「豊岡エキシビション2019」が、11月20日に東京都内で行われた。
「豊岡エキシビション」は、兵庫・豊岡の情報発信イベントとして、毎年首都圏にて開催されているもの。今回は中貝宗治豊岡市長、豊岡市文化芸術参与並びに城崎国際アートセンター芸術監督の
まず中貝市長は、豊岡市の課題が若い世代の人口減少の緩和であることに言及。高校卒業時に、およそ9割が市外に出てしまうというデータに対し「若いうちに広い世界を見たいというのは当然のこと。でも、彼らは二十代になっても“豊岡に戻る”という選択肢を選ばない。それは、豊岡に暮らす価値がないと思われているということ」と現状を分析する。そしてその価値を生み出すためには、都心を真似するのではなく、世界にも通用する“地域固有の魅力”が必要であると訴え、そこで中貝市長は“深さをもった演劇のまち”の実現を目指すと話す。
豊岡市は、長年閉館していた近畿地方最古の芝居小屋・出石永楽館の復活や、同じく長年使われていなかった大会議館を大改修し、城崎国際アートセンターとして再建するなど、演劇施設の充実が目覚ましい。また、豊岡市に住むすべての小学6年生と中学1年生が演劇の授業を受けることができるなど、演劇教育にも力を入れている。さらに、今年9月には「第0回豊岡演劇祭」が開催された。中貝市長は「半分が県外から来てくださったお客様で、そのうち6割が宿泊してくださった」と第0回の成果を語り、「豊岡演劇祭は、アビニョン演劇祭のような規模の国際演劇祭を目指していきます」と言葉に力を込めた。
続いて平田が登壇。東京から引っ越し、9月27日から豊岡市民となった平田が「豊岡市の江原という町から来ました。東京は不慣れなもので……(笑)」と自己紹介すると、会場は笑いで包まれる。平田は、城崎国際アートセンター設立の経緯を「前身となる大会議館を見学したら相当ひどい状態でして、担当者の方に『よっぽどがんばらないと(再建は)難しいのでは』とお伝えしたんです。それをその方が中貝さんに『平田先生ががんばれば大丈夫って言ってました!』と大げさに伝えてしまい(笑)、結局責任を取って、再生委員会の座長を務めることになって、現在のように綺麗な建物に生まれ変わらせました」と笑いを交じえて語った。さらに「城崎国際アートセンターは、今や世界中から使用の申し込みがあるアーティスト・イン・レジデンス施設。公開リハーサルを見学できたり、滞在アーティストが学校で授業を行ったりと、市民は毎月のように無償で世界最先端のアートに触れることができます」と、施設がもたらす機能を話した。
また、平田が学長候補者として設立に携わっている、2021年4月に豊岡市に開設予定の国際観光芸術専門職大学(仮)について、平田は「生徒や教職員を含めると、約800人の人口増に寄与することになります。また兵庫県の但馬地域には大学が1つもなかったので、知的なインパクトも非常に大きいかと」と述べつつ、“観光”と“芸術”を2本柱として掲げる理由を「例えば、ウィーンのオペラ座は、法律で毎日違う演目をやることを義務付けられているので、音楽好きの観光客がウィーンに連泊する理由ができる。昼間は別の場所を観光していたとしても、昼の消費と夜の消費は質が違うので、“宿泊の拠点”になれるかどうかが非常に重要。昼のスポーツ、夜のアートと言いますが、特に演劇のような参加体験型の芸術鑑賞は、その“拠点”となる理由に非常に向いているんですね。このように、観光と芸術は密に繋がっているんです。大学の教育を通して、観光と芸術を結び付ける発想ができる人材を育成できれば」と語った。
最後に来年から本格始動となる「豊岡演劇祭」について、平田は「豊岡は多彩な劇場施設があり、宿泊施設が充実していて、かつさまざまな劇団とのネットワークがすでにできている。演劇祭として成功する要件はそろっています」と自信を見せつつ、演劇祭にKDDIやトヨタ・モビリティ基金が協賛していることに言及し、「KDDIには、リストバンドで滞在中の決済ができるようなシステム作りをお願いしていたり、トヨタ・モビリティ基金には、演劇祭の演目と演目の間の移動をどうするか一緒に考えていただいています。ただすべてを機能的にするのではなく、移動自体も楽しんでいただくなど、あくまで“アートを観に行くため”に便利にする方法を協力して探っています」と語る。「『豊岡演劇祭』を、5年でアジア最大、10年で世界最大の演劇祭にできれば」と述べ、「豊岡は今が底値です。買うなら今ですよ!(笑)」と出席者に呼びかけ、会場の笑いを誘った。
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