可児市文化創造センター×リーズ・プレイハウス 日英共同制作公演「野兎たち」の制作発表が、本日1月16日に岐阜・可児市文化創造センター(以下ala)で行われた。
alaとリーズ・プレイハウスは、地域の人々の生きがいや居場所作りに注力している地域劇場。両劇場は 2015年に劇場提携を結んで以来、スタッフ・アーティストがお互いの文化活動を学び、地域コミュニティの中での劇場の役割に関しての概念を共有してきた。日英共同制作「野兎たち」の物語の舞台となるのは可児市。ロンドンで暮らす中村早紀子は、婚約者のダンとその母・リンダを連れて故郷に帰って来る。しかし早紀子は様変わりした自室や居留守を決め込む父親に不信感を募らせ……。
制作発表には、alaの館長兼劇場総監督で本作のプロデューサーである衛紀生、作家のブラッド・バーチ、演出を務めるマーク・ローゼンブラットと文学座の
衛は「2008年、alaは“家族と絆”というテーマを掲げ、それに沿った作品をピックアップしてきました。“芸術を通して社会課題と向かい合おう”という社会包摂的な理念を持つリーズとalaが共同制作をすることで、『この作品じゃなきゃいけなかったよね』と思えるような作品に仕上がればいいなと思います」と展望を語る。
西川は「国際共同制作というと、スタッフはどちらかの国に統一されがちですが、今回は照明、音響がイギリス人、衣装と舞台装置が日本人、舞台監督は日英混成チームです。それはすごく大変なことだけれど、とてもエキサイティングなプロダクションということでもあります」と述べ、「12月にリーズで稽古を始め、1月からはalaで滞在制作をしています。マークとはお互いにあるものを出し合い、ないものを補い合ってきました。今は、生みの苦しみを感じている段階ではありますが、とてもいい作品になると思います」と手応えを語った。
リーズ・プレイハウスのアソシエイトアーティストであるマークは「日本とイギリスの観客両方が何か感じられる作品にしたい。リサーチをしているとき、日本には失踪者や行方不明者がたくさんいることを知りました。残された家族はどうやって現実と向き合っていくのか?ということを軸に、ブラットさんが戯曲化してくださいました」と隣のブラットに視線を送る。
リサーチのため日本を3度訪れたと言うブラットは「東京・大阪・可児・名古屋で子供食堂や自殺の相談所をしている人のもとに出向き、さまざまな分野の専門家と会いました。大阪の釜ヶ崎では、行方不明者や失踪者が暮らしている場所を訪ねたんです。貧困、メンタルヘルス、社会構造といった課題は日英に共通していると思いました」と回想。さらに「本作では、どこにでも起こり得る過程を描いています」と内容に言及した。
中村早紀子役のスーザン・もも子・ヒングリーは「可児に来てからの経験も演技に取り入れられたらと思います」と目標を掲げ、「私はバイリンガルなので、カンパニーでもよく通訳をすることがあるのですが、役者は世界共通で同じような生き物だと感じます。お互いに言葉が通じていなくても、なぜか大笑いしていたり(笑)」と、登壇者たちの笑いを誘う。
続いて、早紀子の婚約者ダン役のサイモン・ダーウェンは「稽古の進め方は日英で違うところもありますが、稽古場は万国共通という感じもする。また日本に来てから、劇場や地域の方々のホスピタリティに感動しています」と感慨を述べ、ダンの母親リンダ役のアイシャ・ベニソンは「日本の方々と演劇を作るのは初めての経験。役者として稽古場に入ってしまえば、そこは自分の家のようになるので、みんなで一つの家族を作っているような感覚があります」と笑顔を見せた。
早紀子の父・勝役の
斎藤浩司役の田中宏樹は「文化が違うからこそ、理解し合おうとしている温かいカンパニーです。可児市の空気を吸いながら、いいものを作っていきたいです」と意気込む。そして早紀子の義姉・康子役の永川友里は「稽古では、家族や夫婦のあり方、幸せや孤独について自問自答しています。滞在制作だからこそできる役作りをしながら、いい化学反応を見せられたら」と締めくくった。
公演は2月8日から16日まで東京・新国立劇場 小劇場、2月22日から29日まで岐阜・可児市文化創造センター 小劇場、3月12日から21日までイギリス リーズ・プレイハウスにて。
可児市文化創造センター×リーズ・プレイハウス 日英共同制作公演「野兎たち」
2020年2月8日(土)~16日(日)
東京都 新国立劇場 小劇場
2020年2月22日(土)~29日(土)
岐阜県 可児市文化創造センター 小劇場
2020年3月12日(木)~21日(土)
イギリス リーズ・プレイハウス
作:ブラッド・バーチ
翻訳:常田景子
演出:マーク・ローゼンブラット、
出演:スーザン・もも子・ヒングリー、
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