これは「利賀演劇人コンクール2018」にて、新聞家主宰の
村社祐太朗コメント
「岸田國士について」
いまの舞台にはもっと「笑顔」が必要だと訴える短いエッセーがある。岸田は、それは「俳優の笑顔」のことではなく「舞台そのものの笑顔」のことだと言う。曖昧な言い方で誤解を招くかもしれない、と前置きをおきつつその「笑顔」を、“観客に対する「遠方をようこそ」という心持ち”だといってみたり、“いま蔓延っている仏頂面に代わるもの”だといってみたり、ただ一方で“観客のご機嫌取りではない”だとか、単に“明るさ、あたたかさ”のことだといったりする。そしてさらに曖昧で重要な指摘が最後にあって、「選ばれたる男女は、この微笑によって、互いに総てを語り得るのではあるまいか」ともいう。ここで岸田が言わんとしている「笑顔」とは、制度を回り込むあれのことではないか。互いの顔色をうかがって、制度の前で仏頂面を決め込むことは簡単だ。ただそれがどんな制度か詳しく調べたうえ、笑い方を変えること、あたたかさを別の仕方で伝え合い続けることには大変な困難がつきまとう。これは舞台の話だ。舞台のうえでは何もかもがすっかり変わってしまう。でもそれはほとんど冗談で誤った指摘である。
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新聞家、利賀演劇人コンクール奨励賞の岸田國士「屋上庭園」をWキャストで上演(コメントあり)
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