「糸井版 摂州合邦辻」は、木ノ下歌舞伎とロームシアター京都による共同制作企画「レパートリーの創造」の第2弾。第1弾「心中天の網島ー2017リクリエーション版ー」に続き、
大名・高安家の跡取りである俊徳丸(
舞台は、数本の柱の間をさまざまな人が行き交う、都会の雑踏を思わせるシーンからスタート。ホームレスやサラリーマンなど、現代に生きる人たちの平凡で、悲哀に満ちた日常が、のんびりした曲調の歌に乗せて次々と描かれる。その途中で、合邦道心が娘の玉手御前を手にかけるワンシーンが幾度もフラッシュバックのように挟まれ、過去と現在が曖昧になっていく。
やがて物語は、病のために家を捨て、四天王寺にたどり着いた俊徳丸を中心とした内容へ。己が半生を振り返りながら日想観を行う俊徳丸の言葉にならない思いを、田川は真っ直ぐに、ときに吠えるような切実さで表現する。そして俊徳丸の記憶はさらに過去へと遡り、義母・玉手御前との出会い、実母の死、兄・次郎丸と浅香姫との仲がよかった子供時代など、幸せだった日々にたどり着くのだった。
一方の玉手御前は、出奔した俊徳丸を追いかけて実家にたどり着き、両親のいさめもよそに、俊徳丸への思いを語り始める。義理を重んじる合邦道心は、怒って娘を手にかけようとするが、その瞬間、2人の間に横たわる親子の懐かしい記憶が、歌に乗って一気にあふれ出す。内田は親思いの子供時代から、色気と妖気を感じさせる成年期まで、玉手御前のさまざまな表情を、力強く伸びやかな歌声と細やかな演技で表現。また、娘の変貌ぶりが許せない父の愛憎入り混じる思いを、武谷は深く重みのあるセリフ回しと身体の芯から湧き出るような熱量で表した。
義理の息子に迫ったり、実子を手にかけようとしたりと、一見すると突拍子なく見える彼らの思いの裏には、誰かに対する思いが少なからず含まれていて、その小さな思いの積み重ねが、大きな悲劇を生み出すこともあれば、逆に悲劇を飲み込み、浄化させる場合もある。糸井は今回、玉手御前の一生という時間の長さに、宇宙という気が遠くなるような時間と距離の感覚を重ねることで、古典の時間を現代にグッと近づけ、「摂州合邦辻」が“現在の私たちの物語”であることを提示した。
また、ロームシアター京都 サウスホールの広い空間を生かした
京都公演は本日2月11日まで。そのあと15・16日に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール、3月14日から17日に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオで公演が行われる。また3月15日に追加公演が実施されることも決定。追加公演のチケットは2月22日10:00に発売。
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木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」
2019年2月10日(日)・11日(月・祝)
京都府 ロームシアター京都 サウスホール
2019年2月15日(金)・16日(土)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
2019年3月14日(木)~17日(日)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
作:菅専助、若竹笛躬
監修・補綴・上演台本:
上演台本・演出・音楽:
音楽監修:manzo
振付:
出演:
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おたべ 日本の行末もう少し見届けます @otabe
3年ぶりくらいに生芝居。
木ノ下歌舞伎は一度観たかった。
冒頭のコロスは、慣れなくて入り込め無くて戸惑ったけど、俊徳丸出てきてから完全入り込む。
玉手の悪女ぶり凄い!
最後、泣きそうになった。 https://t.co/vCuzE4FOS8