「ふじのくに→せかい演劇祭」が中止に、期間中「くものうえ↑せかい演劇祭」を開催

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SPAC主催の「ふじのくに→せかい演劇祭2020」と、ふじのくに野外芸術フェスタ2020静岡の一環として上演される予定だった宮城聰演出「アンティゴネ」の中止が決定。また、同時期に開催予定だったストリートシアターフェス「ストレンジシード静岡」が延期されることも発表された。

これは、新型コロナウイルスの世界的な流行により、海外アーティストの来日が不可能になったことと、国内の感染者の増加を受けて、感染拡大のリスクを低減するために決定されたもの。チケットの払い戻しは4月4日から5月10日まで受け付けられる。詳細は公式サイトを確認しよう。

また「ふじのくに→せかい演劇祭2020」の中止に伴い、同演劇祭が予定されていた会期中に「くものうえ↑せかい演劇祭2020(World Theatre Festival on the Cloud)」が開催されることも明らかに。これは、「ふじのくに→せかい演劇祭」の“演劇によって地域と世界が直接つながり交流する”という目的を、この状況下でも実現させていこうという企画だ。プログラムの詳細は4月10日以降に発表される。

なお本日16:00からSPACの公式YouTubeチャンネルにて、芸術総監督である宮城からのメッセージが配信される。今回の中止・延期に際して、宮城、「ストレンジシード静岡」フェスティバルディレクターのウォーリー木下、そして静岡県知事の川勝平太が発表したコメントは以下の通り。

※「ふじのくに→せかい演劇祭2020」「くものうえ↑せかい演劇祭2020(World Theatre Festival on the Cloud)」の「→」ならびに「↑」は、各方向への相互矢印が正式表記。

SPAC芸術総監督・宮城聰コメント

わたしたちSPACは、わたしたちの周りに「演劇を必要としている」人たちがいることをひしひしと感じています。
人生を豊かに生きるためには必要だ、という人がいて、また、それがないと水を失った植物のように精神がひからびてしまうという人もいます。
そのような方々にとって、演劇は精神の栄養であり、魂の水です。
わたしたちはつねに、演劇を必要としている方がひとりでもいるうちは演劇を届け続けなければならないと考えてきました。そして今回の危機が人々をいっそう孤立させるなか、その必要はますますふくらんでいると感じていたのです。

しかし今、わたしたちSPACは、今年の演劇祭の中止を決断いたしました。すべての海外演目の渡航が不可能になってもSPACの作品だけは上演する、と考えてきましたが、その砦も放棄することに決めました。
それは、今、俳優が集まって演劇の稽古をすることが、わたしたちの周りの人たちの身体的危険を増やす可能性がある、と判断したからです。

演劇、舞台芸術のもっとも基本的な定義は「生身の人と人が向き合うこと」です。いま生きているヒトのからだが全身から発している膨大な情報を、なるべくたくさん交換し合うことです。
だから演劇をつくっている者たちにとって、稽古場に集まることを断念するということは、自分の根を土から引き抜いてしまうことです。栄養も水も絶たれることです。

しかし今、そうするしかないと判断を下しました。そして、観客の皆さんと、SPACのわたしたちが、ともに「演劇を必要としているのに、演劇を絶たれた」者となりました。わたしたちは皆さんに演劇を届けることができなくなりました。

そこでこれからは、「演劇を絶たれた状態で、どうやって生き延びるか」を、皆さんとともに発明しようと思います。
俳優はもはや稽古場ではなく、各自の部屋にいます。これほど物理的に切り離された状態で、わたしたちは何ができるでしょうか? でも何かできなければなりません。絶望に沈まず、せかいと繋がり続けるために。精神を枯らさないために。今をもちこたえるために。
地球のあちこちで、やはり演劇を失ってなお耐えている、おおぜいの孤独な魂と連帯するために。
いまのいま必要な、演劇みたいな何か、を、きっとみつけて、お届けします。

「ストレンジシード静岡」フェスティバルディレクター・ウォーリー木下コメント

「一旦、止まる。」
主催者である静岡市と協議の上、5月2日~5日に実施予定だったストレンジシード静岡を、延期にすることにしました。
新型コロナウイルスの感染を抑止するためには、人の集まりを減らすことが肝要です。
ストレンジシード静岡の場合は、日本全国から人が集まります。
現時点で全国規模での終息には至っていない点、静岡市が主催する公的イベントであること、不特定多数が集まることなど、この時期での開催は、観客を含めた一般市民のみなさまの安全を考慮すると、実施困難であると判断しました。

しかし2020年度中には、叶うならばこの出演者の皆さんと一緒にストレンジシード静岡を行いたいと考えています。
しばらくは感染者数の推移を見ながら、なるべく早目にその時期を発表いたします。

また、この感染拡大期の中、緊急時における芸術文化への世間の目や関心(もしくは不寛容)はより可視化され、そもそもこの国において、なぜ芸術が必要なのか、という問いかけは今後ますます重要になっていくと痛切に感じました。

静岡市が提唱する「まちは劇場」というプロジェクトは、国内では例のないまちづくりのコンセプトであり、またストレンジシード静岡は、舞台芸術の社会への必要性を投げかける大きな問いかけになるフェスティバルだと自負しています。
だからこそ、ここは、一旦止まり、より強固でより新しいフェスへの一歩を踏み出すエネルギーを溜めたいと思います。

アーティストの皆さんは、膨らんだ想像を萎ませずに心身ともに元気でいてください。
すでに聞いている構想やアイデアにわくわくしていました。必ず静岡で実現させたいです。
観客のみなさんは、静岡の街で行われる「パフォーミングアーツの遊び」を、より安全に楽しめる日が来るまでしばしお待ちください。

最後になりますが、新型コロナウイルス感染症に罹患されお亡くなりになられた方々、ご遺族の皆様には哀悼の意を表するとともに、いまだ症状に苦しまれている方々に心よりお見舞い申し上げます。

静岡県知事・川勝平太コメント

残念ながら、今年の「ふじのくに→せかい演劇祭」は中止となりました。
しかし、演劇は人の心をつなぐチカラを発揮するものです。人と人が切り離されて孤独になっているいま、観客は劇場には集まれませんが、SPACからは日々メッセージを発信していきます。皆さんも、心と心をつなぐために、ぜひアクセスしてみてください。

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「ふじのくに→せかい演劇祭」が中止に、期間中「くものうえ↑せかい演劇祭」を開催(コメントあり)
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