10月に上演される「狂言ござる乃座 ─60th Anniversary─」の記者懇談会が、本日9月12日に東京・野村よいや舞台にて行われ、主宰の
萬斎は冒頭で、「私が大学在学中から始めました『ござる乃座』が60回目を迎えました。元々は、我々のレパートリーの中で自分がやったことがないものをやるということを目指してきましたが、20年くらい続ける中で、最近は『やったことがない曲』というよりは、新たに挑戦したいもの、自分で手がけたという思いがある曲をやらせていただいています」と挨拶。また「今回は自分の研鑽と言うより、息子(
今回の「ござる乃座」では、狂言「鍋八撥(なべやつばち)」、狂言「樋の酒(ひのさけ)」、素囃子「高砂 八段之舞(たかさご はちだんのまい)」、狂言「髭櫓 カケリ入(ひげやぐら かけりいり)」 が上演される。
「鍋八撥」では、鍋売りと羯鼓(かっこ)売りが新市の代表を巡って争う姿をコミカルに描かれる。「鍋売りの親父(
「樋の酒」は、米蔵と酒蔵の番をそれぞれ任された太郎冠者と次郎冠者が、主人の留守の間に酒を盗み飲む様が描かれ、「高砂」では住吉明神が千秋万歳を祝って舞う能「高砂」のクライマックスを囃子のみで表現。「樋の酒」は長寿を、「高砂」は夫婦円満を祝う曲となっている。
最後の「髭櫓」は大嘗会の犀の鉾を持つ役に選ばれた大髭自慢の男をめぐる奇想天外な物語。萬斎は「巨大なものが極小になり、極小なものが巨大になるなど逆転の発想があって面白い。私のひいおじいさんが天覧に供したというご縁もあり、私は自分の会で自分なりの祝意を表したいということでございます」と語った。
60回目という節目に対する思いを問われると、萬斎は「自慢かな」とニヤリ。「年に2回、個人の会をやる方は、かつてはいらっしゃったかもしれませんが、最近はあまりいないのでは。(これまでの『ござる乃座』の写真を並べた今回のチラシを見て)まあいろんな曲をやったものだなと思いますし、狂言って本当にいろんな曲があるんだなと感じますね」と感慨を述べる。さらに「まだまだ未熟ではございますが、以前はその曲に潜む何かを求めていましたけれど、最近は曲に身を任せて、気付くと無意識になっていることがある。古典は基本的には芸を習うものですが、現代で再読解し、再構築することも重要だと思っています」と持論を展開。さらに「100回まで行けるかな……(年に2回なので)20年……73歳で100回か。いけますね!」と笑顔を見せた。
息子の裕基については、「今は技術に邁進する時期ですし、例えば声が大きくなるとか、身体が揺れなくなるなど、邁進した結果が見える時期でもある。身体の使い方を叩き込む時期ですね。皆さんで言えば、教習所で少しずつ段階が上がっていって、高速道路に乗れるのを目指す感じでしょうか。まだまだ仮免にもいっていませんが(笑)、この夏休みで随分レベルを上げていくことはできたかなと」と手応えを語る。また「裕基と僕は体型や声の感じが似ているんです。僕が苦労した部分を裕基はすぐ習えていいなって(笑)」と話し、場を和ませた。
その一方で、自身が父・万作に倣った通りに演じていても、お客さんから全然違うと言われることがあると言い、「例えば酒を飲みながら船を揺らすという演技で、父がやると純粋に酒を飲むのが好きな役に見えるのに、僕は船を揺らしたがっている(ふざけの強い)役に見えると。そういう違いが出てきてしまうのは、僕の性分なんじゃないでしょうか」と話し、笑いを誘った。
萬斎は近年は狂言以外にも俳優として、芸術監督として、2020東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式のチーフ・エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターとして、多忙な日々が続く。萬斎は「それぞれの仕事で、その時間だけに集中して、その時間の中で終わらせること」を意識していると言い、「でもずっと考えているとパンクしてしまうので、とてつもなくバカなこともします。エゴサーチとか(笑)。自分のやったことに対して、是の人がいれば非の人もいる。でもそんな世の中の在りようを見ながら、信念を貫くしかないのかなと」と目線を上げた。
「狂言ござる乃座 ─60th Anniversary─」は、10月26日、30日に東京・国立能楽堂にて。前売りチケットは9月20日10:00に発売。
「狂言ござる乃座 ─60th Anniversary─」
2019年10月26日(土)、30日(水)
東京都 国立能楽堂
演目
「鍋八撥」
出演:
「樋の酒」
出演:
素囃子「高砂 八段之舞」
「髭櫓 カケリ入」
出演:野村萬斎、
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