「KAAT神奈川芸術劇場 2020年度ラインアップ発表会」が、昨日2月4日に同劇場にて行われ、芸術監督の
2011年にオープンした神奈川・KAAT神奈川芸術劇場は、2021年で10周年を迎える。まずこのことについて白井は、「この10年で、国内のみならず、世界全体、そして演劇を取り巻く状況も変わってまいりました。ますます管理・監視社会的になり、個人的にいやな空気感だと感じております」と発言しつつ、「今年7月にオリンピック・パラリンピックが始まり、熱狂的な雰囲気が日本中を取り巻くことと思いますが、上演作品を通して、熱狂の中、見逃してしまいがちなことに目を向かせることができれば」とラインナップの狙いを語った。
発表会は白井の進行のもと、前半は美術・キッズプログラム・ダンス作品、後半は演劇作品という2部構成で行われた。中スタジオで個展「漂泊する幻影」を披露する冨安は、「演劇作品には演者が必ず存在しますが、私の作品には演者どころか人自体が登場せず、あるのは誰かがいた“痕跡”だけ。そういった“不在性”を大事に、今回の作品を制作していきたい」と意気込みを述べる。キッズプログラムには、昨年2019年夏に上演された
ダンス作品には、森山による「星の王子さま-サン=テグジュペリからの手紙―」と、小野寺の新作の上演が予定されている。まず森山は自作について「副タイトルが“サン=テクジュベリからの手紙”となっていますが、これは著者であるアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの思いを深く読み解いたうえで、『星の王子さま』を解体し、構築していきたいという思いからです。かつて子供だった大人たちや、これから大人になっていくであろう子供たちに届ける作品になればうれしいです」と思いを語る。続く小野寺はKAATとの縁を振り返りつつ、「白井さんから『なんでもいいから小野寺修二の好きなことをやっていい』と言われて。同時に白井さんから『改めて自分が何がしたいのか、考えて』と言われ、ハッとしました。僕の出自はパントマイムなんですけれど、この10年、“言葉を使わない”ことをやってなかったなと思い返して、今回はセリフを使わない作品を作ろうと決めました」と決意を語った。
発表会の後半、演劇作品の紹介に移ると、白井はまずエンダ・ウォルシュ作「アーリントン(ラブ・ストーリー)」を自身の演出で上演すること、そしてその連動企画として、「メトロポリス伴奏付き上映会ver.2020」と「リーディング公演 ポルノグラフィ」を開催することを話す。2018年に同じウォルシュの作品「バリーターク」の演出を手がけた白井は、「エンダ・ウォルシュに惚れた(笑)」と話し、「今回も非常に不思議な、面白い作品です」と自信を見せる。「メトロポリス伴奏付き上映会ver.2020」は、映画「メトロポリス」の16mmフィルム上映に合わせ、清水、阿部海太郎、
続いて、“能”をモチーフにした
「人類史」(仮)を発表する谷は、「白井さんから『何か興味のあるものはないか?』と問われて考えついたのが、人類史を貫いた大著『サピエンス全史』でした。これを演劇化したいとご提案した私もどうかしていますが、『面白いんじゃないか』と受け入れてくださったKAATもどうかしていると思います(笑)」と作品選定の経緯を語った。日韓共同制作「外地の三人姉妹(仮)」の演出を担当する多田は「チェーホフの『三人姉妹』を1930年代の朝鮮半島を舞台に置き換え、翻案します。三人姉妹を日本人、ナターシャを朝鮮人として描くのですが、『モスクワへ!』と言われるのと、『東京へ!』と言われるのでは、感じ方がまったく違うのが面白いところ。チェーホフに出会い直すような作品になれば」とコメントした。
続けて白井は、ベルトルト・ブレヒトの「コーカサスの白墨の輪」を、大スタジオ・中スタジオ・アトリウムのすべてを使って上演するという構想を話し、記者たちを驚かせる。さらに1979年の初演以来たびたび上演を重ね、2017年には
最後に白井は、今年度が自身にとって、芸術監督として最後の年であることに言及し、「劇場が作品を通して“事件”を起こすことも必要だと思っているので、“やっちまった劇場”と判を押してもらえるように(笑)、2020年も前のめりな表現の場として、任期を締めくくることができれば」と思いを語る。さらに「2021年からは、長塚さんにこの劇場をドライブしていただければ」と次期芸術監督予定者である長塚に微笑みを向けると、長塚は「僕が今2021年に向けて考えているのは、劇場前を通り行く人たちが、ついつい入ってしまうような場所にできないか、ということ。こういった議論は後回しになってしまいがちですが、KAATはそんな思いを実現させようとする熱のある劇場。2021年を見つめつつ、2020年度を引き続きサポートすることができれば」と思いを語った。
※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
2020年度(2020年4月~2021年3月)主催公演、主なラインナップ
「アーリントン(ラブ・ストーリー)」
2020年4月11日(土)~5月3日(日・祝)
大スタジオ
