2016年に初演された「キネマと恋人」は、ウディ・アレンの映画「カイロの紫のバラ」から着想を得たロマンチックコメディ。1936年(昭和11年)、架空の港町・梟島(ふくろうじま)にある小さな映画館を舞台に、銀幕スターに憧れを抱く女性・森口ハルコと、周囲の人々の姿が描かれる。
同作は、16年の初演時に第4回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞を受賞したほか、KERAは第51回紀伊國屋演劇賞個人賞、第68回読売文学賞の戯曲・シナリオ賞を獲得。東京公演の会場をシアタートラムから世田谷パブリックシアターに移した今回の再演には、
さらに映像監修の
開幕に際し、KERAは「ここまで再演を待たれていた感の強い再演の初日は初めてで、とても嬉しかったです」「ダンサーを含めキャスト全員が島の世界観をつくりあげてくれて、スタッフ含めみんなとつくれた作品だと思います」と述べつつ、「俳優たちは初演より深く人物を演じてくれていて、格段に『深化』したものになっている」と手応えを語る。
俳優の高木高助、劇中に登場する映画「月之輪半次郎捕物帖」の中で高木が扮する間坂寅蔵、この2役を演じ分ける妻夫木は「『夢なら覚めないで』っていう言葉がぴったりの、稀有な作品だと思います。そんな舞台に関われてとても幸せです」とコメント。また、映画鑑賞を生きがいに暮らす森口ハルコ役の緒川は「きっといつの間にか、ハルコさんが映画の世界に惹かれるように、この舞台作品の世界に入っていただけるんじゃないかと思っております」と観客にメッセージを送る。
そして、ハルコの妹・ミチル役ほか数役を演じるともさかは「ファンタジーですが実は生々しいものを含んでいるところもこの作品の魅力」「どんな世代の方にもこんなふうに愛していただける作品もなかなか無いと思います」と思いを明かした。
上演時間は休憩ありの約3時間25分。東京公演は6月23日まで行われ、その後本作は、6月から7月にかけて福岡、兵庫、愛知、岩手、新潟で上演される。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント
今日は作品のファンのお客さんが多い印象でしたね。1幕が終わって暗転した途端に拍手が来たり、「待ってたよ」という声が聞こえるような客席でした。ここまで再演を待たれていた感の強い再演の初日は初めてで、とても嬉しかったです。
俳優たちは初演より深く人物を演じてくれていて、格段に「深化」したものになっていると思います。それから初演の時には気付かなかったけれど、作品上の太平洋戦争前の世相と今の時代に呼応するところが多い気がする。それもあって、初演時よりも「現実世界の辛さ」がより響くようになっているのではないかと。つくり物の世界に憧れるって切ないけれど、自分もこういう仕事をしている人間だから、やっぱり創作の世界に助けられているし、もちろんこの「キネマと恋人」にも助けられていると思います。
ダンサーを含めキャスト全員が島の世界観をつくりあげてくれて、スタッフ含めみんなとつくれた作品だと思います。特に映像の上田(大樹)君と振付の小野寺(修二)君は、この作品ならではの付き合い方をしてくれました。仕事量もハンパじゃない。
僕の他の作品と比べるとこんなに間口の広い作品はない。これからもずっと、こうした親切な作品を何年かに一遍作れると思われちゃたまらない(笑)ので、「これを観てもらわないと!」と思います。毎回「今回で最後かもしれない」と思いながらつくっているので、是非楽しみに観に来てほしいです。
妻夫木聡 コメント
初日を終えて、やっぱり演劇はお客さんのものだなと感じました。特にこの作品は、舞台に立っている時、お客さんとの間に本当に強い一体感があるんです。客席もステージの一部の様に感情移入できて、みんなが寅蔵を好きになって、みんながハルコの気持ちになって、幸せで終わってほしいけど、人生ってそんな甘くはないよね、それでも生きてかなきゃいけないよね、というようなほろ苦さも残しつつ、ファンタジーみたいにどこか別の世界に連れて行ってくれる、「夢なら覚めないで」っていう言葉がぴったりの、稀有な作品だと思います。そんな舞台に関われてとても幸せです。まだ始まったばかりで、当日券もありますので、一回と言わず何回でも、色々な方に、寅蔵やハルコたちに会いに来てほしいと思います。
緒川たまき コメント
初日が終わりました。再演の機会をいただいて、キャスト・スタッフ、みんなで力を合わせて、とにかく大事に大事に思いながら稽古してきました。いよいよ本日、お待ちいただいているお客様に見ていただけたわけですが、やはりお客様はあったかい、この場所に帰ってこれた、と感じました。この作品の魅力は、いろいろな登場人物がでてくるのですが、誰かしらに感情移入していただける、というところなんじゃないかと思います。これからご覧になるお客様には、例えば、どういう作品内容なのか分からないまま見に行った映画が、面白かったという体験のように、この作品もただ席に座ってただ見ていただけるだけで……。きっといつの間にか、ハルコさんが映画の世界に惹かれるように、この舞台作品の世界に入っていただけるんじゃないかと思っております。
ともさかりえ コメント
お客様が温かく迎えてくださって、無事に幕が開いてほっとしています。みなさんが待っていてくれていたのが伝わってきてすごく幸せな初日になりました。
どんな世代の方にもこんなふうに愛していただける作品もなかなか無いと思います。ファンタジーですが実は生々しいものを含んでいるところもこの作品の魅力で、私がメインで演じているミチルも一見突飛なように見えますが彼女なりのいろんな理屈や信念を持っているキャラクターです。他にも様々な役を演じているので毎公演、毎公演、新鮮な気持ちで演じられたらいいなと思っています。今回ラッキーなことに再演をすることができました。ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。
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世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#009「キネマと恋人」
2019年6月8日(土)~23日(日)
東京都 世田谷パブリックシアター
2019年6月28日(金)~30日(日)
福岡県 北九州芸術劇場 中劇場
2019年7月3日(水)~7日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2019年7月12日(金)~15日(月・祝)
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