では、「伊勢物語」をはじめとする歌物語の構成に着想し、集団の意味をユーモアを交えて問い直す。振付・演出を担う白神は中継で会見に参加。「コロナの影響で“個”を意識せざるを得なかった」と話し、「“個”が集結して紡がれる『伊勢物語』のように、それぞれが何をしていたかを集結させた作品になる。1人ずつの部屋を作って見せる観察型や、観客が密集しないような方法で見せられないかと構想中です」とプランを述べた。

「ムーンライト」ビジュアル

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また「F/T20」では、京都・ロームシアター京都と5つの京都市文化会館が提携して行った「地域の課題を考えるプラットフォーム CIRCULATION KYOTO─劇場編」で2018年に村川拓也が発表した「ムーンライト」が再演される。これは劇場・会館とその周辺の関係性をリサーチして作品を作るプロジェクトで、村川は“ピアノの発表会”を題材に高齢男性の人生を照らし出した。「F/T11」の公募プログラム「ツァイトゲーバー」以来の登場となる村川は「今回は劇場の近くに住んでいる人にピアノ演奏をお願いしようと思っています。コロナの影響で難しくはなりますが、劇場でしか見られないものがあると思う。かつてのような観劇はかなわないかもしれませんが、アイデアを出して対策をしますので、ぜひ劇場に観に来ていただければ」と呼びかけた。

テアター・エカマトラ「Berak」ビジュアル

テアター・エカマトラ「Berak」ビジュアル[拡大]

「F/T」ではこれまでアジアの状況を取り上げてきたが、そのシリーズのアップデート版として今年は「トランスフィールド from アジア」と題した企画を送る。この企画では、多民族国家シンガポールの少数派であるマレー民族の演劇の確立を目指すテアター・エカマトラが作品群を映像配信。彼らは1943年の日本映画をもとにした「Tiger of Malaya(マラヤの虎)」で来日するはずだったが、この状況下で断念した。芸術監督のモハマド・ファレド・ ジャイナルは、ビデオメッセージで「私たちは異なる文化とのコラボレーションを大切にしているので、今回、日本のコミュニティに参加できることをうれしく思っています」と話し、映像配信される新作「Berak(仮)」について「10年前に書かれた作品をマレー語に“トランスクリエーション”しています。『F/T20』に参加し、このプロセスを共有できることを楽しみにしています」と述べた。また昨年に続き、バンコク国際舞台芸術ミーティング(BIPAM)とのコラボレーション「F/T×BIPAM 交流プロジェクト」が実施される。今回は各都市でのリサーチを、プロセス、成果と共にオンラインで交換する。そのほか、シンポジウム、研究開発プログラム、学生向けのワークショップなど人材育成プログラムも行われる予定だ。詳細は公式サイトを確認しよう。

左から長島確、河合千佳

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最後に長島は映像配信の模索について「映像の技術、経験、蓄積に関して、演劇は足りていない(部分がある)」としたうえで、「そういった技術を適応した場合に演劇作品の魅力が伝わるかはどうか未知のゾーン。そこも考えていかなければならないと思っています。劇場での感染が確認されたというニュースもある中で、我々は経験を積んでいかなければいけない。できないことに直面すると同時にできることも見つかっていくはず。それこそが大事なんだと信じています」と会見を締めくくった。なお、「F/T20」は新型コロナウイルス感染症対策として、来場者へ感染予防の協力を呼びかけるほか、検温、消毒、換気の実施、スタッフの防護対策、適切な席配置などが徹底される。

※高田唯の「高」ははしごだかが正式表記。

※初出時、人名と画像のキャプションに誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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「フェスティバル/トーキョー20」

2020年10月16日(金)~11月15日(日)
東京都 東京芸術劇場、あうるすぽっと、トランパル大塚、豊島区内商店街、オンライン会場 ほか

プログラム ラインナップ

「移動祝祭商店街」

東京都 豊島区内商店街、トランパル大塚周辺(予定)

パフォーマンスデザイン:セノ派(杉山至坂本遼佐々木文美中村友美

「とびだせ!ガリ版印刷発信基地」

東京都 大塚駅周辺(予定)
会期中 計20日程度開催(予定)

ディレクション:Hand Saw Press

「RENDEZ-VOUS(仮)」

東京都 トランパル大塚 ほか(予定)
会期中 計10日程度開催(予定)

コンセプト・振付:ファビアン・プリオヴィル

「夢の劇(仮)」

2020年10月16日(金)~18日(日)(予定)
東京都 あうるすぽっと

作:松井周
演出:キム・ジョン

モモンガ・コンプレックス「わたしたちは、そろっている。」

2020年10月24日(土)・25日(日)(予定)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト

振付・演出:白神ももこ
出演:モモンガ・コンプレックス

「ムーンライト」

2020年10月下旬(予定)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト

構成・演出:村川拓也

トランスフィールド from アジア

テアター・エカマトラ「Berak」ほか

オンライン会場

F/T×BIPAM 交流プロジェクト「The City & The City:Divided Senses(仮)」

東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト、オンライン会場(予定)

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