作:エンダ・ウォルシュ
翻訳:小宮山智津子
演出:
出演:
※2020年4月8日追記:本公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
「アーリントン」連動企画「メトロポリス伴奏付上映会 ver.2020」
2020年4月18日(土)・19日(日)
中スタジオ
作・編曲・演奏:阿部海太郎、
※2020年4月8日追記:本公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
「アーリントン」連動企画 リーディング公演「ポルノグラフィ」
2020年4月25日(土)~29日(水・祝)
中スタジオ
作:サイモン・スティーヴンス
翻訳:小田島創志
演出:桐山知也
出演(五十音順):上田桃子、
※2020年4月8日追記:本公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
KAAT EXHIBITION 2020「冨安由真展|漂泊する幻影」
2020年6月1日(月)~7月5日(日)
中スタジオ
※2020年4月15日追記:本公演は新型コロナウイルスの影響で延期になりました。
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「未練の幽霊と怪物ー『挫波』『敦賀』ー」
2020年6月3日(水)~24日(水)
大スタジオ
作・演出:
音楽監督・演奏:内橋和久
出演:
※2020年4月15日追記:本公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
KAAT キッズ・プログラム 2020「二分間の冒険」
2020年7月
大スタジオ
原作:岡田淳
上演台本・演出:
アニメーション:ひらのりょう
音楽:加藤訓子
出演:
KAATキッズ・プログラム 2020「さいごの1つ前」
2020年8月
大スタジオ
作・演出:
出演:
※2020年5月26日追記:本公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
鼓童×ロベール・ルパージュ「NOVA」
2020年9月3日(木)~6日(日)
ホール
演出:
出演:太鼓芸能集団
※2020年4月3日追記:本公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
「音楽劇 銀河鉄道の夜」
2020年9~10月
ホール
原作:宮沢賢治
脚本:能祖將夫
演出:白井晃
「君の庭」
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 谷賢一新作「人類史(仮)」
2020年10月
ホール
台本・演出:
音楽:
振付:エラ・ホチルド
KAAT DANCE SERIES 2020「星の王子さま-サン=テグジュペリからの手紙―」
2020年11月
ホール
原作・アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
振付・演出・出演:
美術:
衣裳:
音楽:阿部海太郎
出演:アオイヤマダ、
※小尻健太の「尻」はかばねに丸が正式表記。
KAAT DANCE SERIES 2020 小野寺修二新作
2020年11月
大スタジオ
演出・振付:
日韓共同製作「外地の三人姉妹(仮)」
2020年12月
大スタジオ
原作:
翻案・脚本:ソン・ギウン
翻訳:石川樹里
演出:
杉原邦生 新作
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「セールスマンの死」
2021年1月
ホール
作:
演出:
出演:
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「コーカサスの白墨の輪」
2021年1月
大スタジオ・中スタジオ・アトリウム
作:ベルドルト・ブレヒト
演出:白井晃
「子午線の祀り」
2021年2月
ホール
作:木下順次
演出:
一柳慧×白井晃神奈川芸術文化財団芸術監督プロジェクト「オペラ『モモ』全3幕」
2021年3月9日(火)~14日(日)
ホール
原作:ミヒャエル・エンデ
作曲:一柳慧
演出:白井晃
指揮:板倉康明
芸術監督トーク「SHIRAI's CAFE」
年3回
アトリウム
国際舞台芸術ミーティング in 横浜2021(予定)
2021年2月6日(土)~14日(日)
KAAT神奈川芸術劇場 ほか
2020年度 提携公演ラインナップ
「仕立て屋のサーカス -circo de sastre-」
2020年5月
大スタジオ
ロロ「いつ高シリーズ Vol.8」
2020年9月
大スタジオ
脚本・演出:
「バッコスの信女-ホルスタインの雌」
2020年9月
大スタジオ
作・演出:
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佐藤誠 @MAKOSSaaaaaaaaN
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