13人の同窓生が恩師の13回忌に集結、柿喰う客の新作「御披楽喜」開幕

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柿喰う客「御披楽喜(おひらき)」が昨日9月7日に兵庫・出石永楽館にて開幕した。

柿喰う客「御披楽喜」より。(撮影:井垣真紀)

柿喰う客「御披楽喜」より。(撮影:井垣真紀)

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「御披楽喜」は、中屋敷法仁率いる柿喰う客の新作。恩師の13回忌に集まった、ある美術系私立大学の同窓生13人を巡る物語が展開する。

会場となった出石永楽館は、明治期に建てられた芝居小屋。客席は桟敷で、舞台の左右に飾られた紅白の提灯が風情を醸し出す。今回、柿喰う客は大きな舞台美術を用いず、舞台中央にスピーカーを置いたのみで、出石永楽館の舞台空間をそのまま背景として使用した。

「第0回豊岡演劇祭 Toyooka Theater Festival」チラシ

「第0回豊岡演劇祭 Toyooka Theater Festival」チラシ[拡大]

劇中では、13年ぶりに出会った男女が互いを意識しながら、それぞれのスタンスで“芸術”と向き合い、闘い、挫折する様が描かれる。セリフと動きのスピード感に最初は圧倒されていた観客も、徐々にスピードに乗ってきて、セリフを聞き逃すまいと舞台に集中していた。また中屋敷も俳優の1人して出演し、舞台上を駆け回る。次々と繰り広げられる13人の物語が、後半で大きなダイナミズムとなる爽快感は、柿喰う客の真骨頂。そして意表を突くラストシーンに、老若男女は笑いと喝采を送った。

上演に際し、中屋敷は「さまざまな人が劇場に集まり、作品を通じてコミュニケーション交わすことは、劇団が願う演劇のかたちでした。この演劇祭で得た経験を今後の表現活動に生かし、さらに広い視野をもったアーティストを目指したいです」とコメントしている。

柿喰う客「御披楽喜」より。(撮影:井垣真紀)

柿喰う客「御披楽喜」より。(撮影:井垣真紀)[拡大]

また初日後には「豊岡演劇祭」フェスティバルディレクターである平田オリザと中屋敷の対談も行われた。平田が「永楽館はどうですか?」と尋ねると、中屋敷は「すごく好きです。まさに歌舞伎の芝居小屋で、僕らのスタイルにもなじむ感じがします。この劇場からいろいろなエネルギーをいただきました」と返答。

中屋敷は本作で、美術やアートという言葉が形骸化していることを描きたかったと言い、「平田さんはアートの未来をどう考えていますか?」と尋ねると、平田は「美術に比べると演劇は身体1つと言うか、身体以上大きなことはできない、限界があるから、マーケットの理論に侵されにくいのでは。その意味で健康的ではあると思います」と答えた。

また観客から「演劇を取り巻く状況が厳しくなっていると聞きますが、今後の演劇の展望は?」と尋ねられると、中屋敷は「僕は2.5次元作品にも携わっていますが、演劇は小説やアニメ、マンガなど、どんなコンテンツでもメディアミックスできる可能性がある。またこれからは、もっと演劇が生活のどこにでも入り込んでいくことが重要。例えば少年院の更生プログラムとか高齢者施設のレクリエーションとか、どこにでも演劇があるという状態になっていくことが大切なのでは」と答えた。

平田は「演劇は今後厳しくなっていくのではなく、ずっと厳しいので(笑)、状況はずっと変わっていないと思います。ただ、映画のように施設や機材が必要なメディアはいずれなくなるかもしれないけれど、演劇は苦しいながらもずっと残ってきた。もちろん、チケットを買って劇場まで観に行くというシステム自体は、今後なくなるかもしれません。ただネットが盛んになればなるほど身体でしかできないことは必要になるし、『ここに来ないと観られない』というものこそが残っていくと思うので、豊岡演劇祭はそのような演劇祭にしたい」と決意を述べた。

また「第0回では皆さんにご不便をおかけした部分もあるかもしれませんが、これまでのやり方とは違う方法を持ち込みながら世界基準の演劇フェスのあり方にしていきたいので、ぜひ来年も豊岡に来て楽しんでいただけたら」と結んだ。

「御披楽喜」豊岡公演は本日9月8日まで。なお本作は9月13日から23日に東京・本多劇場でも上演される。

中屋敷法仁コメント

豊岡のまちから世界に発信する新しい演劇祭「豊岡演劇祭」。その第0回の開催に、劇団の最新作「御披楽喜」が参加できますこと、たいへん光栄に思います。さまざまな人が劇場に集まり、作品を通じてコミュニケーション交わすことは、劇団が願う演劇のかたちでした。この演劇祭で得た経験を今後の表現活動に生かし、さらに広い視野をもったアーティストを目指したいです。

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「第0回豊岡演劇祭 Toyooka Theater Festival」

2019年9月6日(金)~8日(日)

メインプログラム

青年団「東京ノート・インターナショナルバージョン」

2019年9月6日(金)~8日(日)
兵庫県 城崎国際アートセンター ホール

作・演出:平田オリザ
台本翻訳協力:ソン・ギウン、サーウィター・ディティヨン、ロディ・ベラ、コディ・ポールトン、陳彦君、ブライアリー・ロング
出演:山内健司、松田弘子、能島瑞穂、長野海、鄭亜美、中村真生、ブライアリー・ロング、佐藤 滋、前原瑞樹、藤谷みき、淺村カミーラ、木村トモアキ、多田直人 / 陳忻、趙欣怡、パッチャラワン・クルアパン、カモンワス・ジュティサムット、アントネット・ゴー、メイエン・エスタネロ、マンジン・ファルダス、ペク・ジョンスン、チョン・スジ、井垣ゆう

柿喰う客「御披楽喜」

2019年9月7日(土)・8日(日)
兵庫県 出石永楽館

作・演出:中屋敷法仁
出演:玉置玲央永島敬三大村わたる加藤ひろたか田中穂先長尾友里花福井夏淺場万矢とよだ恭兵北村まりこ村松洸希永田紗茅 / 中屋敷法仁

スタジオ公演

ホエイ「或るめぐらの話」

2019年9月7日(土)・8日(日)
兵庫県 城崎国際アートセンター スタジオ1

テキスト:高木恭造(方言詩集まるめろ「方言による三つの物語」より)
演出・出演:山田百次

うさぎストライプ「ゴールデンバット」

2019年9月7日(土)・8日(日)
兵庫県 城崎国際アートセンター スタジオ1

作・演出:大池容子
出演:菊池佳南

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