思いが宇宙へと解き放たれる、木ノ下歌舞伎「摂州合邦辻」京都で開幕

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木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」が昨日2月10日に京都・ロームシアター京都 サウスホールにて開幕した。

木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」より。(撮影:東直子)

木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」より。(撮影:東直子)

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木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」より。(撮影:東直子)

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「糸井版 摂州合邦辻」は、木ノ下歌舞伎とロームシアター京都による共同制作企画「レパートリーの創造」の第2弾。第1弾「心中天の網島ー2017リクリエーション版ー」に続き、木ノ下裕一とFUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介がタッグを組む。

大名・高安家の跡取りである俊徳丸(田川隼嗣)は、異母兄弟の次郎丸(大石将弘)から疎まれ、継母の玉手御前(内田慈)からは許されぬ恋心を寄せられている。ある日業病にかかり盲目になった俊徳丸は、許嫁の浅香姫(土居志央梨)を置いて失踪する。やがて2人は大坂・四天王寺で再会するが、そこに玉手御前が現れ……。そのほか、奴入平を金子岳憲、家老の妻・羽曳野を伊東沙保、玉手御前の父・合邦道心を武谷公雄、母・おとくを西田夏奈子が演じる。

木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」より。(撮影:東直子)

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舞台は、数本の柱の間をさまざまな人が行き交う、都会の雑踏を思わせるシーンからスタート。ホームレスやサラリーマンなど、現代に生きる人たちの平凡で、悲哀に満ちた日常が、のんびりした曲調の歌に乗せて次々と描かれる。その途中で、合邦道心が娘の玉手御前を手にかけるワンシーンが幾度もフラッシュバックのように挟まれ、過去と現在が曖昧になっていく。

やがて物語は、病のために家を捨て、四天王寺にたどり着いた俊徳丸を中心とした内容へ。己が半生を振り返りながら日想観を行う俊徳丸の言葉にならない思いを、田川は真っ直ぐに、ときに吠えるような切実さで表現する。そして俊徳丸の記憶はさらに過去へと遡り、義母・玉手御前との出会い、実母の死、兄・次郎丸と浅香姫との仲がよかった子供時代など、幸せだった日々にたどり着くのだった。

木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」より。(撮影:東直子)

木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」より。(撮影:東直子)[拡大]

一方の玉手御前は、出奔した俊徳丸を追いかけて実家にたどり着き、両親のいさめもよそに、俊徳丸への思いを語り始める。義理を重んじる合邦道心は、怒って娘を手にかけようとするが、その瞬間、2人の間に横たわる親子の懐かしい記憶が、歌に乗って一気にあふれ出す。内田は親思いの子供時代から、色気と妖気を感じさせる成年期まで、玉手御前のさまざまな表情を、力強く伸びやかな歌声と細やかな演技で表現。また、娘の変貌ぶりが許せない父の愛憎入り混じる思いを、武谷は深く重みのあるセリフ回しと身体の芯から湧き出るような熱量で表した。

義理の息子に迫ったり、実子を手にかけようとしたりと、一見すると突拍子なく見える彼らの思いの裏には、誰かに対する思いが少なからず含まれていて、その小さな思いの積み重ねが、大きな悲劇を生み出すこともあれば、逆に悲劇を飲み込み、浄化させる場合もある。糸井は今回、玉手御前の一生という時間の長さに、宇宙という気が遠くなるような時間と距離の感覚を重ねることで、古典の時間を現代にグッと近づけ、「摂州合邦辻」が“現在の私たちの物語”であることを提示した。

木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」より。(撮影:東直子)

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また、ロームシアター京都 サウスホールの広い空間を生かした北尾亘の振付、俳優が動かすことで多彩に表情を変える島次郎・角浜有香による舞台美術、歌い手はもちろん観客の心も解き放つ糸井作曲・manzo音楽監修によるドラマチックなナンバーの数々も、本作の重要なポイントとなっている。

京都公演は本日2月11日まで。そのあと15・16日に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール、3月14日から17日に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオで公演が行われる。また3月15日に追加公演が実施されることも決定。追加公演のチケットは2月22日10:00に発売。

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木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」

2019年2月10日(日)・11日(月・祝)
京都府 ロームシアター京都 サウスホール

2019年2月15日(金)・16日(土)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

2019年3月14日(木)~17日(日)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

作:菅専助、若竹笛躬
監修・補綴・上演台本:木ノ下裕一
上演台本・演出・音楽:糸井幸之介
音楽監修:manzo
振付:北尾亘
出演:内田慈田川隼嗣土居志央梨大石将弘金子岳憲伊東沙保西田夏奈子武谷公雄石田迪子、飛田大輔、山森大輔

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読者の反応

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おたべ 日本の行末もう少し見届けます @otabe

3年ぶりくらいに生芝居。
木ノ下歌舞伎は一度観たかった。
冒頭のコロスは、慣れなくて入り込め無くて戸惑ったけど、俊徳丸出てきてから完全入り込む。
玉手の悪女ぶり凄い!
最後、泣きそうになった。 https://t.co/vCuzE4FOS8

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