「妖怪ケマメ:L'esprit des haricots poilus」が10月5・6日に神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオにて上演される。ステージナタリーでは、その稽古の様子をレポートする。
本作は、沖縄を拠点にアジア、ヨーロッパで活動する
今回の舞台は、沖縄北部にある電照菊畑をイメージしたものになるそうだが、稽古場にはアクティングエリアとして正方形のラインが引かれ、複数の電球が吊り下げられた以外は、大きな舞台美術はなく、シンプルな空間となっていた。その稽古場の中央で、渡邉とマルティネは、4つのボールを手や足、口でパスする稽古を行っていた。音楽のテンポに合わせてスピーディーにパスを回すが、ボールの数が増えるとキャッチの難易度が上がり、短いシーンながら緊張感のある展開が続く。渡邉とマルティネは英語でやり取りをかわしながら、細かなタイミングを合わせていった。
途中、マルティネが「ツカレタ……!」と日本語で漏らしたり、動きの速さに2人のどちらかが奇声を上げたりして、スタッフが思わず笑ってしまう場面も。緊張感ばかりでなく和やかな空気が稽古場には流れていた。
稽古の合間に、本公演の編み手・ボール製作・通訳を担当する儀保桜子の通訳で、2人に話を聞いた。まず、手だけでなく、脚や口も自在に使った動きについて、渡邉は「ジャグリングとしては、あまり一般的な動きではないですね(笑)。通常のジャグリングだと手なら手だけ、脚なら脚だけで、という感じ。でも僕らは、身体全部を使いたいと思っているので」と話す。
“一般的ではない”のは、動きだけではない。2人が使っているボールを間近で見せてもらうと、拳大ぐらいの白いお手玉のような作りで、通常ジャグリングで使うシンプルなボールに比べると少し大きく、また真ん中に突起があって、ニンニクのような形状になっている。そのほうがキャッチしやすいのかと尋ねると、「むしろ扱いにくい」と渡邉。「でもこのほうがキレイでしょう?」とマルティネが日本語で言い、笑顔を見せた。実は、ボールにはほかにもさまざまな種類があり、毛足の長いものやさらに大きなサイズのものなど、複数用意されていた。
「ジャグラーは普通、市販のボールを使うんですけど、それに僕は疑問があって。ボールそれぞれに、個性がないんですよね。だから僕らはあえて手作りすることで、このボールでできるジャグリングがしたいなと思ってるんです」と渡邉が話すと、マルティネも「ボールによって身体の使い方、ジャグリングの仕方を変化させていくので、大きなボールでも扱えるように身体を変えていく。いろんな形のボールを使うことで身体がどう変化していくのかを試しています」と語った。
お互いの身体の特徴については、「ギヨームは手足が長くて、ナナフシとか節足動物系かな(笑)。力を抜くのが得意なので、マリオネットのような動きができる」(渡邉)、「尚さんは伸び縮みするゴムみたいな身体なので、ダイナミックな動きができる。動きのバリエーションも多くて、動物的な感じや表現豊かな動きなどができると思います」(マルティネ)と分析。「でも身体の動きだけでなく2人の考え方がかなり違うので、今回の作品にはそれがかなり入っています」と渡邉が続けた。実際に本作のクリエーションにあたって、何度も話し合いが行われたと言い、マルティネはその橋渡し役として儀保の存在が大きかったと話した。
最後に今作を楽しむためのキーワードを尋ねると、「一番重要なことは、ここにいてくれること」とマルティネ。渡邉は「今回はできるだけ難しくならないように作りました。誰でも楽しめるようにと思って作ったので、ギヨームが言うように、特に何も考えないで来てもらって大丈夫。強いていうなら“身体”ですね」と語った。
なお渡邉とマルティネは、9月25日に東京のアンスティチュ・フランセ東京にて行われる日仏対談シリーズ「ル・ラボ」のトークショーに出演。このイベントでは、ダンス批評家の乗越たかおが司会を務める。
KAAT DANCE SERIES 2019 頭と口×Defracto「妖怪ケマメ:L'esprit des haricots poilus」
2019年10月5日(土)・6日(日)
神奈川県 KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
作・出演:
出演:野村誠
日仏対談シリーズ「ル・ラボ」vol.29:「突き詰めると、自由になる」
2019年9月25日(水)19:00~21:00
東京都 アンスティチュ・フランセ東京
登壇:渡邉尚、ギヨーム・マルティネ
司会:乗越たかお
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リンク
- 頭と口×Defracto「妖怪ケマメ L’esprit des haricots poilus」|KAAT 神奈川芸術劇場
- 日仏対談シリーズ「ル・ラボ」vol. 29:ギヨーム・マルティネ(デフラクト)×渡邉尚(頭と口) 司会:乗越たかお
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